黒猫はパンツがお好き？｜リアクション

黒猫はパンツがお好き？

　男が去って気になるのは、囚われていた黒猫の事。
　小淋は、メモに書かれた『今夜が峠』の文字を指でなぞった。

「皆、もうひと仕事頼めるか？」
　八神が内緒話をするように囁き、こにゃんこ隊をキャリーバッグから出すと、衰弱した黒猫を思って涙ぐむ真央を指差した。
　子猫達は、すぐに真央を取り囲み、愛らしい仕草で真央を慰める。
「おネコさまは、優しいのだ…」
　子猫達は、優しく撫でてくれる真央に、くったくなく甘えている。
「真央ちゃん、おネコさまにもてもてで、嬉しいのだ～」
　幸せそうに子猫と戯れる真央に、八神の頬も緩んだ。

　そろそろ撤収しようという事になり、それぞれが引き上げる事になった。
　だが、和やかな雰囲気に厳しい声が響いた。
「男性諸君、整列。動くな。女性諸君、検査開始」
　月詠の声に、事態を察した巴、紫蓮、咲が中心となって、男性、特に利平と横嶋が徹底的に調べられた。
　ポケットを探られながら、御剣はアレを手放しておいて良かったと胸のうちで呟いた。
　横嶋の前で足を止めた月詠がニヤリと笑う。
「私の眼を盗めると思うてか。そちらのポケットに入れたパンツも提出してもらおう」
　月詠の指摘に、巴が呆れながら横嶋の胸ポケットに手を突っ込む。
「あんっ、やめてください！　巴ちゃんのエッチー！」
　横嶋が身体をくねらせて、巴の手を避けようとする。
「気色悪い声を出すな！」
　横嶋の抵抗空しく、巴が紐とレースの下着をポケットから取り上げた。
「没収」
「ああっ、待って下さい、それだけは！！」
「本気で警察に突き出される前に自重して下さい」
　咲がため息をついた。

　今度こそ本当に解散となり、皆で門へと向かう。
「君、桃色破廉恥小隊に入らない？」
　そう言って、横嶋が利平にいかにそれが素晴らしい事なのかを力説する。
「これ以上変態を増やすな」
　巴が横嶋に釘をさす。
　そんな風に談笑する者達を見ながら、小淋はほっと安堵の息をついた。
　メモ帳の最後のキーワード、『マングローブは忘れてください』。
　これは起こりそうにない。良かったと前を向いたとたん、小淋は段差に躓き転んでしまう。
　スカートがめくれあがってしまったが、幸いな事に最後尾だった自分の後ろには誰もいないはずと思い、振り返った小淋が見たのは、顔を赤くして固まっている御剣だった。
（……っ！？）
　小淋は恥ずかしさのあまり、
『忘れてくださいっ！！』
　と書いたスケッチブックを、御剣の顔に押し付けた。
「だ、だいじょうぶだ…」
　御剣は動揺し、思わず口走る。
「今日は、履いてたし…」
（いやーっ！！！）
　真っ赤になった顔を覆って、小淋は思わずその場に座り込んだ。
「浅山さんに、何をしたんです？」
　小淋を心配して戻ってきた月が、殺気を漲らせ、ゆっくりと鋼糸を取り出す。
　御剣の背中に、冷たい汗が一筋流れ落ちた。

　この後の御剣の未来は、残念ながら小淋のメモには書かれていなかった。

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