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All Together Now
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真相は、そこから数秒で明かされた。
「せやかて、そんな大層な話でもあらへんねんけどな」
もったいぶるだけもったいぶってから、煌牙はあっさりつづけたのである。
「ブチョーに道端で声かけられてん。『キミ、異世界に興味あるネ!』って、いきなりやで。初対面でそないなこと言う!? ワイもワイで、なんかおもろそうやなと思って、ノリで入ってもうたんや」
「それだけですか」
「それだけやな。まあ、入ってみればフィーリングも合うし、やっとること実際おもろいし、すいじゃえもんっちゅうツレもできたし、結果オーライや」
カラカラ豪快に笑う煌牙を見て、タルトはなんだか納得してしまった。思わせぶりな態度は、どうやらただの照れ隠しだったらしい。
マタ大では同好会活動が認められるには、最低三人の会員が必要だという。つまり、この時点で木天蓼大学異世界探検部は成立したのだった。一年前の夏のことだったという。
それから小半時、いい加減お腹もくちくなり、肉の減り具合もずいぶん散発的になったところで、
「オホー、そろそろ始まるヨーォ!」いつもよりやや甲高い声でオルガが言った。「花火! 花火ネ!」
「ブチョー、なんや様子がおかしいでぇ? なんかフラついてへん?」
煌牙の言うとおりだった。もともとオルガは陽気な人なのだが、今日にいたってはファンキーといったほうがいいかもしれない。脚は千鳥足、顔も真っ赤だ。
「うん、なんというか、お酒飲み過ぎだと思う。ほら」
錘左衛門が指さしたのはワインのボトルだ。一本丸々、すっかり空になったのが横に倒れている。
「あっ、なんか部長、コルク抜き使ってたと思ってたら」
見張っておくべきだったかなぁ、と洋二は肩をすくめた。
実は煌牙も錘左衛門も、なんかブランデーグラスの似合いそうな洋二も酒は飲まない。三人ともコーラなんかをたしなんでいた。もちろんタルトも同じだ。つまり──。
「これ……たった一人でひと瓶空けちゃったんですか!? 部長!?」
思わずタルトは空瓶を手にしていた。白ワインのボトルだ。お酒のことはよくわからないが、一本といえばかなりのアルコール量だろう。
タルトの問いに、ずいぶん語調の怪しい英語で「Whaddya talkin' about?」とオルガはのたまった。「En flaska vin? そんなことないヨ!」
「あ、さすがに一本全部ってことは……」
「その瓶
二本目
だヨ!」
なんということか、オルガはバーベキューコンロの下からもう一本、空っぽのワインボトルを取り出したのである。ちなみにこっちは赤ワインだった。あの小柄な体のどこにそんな量が収まったのだろう。
「white wineはChardonnayデ、et、エト、フランス語発音難しーネ、赤は、アッハ、何だっケ? Mer……Merlot、だっけ? なんかそんなノ」
ふー、と言うと、砂浜に置かれたデッキチェアにオルガは腰を下ろしたのである。
「スウェーデン、お酒高いのヨ。税金超高いネ。なんで、日本、安くてびっくりヨ。大丈夫、そんな飲んでない。二本空けても金額なら、スウェーデンの一本分だカラ」
なんというかご機嫌だが、見ている方としては危なっかしいことこの上ない。
「ブチョー、そらだいぶ無茶苦茶な理屈でんがな」
「とにかく水でも」
とクーラボックスからミネラルウォーターを取り出した洋二が、「あっ」と空を指さした。
花火が上がったのだ。大輪、赤紫に近いまばゆい輝きだった。
「ワイらも花火や!」
一同一斉に動き出した。煌牙は荷物をひっぱりだし手持ち花火を配る。同時に洋二はペットボトルの蓋を開けオルガに手渡す。錘左衛門はロウソクを取り出し火の準備だ。タルトもバケツ入りの水を全員の中央に設置した。
──あ、この連携プレー、ちょっとサークル活動っぽい。
なんだか嬉しいタルトである。
「で、あらためて確認ですけど」火のついたロウソクを囲んで、煌牙が手持ち花火を掲げた。「手持ち花火で輪ぁ描いて、それが打ち上げ花火とぴったり重なった瞬間、異世界への扉が開くかもしれん……でしたっけ?」
ブチョー? と、煌牙がオルガに呼びかけた。
「オホー、その通リ」
今日の部長は『オホー』率が高い気がする……じゃなくて!
