襲撃！　ねこっこ☆もんすたー｜リアクション

襲撃！　ねこっこ☆もんすたー

　先の試合は一瞬で片がついた。ついてしまったのだと思う。
　鈴野海斗は本気で、殺す気でナナオトメに飛びかかったというのに気がつくと意識を失っていた。
（どうしたらいいんだべ？）
　海斗は考える。けれど考えたところでなにも解決策は浮かばない。
　なら仕方ないべ。
　海斗はスコップを構え、ナナオトメとの距離を徐々に縮めていった。
　先はスコップで斬りかかった。
　同じことをするのも芸がない。
　海斗は距離を詰めて、軽く振りかぶって、そのまま思い切りスコップを投げつけた。
　それからすぐにスコップの後を追いかけた。
　超近距離での投擲。これでは流すことはできまい。
　スコップが刺さった、あるいは避けて体勢を崩したところに正拳突き。
　これで決まりだと思って海斗は拳を握る。
　が、しかし。いつまでたってもスコップは進んでいかない。空に浮いているのだ。
　いや違う。そんなはずはない。
　あれはナナオトメが受け止めたのだ。
　カウンターが得意だとは聞いてはいたがこれほどまでとは……。
　面白くなってきたべ。
　海斗は小さく口の端を上げ、予定通りに拳を突き出した。
「単調だわ」
　ナナオトメはその拳を叩き斬るようにスコップを振り下ろしてくる。
　斬られる、と思った。
　けれど海斗は笑っていた。
　相手はカウンターが得意。
　それはもともとわかっていたこと。
　攻撃を防いで、その攻撃をそのまま返すのが得意。
　それはうっすらと残っている記憶から分析したこと。
　そこから導き出した勝利の鍵は。
　わざとカウンターをさせて、そこでできた隙にカウンター返しを入れること、だ。
　相手はスコップを振り下ろしている。つまり下ろす間に隙がある。
　スコップが腕を掠める。しかし痛みをこらえて、海斗は突き出した手から回転するように体を翻し、そのまま重心を一気に下げた。
　そのまま回し蹴りに入る。のでもいいのだが、それではモーションが大きくなってしまう。
　海斗はその代わりに地面に手をつき、空を蹴り上げるようにナナオトメの腹に蹴りを叩き込んだ。
「ぅっ」
　ナナオトメの体が跳ねる。
　ビリリビリリと音を立て、彼女の姿に砂嵐が走り、そのまま受け身も取らずに倒れこんだ。
　蹴っても反撃されるだろうと思っていたので意外だった。
　そういえば、少しずつ動きが鈍くなっているような気がした。
　ぷつぷつと電子音が途切れるような音がする。
　もしかして――海斗がそう思ったところで、隣から悲鳴が聞こえてきた。

「ツインテイルを傷つけないでください！」
　叫んだのは綾辻綾花だった。
「たとえ敵でも、あおいちゃんじゃなくても、傷つけたくないんです」
　強い意志を秘めた表情を浮かべている。
　後木真央は握りしめた拳のやり場に困り、思わず八神修を仰ぎ見る。
「……悪い」
　修は謝るだけで、知識を貸してくれるわけではなさそうだった。
「……それじゃあ帰れないのだ」
　真央はぷっくりと頬を膨らました。
「私は帰りたくないの」
　悲しそうに言うツインテイルの後ろには小鳥の姿があった。

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