マジックポットたちと、不思議な館の冒険｜リアクション

マジックポットたちと、不思議な館の冒険

◆ポット事件簿２

　柚春は不思議な館の中を歩いていた。
　周囲を見回せば、そこには足のついたマジックポット達が花々へと水をやっている。
　ウォルターとともに、ブラックウッド邸のお庭を手入れしていたら再び、迷い込んだのだ。

「黒いポット？」

　智依子が語った内容は、柚春の瞳を揺らがせるのに十分すぎた。

「すごく、はやかったんだよ！」

　さらに楓がマジックポット達とともに、身振り手振りで状況を説明する。

「みんなが楽しく過ごせるように協力したい」
「そうだねぇ。問答無用で、中身が盗られるのは厄介だ」

　柚春が決意を口にすると、ウォルターは警戒するように辺りを見回す。

「中身が盗られる以外の被害はない？」

　柚春がマジックポット達に尋ねる。

「庭を荒らされちゃうとか、貴方たちを割ったりだとか……」
「そういえば、部屋を散らかしていったわね」

　柚春が質問を重ねていくと、智依子は先程の部屋の惨状を伝えた。
　マジックポット達も肯定するように、こくこくと上下に身体を揺らした。

「うーん。前と変わった様子はないねぇ」

　マジックポットの様子を確認していたウォルターはそうつぶやいた。
　大きな被害がないことに安心しながらも、ポットが空になると、問題があるのか再確認してみる。
　すると、中身を失ったマジックポットは、力なくよろめきながらも立ち上がる。
　動きが少し鈍くなるものの、深刻な状況ではなさそうだ。
　安堵するのと同時に、柚春は先程、智依子が語った推測を思い出す。

「悪戯者にも理由があるのかな。誰かに中身を集めるように言われてるとか。君たちが楽しそうで羨ましくての意地悪とか」

　そこで、柚春ははたと思い至る。

「ポットの中身を盗られちゃう……なら逆手に取ってみよっか！」

　名案を思いついた柚春は、マジックポット達に作戦の全貌を伝えた。
　すると、マジックポット達は、それぞれの場所へと案内していく。
　庭園や厨房を見せてもらった柚春は、安眠に向いた芳香浴やハーブティを手際よく準備する。
　ラベンダー、カモミール、ゼラニウム。
　スイートオレンジ、ベルガモット。
　ヒノキ、サンダルウッド。
　マジックポット達から採取できる場所を聞き、花や果実や木片、香りの近い物は全て使っていく。

「このリラックス効果の高い香りを奪ったら、きっと相手も落ち着いて話してくれるはず。現れたら、怖がらせないように捕まえよう」

　柚春の説明に、マジックポット達が嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。

「でも、逃げそうなら、ワットのチョーク投げで進行方向を塞いでしまおうね！」
「ふむ。責任重大だねぇ」

　柚春の満面の笑みに、傍らのウォルターが苦笑した。
　厨房にいるマジックポット達に通訳を頼みつつ、彼らの身振り手振りを見て、周囲の状況を理解していく。
　やがて、香りを奪ったブラックマジックポットの様子が次第に落ち着いてくる。

「作戦、大成功だね」

　柚春の周りで、マジックポット達が小躍りして歓喜を示した。
　だが、更なる情報で、ブラックマジックポットは操られていたことが判明する。

「さて、彼と相談しようか。どうやら、一筋縄ではいかないようだからねぇ」

　事情を察すると同時に、ウォルターはふむと考え込むような仕草を見せる。

「マジックポット達が安心して過ごせるように助けてあげよう！」
「そうだねぇ」

　柚春はウォルターの腕を抱き込み、身を寄せる。
　そして、小さく笑む。
　マジックポット達が共に喜びを分かち合うように、二人の周りを囲んでいたからだ。

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