フェアリーランド・バレー開拓記　その３｜リアクション

フェアリーランド・バレー開拓記　その３

【金銀宝石ざっくざく】

　ウィンドフォッスル鉱山。フェアリーランド・バレーでも有数の希少鉱石の産地であり、無限に広がるダンジョンでもありました。
「あおい、どうだい？　まだいけるかい」
「うん、バッグにはまだ余裕あるし、私も元気いっぱい！　いけるよ～」
「よし。なら、もう１階層下りてみて、採掘を続けよう」
　かつん、かつん、かつん。ツルハシを振り下ろせば火花とともに、美しい鉱石たちの断面が顔を覗かせます。鉄鉱石に銅鉱石。青い輝きのアクアミラ石に、透き通る金色の幻燈石。中に封入された風がぴゅうと渦を巻く、風印石。見たことあるもの、初めて見るもの、掘るたびに異なる色がぽろりと壁からこぼれおちて、わくわくです。
　鉱山がどこまで続いているのかは、誰も知りません。ふたりのいる浅い階層には、掘り抜かれた通路のあちこちにランタンがかかげられていて、人の手が入っているのが分かりますけれど、奥へ奥へと進んでいくにつれ、次第に構造は複雑になっていき、ずっと向こうには未知の階層が広がっているのだそうです。
　まだまだ初心者の修たちは、上層部で鉱石や宝石を掘り、ちょっとした報酬を得るアルバイトに精を出すくらいですけれど。いつかはそうした深部へも掘り進み、この世にふたつとない希少な鉱石やお宝ゲットを狙ってみるのも、悪くはないかも。
「あっ、キレイな石発見♪　ねえ修くん、高値で売れるかな？」
「どれどれ。ああ、これはいい色だ。売るのもいいけど、加工してアクセサリーにしてもらうのもいいな。きっとあおいに似合うだろう」
「ほんと？　ふふ、それもいいかも……♪」
　どこかしらをかつんとやれば、きらきらきらめく石がぽろりと落ちるもので、ふたりは楽しくなってきて、夢中でかつかつかつん。
　おかげでちょっぴり、油断していたようです。
「わわっ、なんか出たー！？」
「どうした、あおい！？」
　鉱山はシンプルな労働でひと稼ぎするのにも最適……けれど相応の危険もともないました。時おりあらわれる、モンスターです！
「あおい、俺の後ろへ！」
　足が六本、いや八本？　十本？　よくわかんないけどともかく、サソリのようなヤツです。１メートルくらいはありそうです。あのでっかい針で刺されたら大変！
　浅い層にあっても、時にこうして危険な生き物と遭遇することはあるのだそう。もちろん、階層が深くなるにつれてより強いモンスターと遭遇する確率は高まるとのこと。
「鍛冶屋で武器も仕入れておいてよかったな。さあ、こっちだ！」
　とはいえ、寝子島ではあんな現象やこんな強敵、数多の危険と相対してきた修です。剣を持って立ち向かい、ぶおん！
「私だって……！」
　びゅんと突き出す針は、あおいの持った盾でがっちりガード！
「よし、いいぞ……そこだ！」
　しばしの攻防の末、修の剣がじゃきん！　とひらめいて、するどい針先をすぱんと斬り飛ばすと、サソリはあきらめたのか、深層へ続く暗がりの向こうへ逃げていきました。
「良かった～。ありがとう修くん、カッコよかったよ♪」
「いや、あおいが助けてくれたおかげさ」
　奮闘のおかげで、ふたりの鉱山初バイトは大成功。たくさんの貴重な鉱石を持ち帰ることができ、バレーでの活動資金をゲットすることができました。