＜高給＆メリット満載＞代理出席ウェディング｜リアクション

＜高給＆メリット満載＞代理出席ウェディング

[プログラム　９　ブーケトス]

　その後、披露宴は想定外のことも起こらず平穏に進んだ。新婦から両親への手紙ではハンカチを手放すことはできない、感動的なシーンとなった。

　そしてプログラムの最後にあるのはブーケトス。

　今、参列者の女性たちが前に出て、花嫁の手にあるウェディングブーケを睨んでいる。

「な、なんかすごい形相」
　引け気味に花嫁の真理、女性たちに背を向けブーケを投げる体勢に入る。

「ちょっとドキドキするな……。でも、僕が取っても結婚なんてまだまだ先の話だし……」
　と言いつつも恵御納夏朝、集団の端っこで手を広げている。
「女性は１６から結婚できるのよ、いつ何があるか分からないわ。それに他人を押しのけるくらいの根性がないと、幸せってもぎ取れないものよ。あの花嫁さんのようにね」
　押しつ押されつ、弘明寺能美子が大人びた口調で言う。
「私も理想の男性に会って、真理さんみたいな幸せを手にしたいです」
　そのためにもブーケは手に入れたい。塔ヶ崎璃亜にも気合いが入る。

「この出会いのためにも、ブーケはなんとしても手に入れるわ」
　席で見守る北園寺衝に手を振りながら、常闇虚もブーケを待ち構える。

「素敵なご主人様と出会える願掛けを！　順番的に私が次なのですから、切奈さんは下がっていなさい」
「私は別に興味がないけれど……そう言われると熱が入りますわ」
　小刀祢雫と小刀祢切奈も肩を押し付け合う。　

　花嫁、永作真理からウェディングブーケが放たれる。

（あ、こっちに来るよ！）
　落下ポイントはちょうど、恵御納夏朝のいる辺りだ。
（取れるかも……って、え？）

「たぁーっ！」
　嫁入り前のたおやめとは思えない声を発したのは最年長の雫。
「ちょ！　叔母さん、私を踏み台に！？」
「叔母さんじゃなくて雫お姉さんです！」
　切奈を踏み台にして宙を跳んでいるときでさえ、細かい注意を怠らない。
「もらったわ！」
　ドレスがはずみで膨らんで太ももがさらけ出されるのも構わず、ブーケに手を伸ばす。
「！」
　が、ブーケに嫌われる。指先がブーケを弾き、明後日の方向へとバウンドしていった。
「あー私のブーケ」
　空中で意識が遠のく雫。
「きゃあ！」
　ブーケではなく、雫の体を全身で受け止める羽目になったのは、璃亜だった。２人一緒になって床へ転がる。
「痛い……もう、どうしてこんなことに……」
　頭を強か打ち半べその璃亜。なぜ私はこうもよく不運に見舞われるのだろう。それは先ほどろっこん「フォーチュンスプリンクル」が発動した副作用のせいであったが、本人は全く知る由もなかった。

　さて、ブーケの行き先は。

　スポッ。という擬態語がしっくり来るくらい、端っこで傍観していた哀坂子夜の腕の中に収まっていた。まるであらかじめブーケがそこに行くことは決まっていたかのように絵になっている。
「よかったですね。おめでとうございます」
　ブーケの行方を見守っていた時枝香苗がいち早く祝福し拍手。ならうようにして、場内に拍手が波のように広がった。
「……？」
「ブーケを受け取った女性は、次に幸せを手にすることができるのですよ」
　一日妹役を一緒に演じた月守紗智が説明する。
「幸せ……」
「好きな人が見つかるといいですね」
　胸に咲いた花たちに顔を寄せる子夜。紆余曲折を経て子夜の腕の中に収まった花たちは、一つの花弁も損なうことなく強く咲き誇っている。
「好きになる……まだ全てが分かったわけじゃないが……式に参加してなんとなく分かったような気もする」
　新郎新婦は満面の笑顔で、子夜に向けて祝福の拍手を送ってくれている。幸せ、人を好きになるのは、そういうことなのだな、と漠然と思うのだった。
（しかし、ああにはなりたくないな）
　衣装がはだけるのも構わず、床に伸びたままの雫を見下ろし、心の中でつぶやく子夜であった。

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