タルトは考える。
言うほど簡単じゃない気がする。
「でもこれ、けっこう難しくないですか? 輪を描いてる途中で花火が広がっちゃったら重ならないし、かといって広がりきってから描きはじめたら、もう花火のほうが消えちゃいますよね」
「オホ、鋭い指摘ネ」
また花火が上がった。今度は青だ。さっそく錘左衛門が火の付いた花火を手に試してみるが、タルトの言うようになかなか難しい。
「そうだ、こういうのはどうです?」
タルトはひらめいた。
「ふたりで半分ずつ輪を描くんです。片方が右半分、もう片方が左半分。タイミングさえ合わせれば、輪ができあがるのと打ち上げが重なる瞬間を、狙いやすくなるんじゃないかなって」
「響くん冴えてるねえ。よし、僕と煌牙くん、タルトくんと錘左衛門くんでペアになって、ためして見ようじゃないか」
「せや、早(はよ)うやらんと花火、終わってまうでぇ」
なお、オルガがペアから外れているのは、おそらく彼女が手元不如意だからという安全上の配慮だ。
とはいえそれでも難しい。打ち上げ花火が出たと思ったら、手持ちのほうは火が消えていたり、ペアの呼吸が合わず円にならなかったり。
「すいじゃえもん先輩! 合わせて!」
「うん」
タルトが叫び、錘左衛門とふたりで手持ち花火を振った。赤い光の弧がそれぞれ半円を描く。だが重ならない。輪が完成するころには、打ち上げ花火は開ききって消えていた。
洋二・煌牙組もうまくいかないらしい。
「あちゃー、今度はタイミングはよかったけど、重ならなかったね」
「ええ感じの円にならんのう。なんやハートマークみたいやったでぇ」
洋二先輩と煌牙先輩が、ふたりで一緒にハートマークを!?
タルトの回路にビビッとくる発言であった。自分の花火に精一杯で、見逃したことが悔やまれる。
誰の輪も、なかなか空の花火と重ならない。でもオルガはけらけらと笑っている。
「開け、扉!」
タルトは自分が、いつの間にか真剣になっていることに気づいた。
不思議だ。
僕は、異世界とか不思議なことなら、当たり前のように見てきたはずなのに。
なのにいまこの瞬間、これまでで一番、扉がつながってほしい、と思ってる。
もっとも。
もし本当に扉が開いたとして、みんな、ちゃんと戻ってくることまで考えているんだろうか。
まあ、そんなこと深く考えないのが、若さの特権というやつかもしれないね。
「あ? いまなんか見えへんかった?」
「はっはっは、言われてみれば。まあ煙のせいかもしれないけどね」
「僕たちはまだだなあ」
「すいざえもん先輩、そろそろラストスパートです!」
「……オホー、ワタシは眠くなってきたヨー」
──このメンバーで異世界冒険もの描いたら、面白そうだなー。
タルトはこっそり新しいプロットの種を仕込みながら、次の花火に火をつけた。
──『All Together Now』 了
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あとがき
担当マスター:
桂木京介
ファンレターはマスターページから!
お読みいただきありがとうございました!
桂木京介です。
集まることがテーマの一作でしたが、蓋を開けてみれば、本当にみなさん色んなシチュエーションで集結してくれましたね。
イタリアンバル、キャバクラ、大学のカフェテリア、車中、そしてビーチ──バラエティに富んだ物語になったと思っています。
新キャラも色々作ったりしたので、楽しくも忙しい執筆となりました。ひとりひとりに設定を作りこむのは大変でしたが、そのぶん愛着もひとしおです。木天蓼大学関係者シナリオ、これからも継続していこうと思います。今回登場した面々も、また別の形でどこかに顔を出すかもしれません。
お付き合いいただきありがとうございました。
それではまた、新たなシナリオでおめにかかりましょう。
ご感想もお待ち申し上げておりますー! 桂木京介でした。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年08月30日
参加申し込みの期限
2026年09月06日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年09月06日 11時00分
参加キャラクター一覧
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