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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
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夏果てで、想いの頁を綴るたび。秘めた綴じ目へ、君と踏み出す。
今度は関東圏内の文学館にも行ってみようかと語らいながら、少し早めに空港へ向かうことにした。
行きの羽田ほどではないだろうが、夏休みの今は混み合うことを覚悟して、空港でゆっくりできればと思っていたのだけれど――待ち構えていたのは、昨日ぶりの珪の両親だった。
頭を抱えている珪の様子から、予想もしていなかったのだろう。
満面の笑みを浮かべる母、早川 智子の姿を確認するや否や、隣に立つ父の早川 雅貴を睨み据えている。
「……だから、今日の便で帰るのか確認したのか」
「一応は言ったんだぞ？ あんまり緊張させるのもあれだから、今度で良いんじゃないかって」
何も取り繕えない状況に立たされた綾花は、話の半分も聞こえていなかった。
昨日何か失礼をしてしまったのかと不安が過り、こんな気の抜いた格好で弁明すれば火に油ではと焦りも生まれ、上手く微笑めている気がしない。
「昨日、素敵なお土産を頂いたでしょ？ なのにこっちは、お店に案内するくらいしかできなかったから」
「そんなっ！ こちらこそ、不慣れな土地でしたので助かりました。海鮮料理も、とても美味しくて」
頭を下げて感謝する綾花の前に、小さな包みが差し出された。再び丁重に感謝の気持ちを伝えて受け取るも、クッション材で包まれているようで中身はわからない。
「あんまり嵩張らない物で選んだんだけど、珪と使ってくれたら嬉しいわ……っと、時間大丈夫？」
乗り過ごしたら家においでとか、寝子島に行ったときはよろしくねと笑顔で見送ってくれる２人に、綾花はつい何度も頭を下げそうになる。けれど珪は、綾花の肩を優しく引き上げてそれを止めた。
「笑ってあげて」
顔を上げれば手を振ってくれる。緊張の中でも微笑み返せば、笑ってくれる。
だから綾花は、おずおずと手を振り返す。
「……また来たいですね」
一緒に居て幸せなことが伝わればいいと少し寄り添ったけれど、彼はどんな顔を向けていただろうか。
そっと覗き見るつもりだったのに、珪はクスクスと笑い出してしまって見ることは叶わなかった。
「そのときには、また実家の場所が変わってるかもしれないね」
引っ越しの多かったらしい珪の半生を振り返ると、本当にそうかもしれない。
でも、それなら。
「じゃあ、全部行ってみましょうか。珪さんの実家があった都道府県」
今年の夏休みには難しくても、次は冬休みがある。春休みは短いけれど花の季節だし、ゴールデンウィークも上手くすれば１週間以上の休みになるから、機会はあるはず。
「それも面白いね。……何年かかるか、わからないけど」
きゅっと繋がれた手は、覚悟を問われている気がした。
答えなんてとっくに決まっている綾花にとって、握り返さないわけがない。
「楽しみですね！」
帰る前から次の旅行が決まったようで、胸が弾む。
これから待ち受ける搭乗手続きの大混雑なんて小さなことだし、どんな難所も乗り越えられる気がする。
……それくらい、不確かでも珪との未来の約束は絶大な力を連れてきてくれるのだから不思議だ。
「そういえば、その包みはなんだろうね。一緒に使えって言ってたけど」
念のため、機内に持ち込めるものか確認しようと中身を改めると、ぽってりとしたガラスが２つ。
青森市の鳥であり『不苦労』などで縁起が良いとされる、ふくろうを模った津軽びいどろの箸置きだ。
愛らしさの中に２人の幸せを願ってくれたのが伝わってきて、じんわりと握り返してしまう。
「大切に使わないといけませんね」
光に透かして眺めたいけれど、今は包み直して割らないように注意を払うのが先決だ。
使うことになる最初のメニューは何にしようかと相談しながら帰路につく２人は、新しい頁を歩んでいく。
行きの羽田ほどではないだろうが、夏休みの今は混み合うことを覚悟して、空港でゆっくりできればと思っていたのだけれど――待ち構えていたのは、昨日ぶりの珪の両親だった。
頭を抱えている珪の様子から、予想もしていなかったのだろう。
満面の笑みを浮かべる母、早川 智子の姿を確認するや否や、隣に立つ父の早川 雅貴を睨み据えている。
「……だから、今日の便で帰るのか確認したのか」
「一応は言ったんだぞ？ あんまり緊張させるのもあれだから、今度で良いんじゃないかって」
何も取り繕えない状況に立たされた綾花は、話の半分も聞こえていなかった。
昨日何か失礼をしてしまったのかと不安が過り、こんな気の抜いた格好で弁明すれば火に油ではと焦りも生まれ、上手く微笑めている気がしない。
