マジックポットたちと、不思議な館の冒険｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な館の冒険

◆ポット事件簿４

「ふむ。奇妙な館だが……」

　思わぬ状況に遭遇した八神修は、不意に背後を振り返る。
　ふと物音が聞こえた気がしたからだ。

「あ、修くん」
「あおい」

　小走りにやってくるのは、恋人の七夜あおいだった。
　あおいに会えた嬉しさで、修は胸がいっぱいになる。
　彼女とは毎日、ニャインや通話で絆を深めていた。

「あおいも呼ばれてきたんだね」
「うん。気がついたら、ここにいたの。修くんも？」
「そうみたいだ」

　そう頷いた修の瞳に、喜びの輝きが宿る。
　こういう事象に置かれて一人ではないという事は、とても心強いもの。
　それが好きな人なら、なおさらだ。
　さっそく、修はこれまで起きた状況を、あおいに説明した。

「どうして、そんなことをするのかな」
「ふむ……」

　修は、思考しながら状況を整理する。
　考えられる限り、この館では恐らく、ブラックマジックポットによる襲撃が相次いでいる。
　この場にいるマジックポットと同じように、他のマジックポットも襲われている可能性が浮上した。

「ポット達に、地面に文字を書いて貰うとかで聞き込みしよう」
「うんっ」

　修の提案に、あおいは間を置かず頷いた。
　二人は手を繋いで館内を歩き、聞き込み調査を開始した。
　すると、近くにいたマジックポット達がやってくる。
　二人の足元にすりすりと身体をすりつける様は何かを願うようだ。

「黒の個体数は？」

　修の質問に、マジックポット達は個体数を地面に描いていく。

「９体」

　あおいが確認すると、マジックポット達はこくこくと上下に身体を揺らした。

「被害者に後遺症はないのか？」

　修の問いかけに、マジックポット達は異常ないことを地面に描いていく。
　どうやら、動きが少し鈍くなるくらいのようだ。

「回復できるかい？」

　修が重ねて尋ねると、マジックポット達はこくこくとうなずいてみせる。

「中身は、君たちにとって、どういう意味を持つのか」

　マジックポット達は『大事なもの』と地面に描いた。
　その理由は、館の主人から管理運営を任されているからのようだった。

「どこに主に表れる？　時間帯は？」

　修の質問に、マジックポット達は一つ一つ地面に描いていった。
　その結果、襲撃に一定の規則性があることが判明する。

「書斎付近に、特に現れるみたいだ」
「時間帯は定まっていないみたいだね」

　思案する修に、あおいは困った表情を浮かべる。
　判明した内容を勘案し、作戦を立てた。
　書斎周辺に隠れて張り込みし、マジックポットの行動を観察する。
　二人は館の中で探し出した双眼鏡、そして虫取り網を一本ずつ用意していた。

「あおいが力を貸してくれたら百人力だ」
「なんで修くんは、そんなに私を喜ばすのよぉ……」

　堪えきれず顔を赤らめたあおいの様子を見て、修は喜びを噛みしめるように笑む。
　高鳴りを感じる。
　まるで、あおいと紡ぐ『時間』には、奇跡が宿っているようだった。
　しばらく見張っていると再び、ブラックマジックポットによる襲撃が起きた。
　だが、二人は即、捕獲するのではなく、現場から去るブラックマジックポットを追跡していく。
　どこに帰り、奪った中身を何に使い、そして誰かと会うのか。
　彼らの犯行動機を解明するために――。

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