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発進時エンストになること二回、のろのろ車線変更でクラクションを鳴らされること三回、高速道路の料金所でも、やたら手間取って恥ずかしかった。
それでもなんとか銀の自動車は到着した。お台場に。
「剣吉、意外と運転よくできてましたねぇ」
七瀬としてはお世辞のつもりではなかった、一応。ヨタつく運転ながら剣吉は、慎重すぎるほど慎重だったから。剣吉の自己申告によれば、法定速度を超過することは一瞬たりともなかったらしい。
これで「そんなことないよ」と謙遜したり、「いやまだまだで」と自分の運転を反省するのが普通の人、でも、
「惚れ直したかい?」
とキメ顔をするのが剣吉だ。
「アホか! 優柔不断な運転ばっかして。私がケンケンの彼女だったら、この先を考え直すレベルだよ」
虹子が猛烈につっこみ、剣吉が「アイヤー!」と謎のリアクションをするところまで含めて、まあうちららしいですねと七瀬は苦笑いする。
コインパーキングに車を止めて、まずは科学未来館へ。エントランスをくぐるなり、吊り下げられた巨大な球体ディスプレイが目に飛び込んできて、三人して「おー」と声を上げた。刻一刻と表情を変える地球の姿に、しばらく足を止めて見入ってしまう。
ロボットの展示ブースでは、剣吉が最新鋭のフクロウ型ロボットに話しかけていた。
「おまん、名前は?」
ロボットは答えないが、声に反応してパタパタを羽を上げ下げする。
「名前ないんか? ほんなら俺がつけちゃる。ケンケン二号でどうじゃ」
ロボットは、イヤイヤをするように左右に体を振った。
「そうか! 嬉しいか!」
七瀬と虹子は、少し離れたところで実験コーナーの重力レンズの展示をいじりながら、剣吉と二号(?)のディスコミュニケーション気味のコミュニケーションを聞き流していた。
テレビ局の社屋前でも、記念撮影したりして一通りはしゃいだ。せっかくだから、と七瀬はショップでマスコットキャラのクリアファイルを購入する。お土産にするのだ。
ウォルターさん、喜んでくれるでしょうか。
順調な観光だったのは、ここまでだった。
「……あ! あ、あ、いまの人、Millyじゃなかったがか!?」
テレビ局前ですれちがった女性の後ろ姿を、剣吉が食い入るように見つめている。
「Milly?」七瀬はきょとんと訊き返す。
「知らんの!? K-POPアイドルグループの! ファンなんよ俺!」
「さあ。見まちがいじゃない?」虹子は素っ気ない。
「それ誰ですか」七瀬にはまったくピンとこない。
「たしかめてくる!」
言うが早いか剣吉は反転し、猛然と駆け出した──のだが、三歩と持たなかった。
「うおっ」
見事に足をもつれさせ、くるりと体勢を崩し、無様に転倒したのである。
「剣吉!?」
駆け寄るふたりに、剣吉はうずくまったままうめいた。
「いてて……足、ひねったかもしれんちゃ」
「大丈夫ですか」
「まあ、歩くくらいはできるが……運転は、ちょっとやれる自信ないかも」
七瀬と虹子に手を借りて立った剣吉が、たしかにちょっと立ち姿が変だ。
帰路はどうしたものか──。
だがここで虹子がすっと手を挙げた。
「私も免許持ってるよ」
「虹子、運転できたんですね」
救われた、と七瀬は思ったのだが、
「ペーパードライバーだけどね」
という補足があって、なんだかいやな予感がした。
結論から言うと予感は的中した。
カーブのたびにかかるのは、なんとも強烈な遠心力。大げさではなく「ぐおおっ」と音が立つ。七瀬はシートにしがみついた。なにこれジェットコースター? 剣吉が運転していたものと、おなじマシンとは思えない。虹子はカーブでも、減速というものをしないのだ。ブレーキという概念自体、頭から抜け落ちているのではないか。
まさに暴れ馬いや猛牛だ。隣車線に空きを見つけるたび、隙間へ強引に割り込んでいく。直線ともなればアクセルべた踏み、そのたびエンジンが爆音で吼える。大胆にして豪快、銀のレンタカーはすでにハイウェイスターだった! 七瀬は痛感した。剣吉のヨタヨタ運転が、いかに安全志向だったかを。
「虹子さん、もう少しゆっくりでも……」
剣吉も青ざめている。けれども虹子は、真っ正面を見つめたまま一喝した。
「話しかけないで! 気が散るから!」
「はいぃ……!」
ああ。
七瀬はシートにしがみついたまま必死に念じた。
どうか、生きて帰らせてください。ウォルターさんに、また会いたいので。
帰路は、まだ長い。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年08月30日
参加申し込みの期限
2026年09月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年09月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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