「昨日、素敵なお土産を頂いたでしょ？ なのにこっちは、お店に案内するくらいしかできなかったから」
「そんなっ！ こちらこそ、不慣れな土地でしたので助かりました。海鮮料理も、とても美味しくて」
頭を下げて感謝する綾花の前に、小さな包みが差し出された。再び丁重に感謝の気持ちを伝えて受け取るも、クッション材で包まれているようで中身はわからない。
「あんまり嵩張らない物で選んだんだけど、珪と使ってくれたら嬉しいわ……っと、時間大丈夫？」
乗り過ごしたら家においでとか、寝子島に行ったときはよろしくねと笑顔で見送ってくれる２人に、綾花はつい何度も頭を下げそうになる。けれど珪は、綾花の肩を優しく引き上げてそれを止めた。
「笑ってあげて」
顔を上げれば手を振ってくれる。緊張の中でも微笑み返せば、笑ってくれる。
だから綾花は、おずおずと手を振り返す。
「……また来たいですね」
一緒に居て幸せなことが伝わればいいと少し寄り添ったけれど、彼はどんな顔を向けていただろうか。
そっと覗き見るつもりだったのに、珪はクスクスと笑い出してしまって見ることは叶わなかった。
「そのときには、また実家の場所が変わってるかもしれないね」
引っ越しの多かったらしい珪の半生を振り返ると、本当にそうかもしれない。
でも、それなら。
「じゃあ、全部行ってみましょうか。珪さんの実家があった都道府県」
今年の夏休みには難しくても、次は冬休みがある。春休みは短いけれど花の季節だし、ゴールデンウィークも上手くすれば１週間以上の休みになるから、機会はあるはず。
「それも面白いね。……何年かかるか、わからないけど」
きゅっと繋がれた手は、覚悟を問われている気がした。
答えなんてとっくに決まっている綾花にとって、握り返さないわけがない。
「楽しみですね！」
帰る前から次の旅行が決まったようで、胸が弾む。
これから待ち受ける搭乗手続きの大混雑なんて小さなことだし、どんな難所も乗り越えられる気がする。
……それくらい、不確かでも珪との未来の約束は絶大な力を連れてきてくれるのだから不思議だ。
「そういえば、その包みはなんだろうね。一緒に使えって言ってたけど」
念のため、機内に持ち込めるものか確認しようと中身を改めると、ぽってりとしたガラスが２つ。
青森市の鳥であり『不苦労』などで縁起が良いとされる、ふくろうを模った津軽びいどろの箸置きだ。
愛らしさの中に２人の幸せを願ってくれたのが伝わってきて、じんわりと握り返してしまう。
「大切に使わないといけませんね」
光に透かして眺めたいけれど、今は包み直して割らないように注意を払うのが先決だ。
使うことになる最初のメニューは何にしようかと相談しながら帰路につく２人は、新しい頁を歩んでいく。
あとがき
担当マスター：
浅野 悠希
ファンレターはマスターページから！
この度はリクエスト頂きありがとうございました、浅野です。
ガイドのご案内まで大変お待たせしてしまい、申し訳ありません。
青森旅行後編ということで、前編の緊張感を吹き飛ばし甘さも全力になりましたでしょうか。
所々で、ご挨拶とは違う緊張があって全力ではなかったでしょうか？
オーバータイムですので、ここへ行き着くまでのページを埋めていくことも、どんどん先を綴っていくことも自由に行き来が出来ますし、もしくは『ひとつの世界線』として同時期を別の思い出で描くことも可能になっています。
けれど今回の旅行が、お二人にとって残しておきたいと思える良き１冊になっていれば嬉しいです。
これからも、付き合ったからこそのもだもだ、一線を越えたからこその悩みなど、色々拝見できるのを楽しみにしています！
ガイドのご案内まで大変お待たせしてしまい、申し訳ありません。
青森旅行後編ということで、前編の緊張感を吹き飛ばし甘さも全力になりましたでしょうか。
所々で、ご挨拶とは違う緊張があって全力ではなかったでしょうか？
オーバータイムですので、ここへ行き着くまでのページを埋めていくことも、どんどん先を綴っていくことも自由に行き来が出来ますし、もしくは『ひとつの世界線』として同時期を別の思い出で描くことも可能になっています。
けれど今回の旅行が、お二人にとって残しておきたいと思える良き１冊になっていれば嬉しいです。
これからも、付き合ったからこそのもだもだ、一線を越えたからこその悩みなど、色々拝見できるのを楽しみにしています！
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2025年11月13日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年11月20日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2025年11月20日 11時00分
