フェアリーランド・バレー開拓記　その２｜リアクション

フェアリーランド・バレー開拓記　その２

【ニャモニャモ？】

「よいしょ！」
「とおー」
「えいやー！」
「とあー」
　とんてんかんてん。こんこんかつん。ぎいこぎいこ、もひとつとんてんかん。倉前七瀬とウォルター・Bのおうち建設は続いています。目指すは本でいっぱい、夢のブック・ライフが堪能できるマイホーム！
　柱を立てるための基礎を築き、足場を組み、梁を渡して、現在は屋根を張ってゆく行程です。バッチリ完成したなら、三角屋根の素朴で素敵なおうちになる予定です。
「ウォルターさん、ここに釘打ち、お願いしまーす」
「おっけーだよお。そんでもってそっちには、この板を張るんだよねえ」
「そうですそうです。ありがとーございますー、それがちょうど欲しかったんです」
「なんの。あはは、僕らって相性が良いのかねえ」
　ふたりきりの建築行程にもかかわらず、進行はすこぶる順調です。高所の作業も声かけ確認しながら安全第一、ケガのひとつもなく進んでおります。これもひとえに、ふたりのコンビネーションのたまものと言えましょう。実際、アレが欲しいと思ったらウォルターさんがぴったり差し出してくれるし、七瀬がこれですか？　と手渡すとまさしくウォルターさんの必要とするものだったり……なんてことも多くありました。
「大変ですけど、楽しいですね。ウォルターさん」
「うんうん。田舎暮らしってもう少しツラかったり、キビしかったりするもんだと思ってたけどね、これが案外ねえ」
　にか、と彼は少年のように笑って、
「こんなにわくわくするのは、ははは。誰かさんのおかげかな？」
　なーんて。むずがゆくって、七瀬の口元はなんだかむにむにしました。
「さー、お昼ごはんまでもう少し頑張ろうか。とーおっ」
「たあー！　っと、そうそうウォルターさん。昨日の夜……気づきましたか？」
「うん？　なんだい？」

　夢かと思ったけれど、そうではないのかも。たしかに寝ぼけまなこをこすりながらではありましたけれど……でも七瀬は、見たのです。
　暗い夜の中でぽいんぽいんと跳ねる、小さな小さな影たちを。
「前にも見た気がしてたんですけど……にゃもにゃも、って鳴いてました。そうしたら次の日、基礎の柱が一本増えてて」
「ああ、そんなこと言ってたねえ」
「その時は、寝ぼけてたのかと思って。でも、昨日も聞こえたんです。にゃも、にゃーもって」
「なんだろうねえ？　親切な妖精さんかねえ」
　彼はまだ見たことがないといいます。次に見かけたら、起こしてあげようかな？
「ああ。街のひとたちなら、なにか知ってるかもねえ。マロン先生とかくわしそうじゃない？」
「たしかに！　あとで聞いてみましょうか」
　それはさておき、とんてんかん。お昼までもうひと頑張り！