ある雨上がりの戯れ｜リアクション

ある雨上がりの戯れ

「これは、驚いた」

　たいして驚いてもいないような、落ち着いた口調で八神修は呟く。
　修がいるのは星ヶ丘寮の前。
　周囲を見て、原因を探る。逆回しにこの不思議な出来事が起こる前まで動作を再現すると、背後の水溜まりを踏むに至り、そして。
　修は水溜まりから別の場所……寝子高前に転移した。
　ここまで分かったことから推察するに、発動要因は水溜まりのようだ。

「……ろっこんか」

　少し呆れたように修は溜息をひとつ。こんな状況になったからには、原因を探ってみよう。
　というよりも原因を探ることは、修の癖のようなもの。もっと情報を集めようと、何度か転移してみることを決めたところで、メールの着信音が鳴った。

「メール……真央からか？」

『修ちゃん大変なのだ！　全然知らない場所にいたのに、急に寝子島シーサイドタウン駅にいたのだ！』

　どうやら、真央も修と同様に、水溜まりによって転移したらしい。
　とりあえず、今分かったことを真央にメールする。
　きっと真央以外にもこの事態に陥っている人がいるに違いない。もしかしたら、状況が分からず困っているかもしれない。
　会えた人には要因を説明しようか、そう思って、修は水溜まりに足を踏み出した。

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