ダツ☆ゴク　―命がけ脱出SHOW！―｜リアクション

ダツ☆ゴク　―命がけ脱出SHOW！―

＞脱獄、その先へ。

「あぁ、おしい！」
　タルトがそういい、膝を叩く。モニターの向こうでは１組の脱獄囚ペアがトラップに捕まり看守に捕らえられていた。
　シオはポテトチップスを食べながら「あら～」と小さく声を漏らす。
「別のチームと協力すると思っていたけれど……ううん？」
「今のは、相手チームが一枚上手だねー」
　タルトがそう言いながらオレンジジュースのお代わりを問えば、シオは頷いてボトルを受け取る。
「みてみて！　あのチームなかなかがんばってるんじゃない？」
　そうタルトが言ったのはアリサと少年のペアである。
　二人は協力してボルタリング用っぽい壁を上っているが、途中で少年が落ちかけてしまう。どうにかアリサが手を繋ぐことで事なき終えた。
　別のチームは協力し合えず落下し、下のクッションにて沈んでいた。怪我はないが面食らったらしく、そのペアは茫然としている。
｢いい仕事してますねぇ～、あの高さからの不意の落下でもふんわり包み込むクッション！｣
　そして、ボルタリング用の突起にも目を付け、シオは瞳を輝かせる。
「よくみたら、これも絶妙なバランス……！　さすがプロ、技術向上に余念のない職人魂……｣
　どうやら彼女は安全技術系に目を輝かせているようで他にもトラップの素材やデザイン、置き方などにも注目していた。
　そんな彼女に、タルトもまた楽し気に相槌を打ち困ったような笑みを浮かべる。
「毎回トラップやイベント担当の看守は変わるし、製作は毎回違う業者だから対策を打ちづらくしているんだけどたまに攻略されちゃう～」
「あ、これオフレコね？」と小さく舌を出すタルト。シオは「そうなんですねぇ」と頷きながらモニターを見つめる。

　画面の向こうでは、アリサが少年と外に出る直前まで進んでいた。
　ここではぬるぬる滑る廊下で看守と鬼ごっこをしている。ここでアリサは少年ともめていた。
　というのはアリサの作戦。看守の耳目を惹くのが目的である。いや、その筈だった。
（ちょっと！　ここ思いのほかぬるぬるするんだけど！！　勢いで滑って距離を稼げるけどいつ止まるか……）
　内心どきどきしながら滑っていくアリサ。ところがここで前方からも看守が着ているではないか！
「どきなさーいっ！」
「姐さぁーん！！」
　アリサと少年の叫びが廊下に響く。二人は看守が足を広げているのを見、寝そべってその下を潜る。
（やった！　このままつっきれば……）
　だが、ここで問題が発生した。滑っていた身体が止まらないのである。少年が激突し、勢いが増している。
「え？　出口そこなのにっ！　ちょっと！！」
　少年はいつの間にか気絶しており、看守も前と後ろに迫っている。アリサは覚悟を決め立ち上がろうとし……派手にスピンした。
　目が回ってしまった彼女は、こうして捕まってしまったのだった。

「えっ？　うそ、そんな展開……」
　シオはアリサたちの様子に目を丸くしていた。タルトは「クリアしたペアが多いだけぬるぬる……なるほどー」と言いながらトラップの説明を見ている。
「これで今回全員つかまっ……ん？」
　説明書を読みながら別モニターで確認していたタルトは、ハードコースを行く脱獄囚の存在に小さく笑った。

（騒がしいわね）
　一人黙々と梯子を上っていた真深は、水と食料を調達すると搬入口に身を潜ませる。彼女は、『脱獄SHOW』に参加した際、イベント中に監視カメラの切られる場所を知った。そこはテレビカメラや道具から自分たちの食糧が入ってくる場所で、見張りも気が緩んでいる。しかもおあつらえ向きに猫のいないフェンスだ。
　こっそり物陰を利用し、外へ出る。なるほど、センサーすら切ってある……。これもまた、『脱獄SHOW』様様である。
　真深は慎重に外へ出、物陰に隠れる。そして、猫がいないことを確認するとセンサーが復旧する前に、と足早にフェンスを潜り敷地の外に出たのであった。

「なんと！　脱獄成功者がいたみたいだねー？　一人非公開の高難易度コースに挑んだ脱獄囚に拍手を！！　君は自由だ！！」
　司会者がそういって、彼女の番号が刻まれたファイルをシュレッダーにかけた事を知らず。

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