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- 00月00日生 00歳
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LIQUID -Star Chronicle- 不死創製編
【サイドクエスト『霊台方寸』（２）】
秀蓮の十八番、武技幻影は名のとおり、実体のない武器をその手に作り出す。
「はああああっ！！」
さまよう霊体を鎮めるには、効果を発揮する武器、魔法などで攻撃し、自らの死をあらためて悟らせることだ。秀蓮の振るう非実体剣は、これへ大いに役立った。
「カーリー、右方向！」
「まーかせて！」
スペルブレイカーであるカーリーの放つ攻撃魔法もまた有効だ。切り裂かれ、炎に穿たれた青い幽霊たちは刹那に苦悶の表情を浮かべるが、この世の生も痛みさえも幻だと悟れば、すうと淡く消えてゆく。長い時が流れ、ふたたび己を失うその時までは、故郷の土の中で安らかな眠りを得られることだろう。
「武技幻影！ いけっ！」
このあたりはかつて大きな水害に見舞われたことがあったそうだ。幽霊たちは水を滴らせ、安寧とあたたかさを求めて生者へとすがる。秀蓮は幻影の長刀と弓矢を使い分け、切り払い貫いてゆく。手心を加える余地はない。彼らにとってただひとつの安息は、死にほかならないからだ。
「大人しく眠っててよね。＜カオスフレア＞！」
「背中は任せるわ。こっちはあたしが」
「おっけー！」
これでふたりも旅慣れている。バトルにおいても言わずもがなだ。連携は巧み、前後の隙もなく幽霊たちを立て続けに眠らせてゆく。
しかしよほどの大水であったのだろう。ゆらり、ゆら、とやってくる幽霊たちは引きも切らずだ。幾人を退けようと次々に押し寄せ、逃げ場もなく囲まれる。
「くそっ、この……消えろ、消えろよ！ ああ、くそっ！」
展開した蛇腹剣をやみくもにふりかざすマイシャとて手練れの剣士ながら、霊体へ影響を及ぼす手段は持たないようだった。無理もない、彼女は冒険者ではなく兵士だ。人ならざるものに相対する機会などそうは無かったことだろう。
「マイシャ、無理はしないで！ ここから離れてなさい」
「アタシに指図すんな！ こんなもんはなあ、気合だ気合！ 気合でぶった斬ってやんぜ！」
「はあ。仕方ないわね……カーリー、マイシャの武器に属性をエンチャントしてあげて」
ふたりとひとり。奇妙な間柄だが不思議と、悪い気はしない。秀蓮はもとよりファンツァ王子にさしたる執着など持たないし、斬り捨てたのも必要あってのこと、それだけだ。マイシャも彼のもとで悪事を重ねたが、彼女自身に恨みがあるわけでもなし。いまさら罪をどうこうと長ったらしく述べるつもりもなかった。
「秀蓮？ ちょっと、なにぼーっとしてんの！？」
「はっ」
カーリーの声にはっとする。少しばかり物思いに耽っていたようだ。気が付くと恍惚とした幽霊の女が手を伸ばし、眼前に迫っていた。
「っ、しまった！」
青ざめた肌をした両の腕がこちらへと迫る。幽霊はあたたかな生身を見つけると入り込み、憑依を試みる。それを許せばたちまち人の自我は意識の外へ追いやられてしまうだろう。
「オラアアア！！」
瞬間的に長刀を跳ね上げ切り裂く瞬間、走り込んだのは、マイシャだった。
「マイシャ！？ なんであたしをかばって……」
「そ……そんなんじゃ、ねえ……っ！」
ぎりぎりと歯を食いしばり、支配を受け入れんと抵抗する彼女は、霊体による心の隙への侵食がためか、途切れ途切れながらに吐露した。
「大将が、死んで……アタシには、なんにも……なんにも無くなっちまった。なにかで、つなぎ止めていないと、心が、ばらばらになっちまいそうだ……！ 秀蓮、お前のことを考えてる間は、それを忘れられるんだ。大将の、仇だから？ それとも……」
霊体が浸潤してゆくにつれ、マイシャの身体は固くこわばり、がくがくと小刻みに震えはじめる。瞳は色を失ってゆく。それでも彼女は口元にどこか自虐的な笑みを浮かべた。
「へっ……お前なんかを、かばって、逝くたあな……。頼むよ、秀蓮。アタシが死んだら、ちょっとでもいい。アタシのこと……おぼえておいて……」
「あー。カーリー、聖水」
「おっけー」
「うわっぷ！？」
ばしゃりと青白く淡い光を宿す液体をぶちまけられると、霊体は慌ててマイシャの身体から飛び出し、消えていった。
呆としてへたりこんだマイシャへ、カーリーはしたり顔で言ったものだ。
「アンデッド対策の聖水、私が持ち込んでてよかったね。にひひっ」
暮れゆく空に、炎がごうと荒れ狂う。人々が鎮魂の願いを形としてあらわすための、赤くはげしく咲き乱れる供花のようだった。
老爺はこうべを垂れ、大恩ある先祖たちへ祈りの言葉を口にする。誰もがそうして思い捧げながら、静かな一夜を過ごすのが、この地の古くから伝わるならわしであるのだそうだ。
儀式の締めくくりを見届けると、秀蓮はゆっくりと歩き出し、カーリーがその後に続く。
マイシャの頬はいまだ真っ赤に染まったままで、ふと秀蓮が振り返ると、彼女はバツが悪そうにぷいとそっぽを向く。それでも歩む足先は秀蓮らと同じ方向を向いていた。秀蓮とカーリーは顔を見合わせ、くすりと笑んだ。
秀蓮の十八番、武技幻影は名のとおり、実体のない武器をその手に作り出す。
