R&R Journey：密林のルーインズ＜前編＞｜リアクション

R&R Journey：密林のルーインズ＜前編＞

　これから

　黄色いカナリアが霧の中を飛んでゆく。
　偵察に出たラッセルだ。
　梨香は意識がないままぐったりとしているので、豪が持ってきた寝袋を敷物代わりにして寝かせている。
　それ以外の面々は、遺跡のふもとに輪になって座り込んでいた。
　長時間の探索でくたびれていたし、これからどうするかを決める必要もあった。
「……どうしましょうね」
　綾花がおずおずと皆に切り出す。
　梨香を奪取したことで一応、リンコから依頼された目的は達した、と言える。
　だが魔女の正体がグデの母だと分かったからには、そちらもなんとかしたい気持ちもあった。
「皆さん、どうぞリカを連れて森を出てください。ワタシは、母を追います」とグデは言った。
「そんな……ひとりでですか？」
「ワタシ、ずっと探してたが、十年間、この遺跡見つけられなかった。この機会逃したら、きっと母を取り戻すチャンス、もうないデス」
「わかったわ。そうしましょう」
　さゆるがすっと立ち上がる。じゅんが驚いてさゆるの袖をひっぱった。
「ええっ、さゆる。情けはないの？」
「予定外のトラブルにそう長く付き合ってはいられないわよ。あたしは帰るわ。梨香をリンコに渡して、報酬を貰って、はいさよなら。あたしたちの本来の旅程に戻るの」
「そう簡単にいくかのう……」
　イツトリがつぶやく。
「何か気になるのか、イツトリ」
　豪が聞くと、イツトリは口の端を歪めた。
「大事な儀式、と言っていたわりに魔女があっさり引き下がったのがひっかかってのう……」
　サキリも考え込んでいた。
「僕もどうも……手ごたえがなさすぎるというか……」
「気にしすぎじゃない？　と言いたいところだけれど……魔女の言葉、引っかかるわよね」と朝衣。「魔女は梨香を『魔女の器』と呼んでいたわ。わたしや、綾花さんや、さゆるさんでも代わりになりそうな口ぶりだった。男性やじゅんさん、イツトリさんは入ってない……」
　梨香、朝衣、綾花、さゆる……共通点は女性でもれいびだということだ。
「ろっこんという能力を身に宿す女もれいびは、ある意味で『魔女』と言えなくもないのう……」
　そう口にしたイツトリは、はた、とあることに思い当った。
「魔女ランダは『代替わり』するのではないか？」
「代替わり？」
　なるほどとサキリは魔女の言葉を思い出す。
「『誰かが魔女にならねばならぬ』と言っていたね。儀式は、代替わりの儀式か……？」
　
「話の腰を折って悪いけれど。僕は出来れば、夜になる前に森から出たいな」と遥人が言った。
　朝衣だって財布をすられて無一文になった挙句、おっかない魔女や悪霊がまた出るかもしれないこんなところで夜を明かす羽目になるのはご免だ。しかも自分は狙われているかもしれないのだ。この際いろんなことに目を瞑って、さっさとここを立ち去ったほうがよいのではないか……。
　そんな想いで顔をあげると、最年長の珪と目が合う。
　珪は綾花の隣で、神妙な顔をしていた。
「……」
　彼の方へ身体を傾け、綾花が尋ねる。
「珪さん？　どうかしましたか？」
「……いや、これが小説なら……一筋縄ではいかないよな、と考えていたんだ」

　やがて、カナリアになってあたりの偵察に出ていたラッセルが帰ってきて報告した。
　遺跡の周りには廃墟のような石造りの住居があって、今いるここは密林に囲まれた村であること。
　村に人の姿はなかったこと。
　悪霊や魔女の姿も見つけられなかったこと。
　そして、なによりもおかしいのは……。
「――出られないんだよ、ここから」

＜つづく＞

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あとがき

担当マスター：笈地行
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ご参加ありがとうございます。笈地です。
R&R Journey：密林のルーインズ＜前編＞、いかがでしたでしょうか。

＜後編＞は別シナリオ『ねこねこプリズンへようこそ！』を挟んでの公開予定です。
しばしお待ちくださいませ。

異国の伝承と南国ジャングルの冒険、引き続きお楽しみいただければ幸いです。
笈地でした。

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