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本のない 机を求めて 夏休み
一句、ひねってみた。
大学生にだって宿題はある。本当は課題という名前だし、そのすべてはレポートだが宿題は宿題だ。科目ごとに出るぶん、地味に数が多くてよろしくない。一本あたりの文字数だって、なかなかのボリュームを求められるのもまたよろしくない。二年生ともなると専門課程がはじまるわけで、しかも後期からはそれが本格化するわけで、一言で言えば本気出してきたのだ。学校が。期末試験の結果に加えて課題も成績に影響するのだから、手抜きするわけにもいかないだろう。
九月になってジタバタしないよう七月から手がけよう──と決めて本日、
倉前 七瀬
はノートパソコンをひらき、朝から机に向かってみたものの、快調な滑り出しとはいかなかった。
家のなかだと部屋の本が気になって仕方がない。読むべき本、まだ読んでない本、もっというと読みたい本がたくさんあった。文庫、ハードカバー、ソフトカバー、愛蔵版、本棚はもちろん、デスクや床にまでドカドカと積み上がっている。気がつけば、何ページかペラペラやっているではないか……!
なので七瀬は、ノートパソコンだけをリュックに入れて部屋を出た。
けれど、せっかくの夏休みだが他に逃れるべき場所が思いつかず、定期券をつかって木天蓼大学に来てしまった。
で、たどりついたのが図書館だなんて。
我ながら失敗だったと思う。図書館では周囲すべてが本ではないか。実際、講義『日本文学史A』のレポート参考に手にした幸田露伴を、ノーパソそっちのけで熟読している。
五重巍然(ぎぜん)と聳(そび)えしさま、金剛力士が魔軍を睥睨(にら)んで十六丈の姿を現じ坤軸(こんじく)動(ゆる)がす足ぶみして巌上(いわお)に突っ立ちたるごとく──
(※)
ふむん、僕、何やってるんでしょう。
七瀬は嘆息した。
かくして五重の塔は屹立(きつりつ)するにいたったが、ノーパソのテキストエディタは真っ白だった。
だめですね。
諦めて図書館を出る。ついでに、レポート用資料という名目で三冊ほど借りて、『読むべき本、まだ読んでない本、もっというと読みたい本』を増やしてしまった。
外に出てクラッとなる。
太陽! 大学図書館を訪れたときよりずっと高い位置にある。放射熱・光ともにすさまじい。灼かれているような思いに駆られる。これでまだ南中すらしていないのだから、あの太陽が本気を出したらどうなってしまうのだろう。
なかば冗談ながら死の危険すら感じたその瞬間、鞄のなかのスマートフォンが振動した。
発信者名:
賢持 剣吉
。
『おー、七瀬かー』
「そうですが」
日陰に移動しつつ応じる。
『いまどこ? 家行ったけどおらんかったがよ』
「大学教養部です。図書館を出たところで」
『おーそうか。すぐ行くき。待っとり』
「すぐ、って?」
『ちょうど橋渡ってるところじゃ。二十分もかからん。そうそう、正門前におってくれ』
『木陰にでもいてね』
えっ、と耳を疑う。丈田 虹子の声までするではないか。スピーカーホンか。
「行く? すぐに? 意味がわからんのですが」
『見てのお楽しみじゃ』
言うなりブツッと電話は切れてしまった。
実際、せいぜい十五分後のことだった。
七瀬の前に銀色の乗用車が滑り込んできて、キッ、と停車した。プップとクラクションまで鳴らす。
「剣吉!?」
運転手の顔を見て七瀬は目を丸くした。助手席には虹子の姿がある。さっきの電話は、ハンズフリーで描けた模様だ。
窓が開き、「ななっち暑かったでしょ? 乗って乗って」と虹子にせかされたこともあり、七瀬は吸い込まれるようにして冷房の効いた後部座席に腰を落ち着けた。
「あ、シートベルトはしてくれや。後部座席でも義務化やからのー」
「ケンケンたまに真面目だよね」
「いや、教習所で教え込まれたき、身についてしまったんよ」
というふたりの会話をききながら、七瀬はシートベルトをカチッとはめた。
「では出発ゴー!」
車が走り出す。気のせいか、へろへろと。
(※)幸田露伴『五重塔』より
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年08月30日
参加申し込みの期限
2026年09月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年09月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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