フェアリーランド・バレー開拓記　その３｜リアクション

フェアリーランド・バレー開拓記　その３

【お役に立ちます！】

　ファミリア・フェス恒例、農作物の品評会にて審査が始まる、もうすこし前のこと。
「ふむふむ。なるほど、お菓子を作りたいんですね。それで、どんな作物を収穫されました？」
「一番の自信作は、モッチリモです！　モチモチ食感のおもちみたいなサツマイモで……」
　ふむふむふむん、柚春はメモをさらさらさらり。
　フェアリーランド・バレーにあって、柚春の一番の目的は、人々との信頼をつなぐこと。自作のグッズを発明したり、図鑑を編纂したり……それにパートナー、ワットさんとイチャイチャしたりも、もちろん目的のひとつではありますけれど。それ以上に、それらを通じて、この地に暮らすどうぶつたちのためになることをしてあげたい。開拓者として、お役に立ちたい！　そんな優しいこころが、バレーにおいての柚春の行動原理となっておりました。
　隣町で家庭菜園を営む、アルマジロの若奥さま。品評会へ出品するため訪れたものの、いまひとつ自信が持てず……といったところに柚春が声をかけたのが、はじまりでした。
「おイモなら、甘露煮や大学芋？　スイートポテトもいいですね。でもちょっとパンチが足りないかな……」
「そうですよねえ。皆さん、工夫を凝らしたものを持ち寄るのでしょうし」
　品評会への出品は、作物そのものの味や食感で勝負してもよし。なんらかの調理を加えるもよし。奥さんは、ならばどうしたものかと悩んでいるのでした。
　そこで、柚春の出番。これも縁ということで、奥さんのアドバイザーを買って出ることにしました。
「あ……そうだ、茶巾絞りはどうですか？　素材そのものの味や食感も楽しめるし、飾りつけで工夫もしやすいですよね」
「なるほど、いいですね！　でも、スイートポテトもちょっと食べてみたいかしら……」
「あはは、それなら両方作っちゃいましょうか！　ワット、準備はできてる？」
　パートナーに抜かりはなく。相談に乗っている間、野外でも簡単な調理ができるよう、ワットさんには器具などの準備をお願いしていたのです。
「このとおり。ばっちりだよお、柚春」
「わあ……おふたりは息ぴったりなのねえ。うふふ、仲が良くって微笑ましいわあ」
「え～？　そんなことは～。へへへ♪」
　奥さんのお言葉にはほっぺたぽわん、テレテレしつつ。
「さあ、それじゃお料理開始です！　がんばりましょう！」
「はい、先生！」
　と気合十分な柚春を見つめて、やっぱりワットさんは感慨深げ。
「柚春が先生かあ。なんだか不思議な感じだねえ」