寝子島★トマト祭り｜リアクション

寝子島★トマト祭り

　地元農家の納利悟＆畑耕作の出店では、キュウリの漬物スティックとうざく＆マシュマロアイスのトマトジャム添えとトマトスムージーが、並んでいた。
　ちなみに “うざく” とは、蒲焼にしたうなぎと、キュウリを三杯酢であえた物の事である。
「キュウリも美味しいですよね、うなぎも入ってスタミナがつきそうだ」
　撮影しながら、修はうざくに舌鼓。
「歯ごたえが堪らないのです♪」
　美咲紀も納農園のキュウリに、上機嫌。

「耕作さん、そふとさん……先日はお土産までたくさん頂いて、ご馳走様でした……」
　とうもろこしの甘さを思い起こし、時子は深々と頭を下げた。
「いえいえ、どういたしまして。時子先輩も、クールダウンにいかがです？」
　そふとに勧められるままに、時子はトマトスムージーを注文した。
「暑いから、嬉しいです……とうもろこしは美味しかったですが、トマトも美味しそうですね……」
　受け取ったスムージーを太目のストローで一口啜れば、さっぱりして飲みやすい。
　汗をかいたクリスタルカップも、暑いので心地よかった。
「凍らせたトマトを、豆乳で割っているんですね……この料理は、何方のアイデアでしょうか……？」
「多分、婆ちゃんかな。爺ちゃんが、コレステロール高めだから豆乳に変えたんだと想います」
　*これは総コレステロール値が250mg以上の人を対象にした話です。
「優しい奥様で、お幸せですね……」
　にこ、と時子が微笑み、耕作はしかめ面をした。
　妻には、いつもやり込められているからだ。
　そんな農夫の反応に、周囲から含み笑いが起こった。
　時子だけは耕作が照れていると勘違いして、「仲の良いご夫婦って、素敵です……」とコメントしたが。

　そふとと耕作の現状が気になって、食べながら何となく様子を見ていた刀は、通りがかった恵御納夏朝に声を掛けた。
「恵御納、スタッフお疲れ様。良かったら、飲まないか？　奢るよ」
「え……僕？　でも、何だか悪いよ……」
「いや、恵御納が働いてくれているお陰で、楽しく過ごさせて貰っているからな」
　淡い表情ながら、恐縮する夏朝にスムージーを渡して、労う刀。
「熱中症にならないよう、気をつけろよ？」
「ありがとう……」

　そこへ緑野毬藻仔を引っ張って、納十一が顔を出した。
「おー、皆あつまってる！　どう、うちのキュウリ、売れてる？」
「あ、十一くん。お爺ちゃんが、激おこぷんぷん丸で探してたよ」
「え、マジ！？　でも、まっいいか！　友達ほったらかして行くわけにもいかないもんな！」
　そんなやり取りを隣で聞きながら。毬藻仔は気が進まない様子でテーブルを見下ろしていたが、マシュマロアイスに目を丸くした。
「あれー、これトマト使ってる？」
「アイス本体は、マシュマロと牛乳だけじゃよ。トマトジャムは、好みで量を調節出来るんじゃ」
　ジャムは畑夫人の手作りらしい。赤いジャムの一杯詰まった瓶には、スプーンがささっていた。
　むむーと瓶を凝視する毬藻仔に、「苦手なら無理に掛けんでもいいぞ」と言い添える耕作だったが、十一はそれを明るく遮った。
「毬藻仔、食ってみろよ！　絶対うまいって」
「う、うん……そだね。じゃ、勇気を出してちょっとだけ……」
　アイスの先っちょに、恐る恐るジャムを垂らして、毬藻仔は息を止めてそれをパクリ。

「――！　わわ、ホント美味しいね、食べられるよー」
　嬉しい驚きに、毬藻仔は声を上げた。
「だろー！！　もっとじゃんじゃん掛けろよ」
「すごいね、ちっとも青臭くないよー」
　スプーンを握り締めて、今度はたっぷりジャムをトッピングする毬藻仔。
「それ食べ終わったら、次は採れたて冷やしたやつ食えよ！」
「……え……？」
　途端、毬藻仔が身を竦めて、皆の笑いを誘った。
「無理せず徐々に慣れていけば、いいんじゃよ」