マジックポットたちと、不思議な館の冒険｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な館の冒険

◆ポット事件簿３

　月原想花は気がつくと、見慣れない場所に立っていた。
　周囲を確認していくと、そこは不思議な花たちが咲き乱れる館のようだった。
　しかも、せっせと花たちの世話をしているのは、人ではなかった。
　四本の足がついた花瓶、もしくはティーポット。
　調べていくうちに、それがマジックポットと呼ばれている存在だというのが判明する。
　その洋館では、マジックポットが主人に代わって働いていた。

（というか、マジックポットが、この館の主人なのかな？）

　疑問を抱いたものの、こういう状況は嫌いじゃない。
　想花は、忙しなく動き回るマジックポット達の仕事を手伝ったりした。
　まるで物語に出てくるような、落ち着いた雰囲気の館内を歩きながらふと思う。

（これでメイド服とか着てたら完璧だ）

　だけど、想花の今の服装は紫色のロンTと黒のタンクトップの重ね着だ。
　ショートパンツはロンTの裾に隠れている。
　見た目はロンTの裾から直接、脚が伸びて、スニーカーを履いているという感じだ。

（全然、風情はないよね）

　しみじみと思いながら、マジックポット達の仕事を手伝っていたその時だった。

「――えっ」

　黒い影が風のように現れたかと思うと、歩くマジックポットに襲いかかってきたのだ。
　想花が駆け寄ると、ひっくり返ったマジックポットは中身を失っている。
　襲撃者はそれらを吸い上げ、自らの腹に満たしていく。
　どうやら、黒い影――ブラックマジックポットは、マジックポットの中身を奪い取ったりしているようだ。
　周りを見渡せば、他のマジックポット達も、ブラックマジックポット達の突然の襲来に苦しんでいた。

（さすがに見過ごせない）

　想花は意を決して、ブラックマジックポットの前に立ち塞がった。

「君は何故、マジックポットを襲っているのかな？」

　抱いた疑問は、そのまま口からこぼれ落ちていた。
　まず、ブラックマジックポットに意思があるのかを確認しようとしたのだ。
　もし、意志があれば、交渉や説得で悪戯をやめさせるきっかけになるだろうと考えたからだ。
　だけど、ブラックマジックポットは返事の代わりに、想花に襲いかかろうとする。

「……逃げたらだめだっ！」

　恐れを飲み込み、想花はぐっと拳を握りしめる。
　一気に駆け寄ると、次々とブラックマジックポットを蹴散らしていく。
　分が悪くなったと感じたのだろう。
　ブラックマジックポットは壁を這い、姿を消した。
　だが、深追いはしない。
　一旦、ブラックマジックポットを蹴散らしておいて、マジックポット達を逃してから、彼らの出所を調べようと考えた。
　対処療法的に、出てきたところを撃退してもキリがないと判断したからだ。
　疾風怒濤のごとく、姿を現すブラックマジックポットに戸惑いながらも、今まで屋敷のどのあたりに出てきたかを調査していく。
　襲撃回数の多いところを中心に調べていけば、恐らく、その近くに潜んでいるのだろう。
　そう推測した想花の周りで、マジックポット達がぴょんと跳び跳ねる。
　まるで道案内するように付き添っていた。

「この先は書斎かな？」

　口にした途端、顔が強張った。
　調べ上げた情報をもとに、想花はブラックマジックポットの出所を突き止めるために進んでいった。

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