遊ぼう！　トロピカルランド｜リアクション

遊ぼう！　トロピカルランド

　羽生碧南が、片想いだった鷹取洋二先輩と両想いになったのは去年の暮れのことでした。
　洋二さんと呼べるようになり、同じマタ大に通えて順風満帆、のはずでしたが。
「バスケで特待生で入ったから、練習に授業に大忙しで……デートする暇がない！」
　なかなかうまくいかないものです。
　それでもなんとか時間を捻出してデートしているのですが。
　いよいよ夏休み、授業はお休みです。

「今回は夏休みに入って最初の週末、両想いになって初のプールでデートinトロピカルランド！」
　興奮せずにはいられません。
「……初のプールでデート。つまり水着」
　乙女ゲーでは百戦錬磨の碧南ですが、リアルでプールデートなんて人生初です。
「どんな水着がいいんだろう？　洋二さんの好みって？　セクシー系？　それとも清楚系？」
　迷いに迷った末、碧南は最終的に肩紐のない、水色と紫のビキニの水着を選びました。

「お待たせしました……」
　ドキドキしながら更衣室を出ると、待ちかねた様子の洋二が顔を輝かせました。
「碧南さん、とても素敵だ」
「……ありがとうございます」
　照れながら碧南は答えたのでした。

「碧南さんはどこへ行きたい？」
「それじゃ、最初はストリームプールから」
「大波が来るプールだね。行こう！」
　大波と言っても大したことないでしょ、と思っていました。
　実際、いくつかきた大波はそれほど激しくはなくアトラクションとして楽しめるものでした。
「でも、油断はできないよ。1日に1回だけ来るガチの大波があるらしいんだ」
「そうなんですね。でも１日に１回ならそう簡単には……って！」
　洋二と楽しく話していた碧南でしたが、急に水が引いたな……と思ったら、信じられない高さの波が迫っていることに気づきました。
「碧南さん！」
　洋二が庇うように波と碧南の間に入り込んでくれて、思わず胸キュンしてしまった碧南。
　しかし大波は二人を飲み込んでいき……
「きゃあ～！」
「うわあ～！」
　天井近くまで持ち上げられた二人は、次の瞬間落下して波にもまれていったのでした。

　ワカメ頭がぐちゃぐちゃになり、海の怪物のような洋二が顔を上げました。
「大丈夫かい、碧南さん。ひどい目に遭ったね」
「はい……洋二さんが守ってくれたから」
　ヨレヨレになっても、碧南は幸せでした。

「洋二さん、お腹すきませんか？」
「僕も今そう思っていたところだよ」
　二人は南の食堂でラーメンを食べました。
　食欲もりもり、気取らないのが碧南と洋二のスタイルです。
「こういうところで食べるラーメンって妙においしいですよね」
「そうだね」
　
　お腹も心も満たされて、エネルギーチャージは完了。
「次はどこに行こうかな」
　二人のデートは、まだまだ続きます。

このページにイラストを設定する