「はああああっ！！」
さまよう霊体を鎮めるには、効果を発揮する武器、魔法などで攻撃し、自らの死をあらためて悟らせることだ。秀蓮の振るう非実体剣は、これへ大いに役立った。
「カーリー、右方向！」
「まーかせて！」
スペルブレイカーであるカーリーの放つ攻撃魔法もまた有効だ。切り裂かれ、炎に穿たれた青い幽霊たちは刹那に苦悶の表情を浮かべるが、この世の生も痛みさえも幻だと悟れば、すうと淡く消えてゆく。長い時が流れ、ふたたび己を失うその時までは、故郷の土の中で安らかな眠りを得られることだろう。
「武技幻影！ いけっ！」
このあたりはかつて大きな水害に見舞われたことがあったそうだ。幽霊たちは水を滴らせ、安寧とあたたかさを求めて生者へとすがる。秀蓮は幻影の長刀と弓矢を使い分け、切り払い貫いてゆく。手心を加える余地はない。彼らにとってただひとつの安息は、死にほかならないからだ。
「大人しく眠っててよね。＜カオスフレア＞！」
「背中は任せるわ。こっちはあたしが」
「おっけー！」
これでふたりも旅慣れている。バトルにおいても言わずもがなだ。連携は巧み、前後の隙もなく幽霊たちを立て続けに眠らせてゆく。
しかしよほどの大水であったのだろう。ゆらり、ゆら、とやってくる幽霊たちは引きも切らずだ。幾人を退けようと次々に押し寄せ、逃げ場もなく囲まれる。
「くそっ、この……消えろ、消えろよ！ ああ、くそっ！」
展開した蛇腹剣をやみくもにふりかざすマイシャとて手練れの剣士ながら、霊体へ影響を及ぼす手段は持たないようだった。無理もない、彼女は冒険者ではなく兵士だ。人ならざるものに相対する機会などそうは無かったことだろう。
「マイシャ、無理はしないで！ ここから離れてなさい」
「アタシに指図すんな！ こんなもんはなあ、気合だ気合！ 気合でぶった斬ってやんぜ！」
「はあ。仕方ないわね……カーリー、マイシャの武器に属性をエンチャントしてあげて」
ふたりとひとり。奇妙な間柄だが不思議と、悪い気はしない。秀蓮はもとよりファンツァ王子にさしたる執着など持たないし、斬り捨てたのも必要あってのこと、それだけだ。マイシャも彼のもとで悪事を重ねたが、彼女自身に恨みがあるわけでもなし。いまさら罪をどうこうと長ったらしく述べるつもりもなかった。
「秀蓮？ ちょっと、なにぼーっとしてんの！？」
「はっ」
カーリーの声にはっとする。少しばかり物思いに耽っていたようだ。気が付くと恍惚とした幽霊の女が手を伸ばし、眼前に迫っていた。
「っ、しまった！」
青ざめた肌をした両の腕がこちらへと迫る。幽霊はあたたかな生身を見つけると入り込み、憑依を試みる。それを許せばたちまち人の自我は意識の外へ追いやられてしまうだろう。
「オラアアア！！」
瞬間的に長刀を跳ね上げ切り裂く瞬間、走り込んだのは、マイシャだった。
「マイシャ！？ なんであたしをかばって……」
「そ……そんなんじゃ、ねえ……っ！」
ぎりぎりと歯を食いしばり、支配を受け入れんと抵抗する彼女は、霊体による心の隙への侵食がためか、途切れ途切れながらに吐露した。
「大将が、死んで……アタシには、なんにも……なんにも無くなっちまった。なにかで、つなぎ止めていないと、心が、ばらばらになっちまいそうだ……！ 秀蓮、お前のことを考えてる間は、それを忘れられるんだ。大将の、仇だから？ それとも……」
霊体が浸潤してゆくにつれ、マイシャの身体は固くこわばり、がくがくと小刻みに震えはじめる。瞳は色を失ってゆく。それでも彼女は口元にどこか自虐的な笑みを浮かべた。
「へっ……お前なんかを、かばって、逝くたあな……。頼むよ、秀蓮。アタシが死んだら、ちょっとでもいい。アタシのこと……おぼえておいて……」
「あー。カーリー、聖水」
「おっけー」
「うわっぷ！？」
ばしゃりと青白く淡い光を宿す液体をぶちまけられると、霊体は慌ててマイシャの身体から飛び出し、消えていった。
呆としてへたりこんだマイシャへ、カーリーはしたり顔で言ったものだ。
「アンデッド対策の聖水、私が持ち込んでてよかったね。にひひっ」
暮れゆく空に、炎がごうと荒れ狂う。人々が鎮魂の願いを形としてあらわすための、赤くはげしく咲き乱れる供花のようだった。
老爺はこうべを垂れ、大恩ある先祖たちへ祈りの言葉を口にする。誰もがそうして思い捧げながら、静かな一夜を過ごすのが、この地の古くから伝わるならわしであるのだそうだ。
儀式の締めくくりを見届けると、秀蓮はゆっくりと歩き出し、カーリーがその後に続く。
マイシャの頬はいまだ真っ赤に染まったままで、ふと秀蓮が振り返ると、彼女はバツが悪そうにぷいとそっぽを向く。それでも歩む足先は秀蓮らと同じ方向を向いていた。秀蓮とカーリーは顔を見合わせ、くすりと笑んだ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2025年10月22日
- 参加申し込みの期限
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- 2025年10月29日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2025年10月29日 11時00分
