寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～｜リアクション

寝子島灯篭　～NEKOJIMA LANTERNS～

　綾辻綾花は早川珪との待ち合わせ場所へ向っていた。今日は灯籠イベント、夜のデートだ。
「珪さん」
　先についていた珪に手を振って歩み寄る。少し前に一緒に買った色違いの浴衣姿。綾花は白地に水色、珪は藍色に水色の模様が入っていて、2人で歩けば映えることだろう。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
　2人でゆっくり歩き出すと、下駄がカランコロンと足音を立て始める。
　少し、人が多いですね。普段の夜と少し雰囲気が違う。お祭りの夜はやはり、皆浮かれるのだろうか。
「珪さん、浴衣、とってもお似合いです」
「あぁ、綾花さんも。やっぱり明るい色は夜に見ると良いね。似合ってる」
「！　ありがとうございます」
　ぼんやりとした明かりのせいか、珪の笑顔がキラキラして見えた。天空灯籠を見上げると、紺色の空に良く映えていた。
「綺麗ですね⋯⋯」
「ああ、寝子島じゃないみたいだな」
「私も同じことを思いました」
　なんだか嬉しくなる。
　寝子島街道に沿って、提灯を見ながら2人で歩く。
「なんか、色々な形の提灯があるけど⋯⋯手作り？」
　ドキッとする。綾花自身も参加した提灯作り、プロの仕上がりには負ける。やはり手作り感はそれなりに出てしまうのかもしれない。
「そういえば募集してたかもな」
「珪さん、実は私も」
「あ」
　指をさす珪。
「ほら、猫の模様の提灯だ」
　それは、まさに綾花が作ったものだった。
「！？」
　こんな偶然あるのだろうか。
「綺麗だし、可愛いな。あの提灯だけ特別に見える⋯⋯」
「そ、そうですか？」
　ドキドキ。綾花が作ったことは知らないはずなのに、特別などと言われてしまうと照れる。
　と、ぎゅっと手を握られた。
「何かぼーっとしてる？」
「だ、大丈夫です。ちょっと⋯⋯楽しくなっちゃって」
　珪は笑う。
「出店で何か食べるか」
　手を引かれただけで幸せだ。こうして、一緒に歩けるだけで、本当に幸せだとおもう。

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