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快晴。グラウンドに出た瞬間、熱気が全身を包んだ。この分ならあと一時間もせぬうちに、かげろうが立ちのぼるだろう。
陸上部の練習は八時から。琉歌がウォームアップを始めたころには、グラウンドにはすでに数人の姿があった。
「中倉先輩、おはようございます!」
元気のいい声が飛んでくる。
井ノ上 建
(いのうえ・たける)だ。一年生で、入部してまだ三ヶ月ほどしか経っていないのに、すっかり部になじんでいる。小柄で、目がくりくりしていて、どことなく子犬っぽい。存在しないけれど尻尾を、ぶんぶんと力強く左右に振っているような印象があり、棒きれでも投げようものなら、飛び出していって口にくわえて戻ってきそうだ。呼び捨てにしたくなるのはそのせいだった。
「おはよう、井ノ上。早いね」
「昨日雨で練習中止だったんで……まー、おかげでゆかたまつり、行けたんすけど。だもんで今日は気合い入れようと思って!」
その気合いをわけてほしいくらいだ、と琉歌は思ったが、口には出さなかった。
準備運動を済ませて流し走行に入る。身体が温まってくると、昨夜の悶々とした気分がほぐれていく気がした。やはり体を動かすのはいい。単純だけど、これが一番効く。
「中倉」
隣に並んだのは、
中参 優眞
(なかざん・ゆうま)だった。
同学年で四百メートル走者。平均よりいくらか背が高く、目元が涼やかな顔立ちをしている。クールに見えるが話せば穏やかで、後輩の面倒をよく見るため人望は厚い。モテるのも事実だろう。大会で、他校の女子に声をかけられているのを何度か見たことがあるし、半年ほど前のバレンタインデーも大変だったらしい。といっても、本人はまるで気にしていないようだったが。
「インターハイ、緊張する?」優眞が言った。
「……まあ、そこそこ」
「だよな」
淡々とした言い方だったが、目元がわずかに細くなった。俺もだ、とわざわざ口にしないが、それだけで十分に伝わる。でも優眞には、何かほかに言いたいことがあるように見えた。琉歌はいくらか気にはなったが、流しのペースを崩すのも悪いので聞き流した。
練習が本格的に始まると、それぞれが自分の種目に集中した。
インターハイまで三週間を切っている。
大窪 凛々花
(おおくぼ・りりか)は走高跳のバーを何度も上げ下げして、
井藤 ユキ
(いとう・ゆき)は八百メートルのペース走を黙々とこなしていた。琉歌は百メートルのスタート練習を繰り返す。
飛び出す瞬間の、あの感覚。身体ごと前に投げ出すような。
うまくいくときといかないときがある。今日はまあまあだった。
やっぱり走るのはいい。心なしか身体が軽くなったような気がする。
昼食を済ませて休憩時間、午後の自主練が始まるまでのあいだ、日陰で水を飲んでいると、優眞が隣に腰を下ろした。わざわざ断ることもなく、自然に。琉歌も特に気にしなかった。
「中倉って、卒業後どうすんの」
唐突な話題だった。
「私? まあ、大学、行きたいとは思ってるけど。まだちゃんと考えてない」
行くとすればきっと木天蓼大学だと思う。憧れの先輩が通っている場所だから。
「そっか」
優眞はタオルで顔を拭きながら、どこか遠くを見るような目をした。
「俺はさ、正直ちょっと厳しいんだよね、大学。うち母子家庭だから」
さらりと言った。自慢でも愚痴でもなく、ただの事実として。
「陸上、できるものならつづけたいけど。特待生になれるほどの成績でもないし」
そう言って優眞は少しだけ笑った。涼やかな目元が、そのとき初めて、寂しそうに見えた。
「……そっか」
同じ言葉しか返せなかった。気の利いたことが何も浮かばない。でもたぶん、中参君はそれを求めていたわけではないと琉歌は思う。ただ誰かに言えればよかっただけで、それをたまたま自分に言っただけで。すぐに優眞の表情が穏やかに戻ったので、なおさらそう感じた。
「まあ、なんとかなるっしょ」
優眞は立ち上がった。
「午後も頑張ろう」
中参君らしい、と琉歌は思った。重い話であっても軽く流して、前に向く。嫌味がない。だからみんなに好かれる。
「そうだね」
琉歌も立つ。
井ノ上が遠くから「先輩たち、早く戻ってきてください、コーチ来ましたよ!」と叫んでいた。
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
桂木京介
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
2人まで
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
5人
参加キャラクター数
5人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2026年06月01日
参加申し込みの期限
2026年06月08日 11時00分
アクション投稿の期限
2026年06月08日 11時00分
参加キャラクター一覧
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