ダツ☆ゴク　―命がけ脱出SHOW！―｜リアクション

ダツ☆ゴク　―命がけ脱出SHOW！―

＞『脱獄SHOW』はじまり、はじまり

「さぁ！　今回も始まりました『脱獄SHOW』！　前回は中盤で全員捕まるという状況でしたが、今回はどうなるでしょうか？」
　軽やかな口調で切り出す司会者。それをモニターの前で「わぁ～！！」と歓声を上げながら拍手しているのは看守の一人である響タルトと模範囚のシオ・レイゼルオークである。
「今回も結構な人数が参加しているね！　ねぇ、シオさん。今回は脱獄成功者でると思う？」
「うーん、どうでしょうねぇ～。大規模なトラップが炸裂すると複数捕まっちゃったりしますから」
　二人は早速お菓子を食べながらモニターを注視する。
　タルトが囚人たちの部屋の様子を別のモニターで見ていると、彼らもまた日頃のうっぷん晴らしなのか歓声や罵声でもってイベントを楽しんでいるようだった。

（あぁ、とうとうこの日が……）
　囚人が一人真境名アリサは、『脱獄囚（チャレンジャー）』の証であるオレンジの腕章をつけると鋭い目で独房のドアを睨みつけた。
（なんであたしがこんなところにぶち込まれなきゃならないのよ！　さっさとおいとまさせてもらうわっ！）
　冗談じゃないっての、とばかりに強めのため息が出る。
　彼女はこの日の為に刑務所内のどこをどう逃げれば脱獄できるかを調べて脳内でシミュレートしていた。
　慎重に情報を集め、精査し、この『脱獄SHOW』の日をチャンスととらえていた彼女はカウントダウンを聞きながら表情を引き締める。
「月に１度のチャンス。……絶対物にするわよ」

　そして、そのお祭り騒ぎの外で一人の囚人――朝永真深が最短距離での脱獄に挑戦しようとしていた。
（情報は集めた。その結果が、このルート）
　月１回の『脱獄SHOW』の常連となり、刑務所全体の様子を把握した彼女はあえて緻密な計画を立てなかった。余計なことを考えるよりも、先ずはここから出る事が先決なのだ。
（そもそも、手順が多くなるとその分実行に手間取り失敗するリスクが高くなるわ。だったら、考えない方がいい）
　看守たちは今のところ『脱獄SHOW』の方で忙しいらしい。真深は慎重にダクトを上り始めた。
　足元から賑やかな声がする。彼女の記憶が確かならば、この下は独房に続く道があった。『脱獄SHOW』のスタート地点はいつも独房である。その上にダクトを見つけたのは何度目の出場だっただろうか？
　彼女は僅かな感傷を振り払い、ひたすら上り続けた。

　――そして、今回も『脱獄SHOW』が幕を開ける。

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