ある一夜の夢噺｜リアクション

ある一夜の夢噺

　さて、こちらは下着姿で海中に入った真央。
　海の中でキラキラと輝く光に手を差し伸べると、光は丸い飴の形になった。
　真央は海面から顔を出して、手の中の飴を見る。
　星明かりに照らされるそれは、紛うことなき青い色。

「あったのだ市子ちゃん、青飴ＧＥＴなのだぁ……ありゃん？」

　思わず叫んでしまった真央だったが、そこに市子の姿は無かった。
　同時に空の星が１つ、するりと流れて地平線の彼方へ落ちる。
　そしてほんの少しだけ、星の明かりが翳った。

　夢の世界に来た八十八旗信彦は、すぐさま黄色い夢飴を口に放り込んだ。
　思う人物は勿論、愛する恋人。
　信彦はふわーっと移動して……後にはスケッチブックと鉛筆が残された。
　意思の疎通手段の限られるこの夢の中で、取り残されたスケッチブックと鉛筆が寂しくそこに落ちている。
　誰かに利用されれば彼らにも役割はあるのにと誰が思うかは知らないが、不意にそれらは掻き消えた。
　まるで姿の見えない誰かが持っていってしまったかのように。

　ふと気付くと、小山内海は夜空の下に立っていた。
　夢飴がどうとか言っていた声を聞いた気がする。
　ということはここは夢の中なのか。
　しかし普通の夢とは違って、青い夢飴を探さないといけないらしい。
　さっそく、海は青い夢飴を探しに行くことにした。
　手元にあるのは、黄色と緑の夢飴が１つずつに、スケッチブック、それから鉛筆１本。
　どうやらこのスケッチブックは、いつも海が使っているものとは違うようだ。
　そういえば、と辺りを見回す。
　この場所にいるのは海だけだが、海と同じようにこの夢に来ている人はいるのだろうか。
　確か黄色い夢飴を舐めながら思い浮かべると、ここにいるならその人の元へ行けるのだという。
　ぼんやりとそんなことを思いながら、黄色い夢飴を口に入れて、思い浮かべる。

（夢の中でも会えたら嬉しいな……）

　すると、ふわーっと身体が浮いた。

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