山のふもとの古民家カフェ『CIRCOLO』｜リアクション

山のふもとの古民家カフェ『CIRCOLO』

●木の優しさある古民家カフェへ

　綾辻綾花は、早川珪とのデートで大学の友達に教えてもらった古民家カフェ『CIRCOLO』に寄ってみる。
「お友達が、ここのコーヒーも雰囲気も良かったって勧めてくれたから楽しみです」
「雰囲気の良い古民家カフェのコーヒーは美味しいんだろうね」
　お勧めカフェがどんなところなのか楽しみです、と綾花の足取りは軽い。

「ふむ、中はどうなっているのかな」
　綾花と珪が古民家カフェに辿り着き、外観をじっくり見ているのを見かけた柏村文也は、今まで、こんなところに古民家カフェがあるとは気づかなかった。
　興味が湧いたので、この店に入ってみることに。
　外観は建築当時の建物をそのまま使っているのか歴史を感じるが、リノベーションされた店内は新旧が入り混じった内装になっていた。
　太い梁と欄干、木製のカウンターテーブル、アンティーク感が漂うチェアは文也の店、古書喫茶『思ひ出』に近い。異なるのは対面式シンクと木製のフローリング、アルミ枠の窓くらいだろうか。
「古民家そのものを再利用、とはいかないか。現代建築を取り入れていても中は落ち着いていて良い雰囲気だ」
　他の客もチラホラいるので、うちの店より賑わっているんじゃないか？　と思えてきた。

　文也がそんなことを思っていると、綾花と珪が古民家カフェに入って来た。
「店内は現代風ダイニングに近いけど、柱と梁、欄干は古民家のものを再利用しているようだね」
　梁を再利用したと思われる柱に触れ、いい雰囲気だと微笑む珪を見てカフェに誘って良かったと綾花は思う。
　空いている席に着き、メニューを見て何を頼もうかと考える。
　厚みある木製のテーブル。木目が特徴のアンティーク感漂うチェアは古民家の梁材を丁寧に加工して作られたものらしい。
　珪は腰掛けているチェアに触れ、そんなことを考える。
　突っ立ってあれこれ考えても埒が明かない。気を取り直し、席に着いた文也はメニューを見る。
（メニューも俺の店より多いんだな。古書喫茶のメニュー増やすべきか？）
　どうしようかと悩んでしまう。悩んでいても仕方ないので、何か食べるか飲むかしよう。
　何にしようか迷うところだが、ナポリタンに決めた。頼むものが決まったので店員を呼んで注文する。
「ナポリタンと……あと、コーヒーも追加で」
　
「私はふわふわパンケーキとコーヒーにします。珪さんは何にしますか？」
　メニューを見て何にしようか迷っていたが、珪が頼んだのはコーヒーだけだった。
「それだけでいいんですか？」
「いろいろあって決められないから、コーヒーだけでいいよ」
　珪は店員を呼び、パンケーキとコーヒー２つを注文。
　待っている間、2人は店内の雰囲気を楽しみながらこのカフェについて思ったこと、感じたことの話を。
「お待たせしました」
　綾花と珪が話をしているうちに、店員が注文したメニューを運んできた。
　テーブルに置かれたコーヒーカップを両手でそっと持ち、綾花はコーヒーの香りを楽しむ。
「うん、良い香りです。ふんわりなコーヒーの癒しの香り……」
「良い香りだね。陶器製のカップトソーサーは古民家カフェに合わせたのかな？」
　珪がそう言うので、カップを良く見ると木でできているかのような優しいデザインの陶器だった。
　カップとソーサーだけでなく、コーヒーフレッシュとメープルシロップが入っているミルクピッチャーとパンケーキをのせたプレートも同じ陶器を使っている。
　それに合うようにという配慮なのだろうか。ティースプーン、フォークとナイフは木製のものを使っているようだ。

このページにイラストを設定する