マジックポットたちと、不思議な館の冒険｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な館の冒険

◆ポット事件簿１

「ここは、館……？」

　梓智依子は辺りを見回し、状況を確認する。
　娘の楓の手を引きながら歩いていた最中、いつの間にか、この館に迷い込んでしまったのだ。
　突然、目の前の景色が変わった楓は興味津々に、忙しなく辺りを見渡していた。
　そんな中、小さな手がわくわくと、四本の足がついたマジックポット達を指さす。

「ママ、みて！　あの時の！」

　楓がマジックポット達を見て、はしゃいでいる。

「もしかして、あの庭にいたティーポット？」

　智依子は目を瞬くと、とてとて歩くマジックポット達を見つめた。
　いつか見た不思議な庭と同様に、マジックポット達は鉢植えに近づいて水を注いでいる。
　どうやら、ここでもマジックポット達の役目は変わらないようだ。

「うわ～、すごーい！」

　楓はすっかり、マジックポット達と仲良しだ。
　自分から進んで、お花に水やりをしている。
　その様子を微笑ましく見つめながら、智依子もまた、マジックポット達の仕事を手伝ったりしていた。
　大きな荷物を運んであげたり、高いところが届かないマジックポットのために、ものを取ってあげたりした。
　ふんわりと和やかで穏やかな時間が流れた、その時だった。
　黒い影が風のように現れたかと思うと、歩くマジックポットに襲いかかる。
　しかも、中身をひっくり返し、こぼれた水や茶、花の種などを吸い上げ、自らの腹に満たしていく。

「あれは、なに……？」

　ブラックマジックポットは智依子たちに気づくと、素早く壁を這い、姿を消した。

「ママー、向こうにもいる！」
「え？」

　楓が指さした先には、別のブラックマジックポットがマジックポット達を襲っている。
　どうやら、目的はあくまでもマジックポット達の仕事を邪魔することのようだ。

「あ！　あっちにも！」
「やめなさい！」

　智依子はさっそうと駆け寄り、ブラックマジックポットを追い払う。
　イタズラされて困っているマジックポットを、楓とともに起こして助ける。
　さらに、ブラックマジックポットのイタズラで散らかった部屋を綺麗に片付けていった。

　ひと悶着あったことで、ひとしえに疲れた智依子のもとに、マジックポット達がこちらに来てほしいと招く動作をする。
　どうやら、お礼がしたいようだ。
　マジックポット達に誘われて、二人は部屋の中に入る。

「わぁ、クッキー！」
「すごいわね」

　心の底から嬉しそうにはにかんだ楓を、智依子は思わず抱きしめる。
　この幸せの瞬間を、楓と一緒に過ごせることに胸が熱くなった。
　色とりどりのクッキーとお茶が並べられた机の上は、とてもにぎやかだった。
　智依子はそれを味わいながら、先程のブラックマジックポットが現れた原因を考える。

（何かの呪いというわけではなさそうね）

　だが、このまま放置していたら、マジックポットたちも困るだろう。
　智依子は改めて、先程、起きた出来事を頭の中で整理してみた。

（多分、この館のどこかに何かしらの悪意の吹き溜まりみたいなのがあって、それに一部のポットが影響されているんじゃないかしら）

　智依子は推測を立てる。
　その時、マジックポット達が慌ただしく、部屋の外に出ていく。
　視線を向けたその先には、稲積柚春とウォルター・Bの姿があった。

「話を聞いたら、何か分かるかもしれないわね」

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