山のふもとの古民家カフェ『CIRCOLO』｜リアクション

山のふもとの古民家カフェ『CIRCOLO』

●春のWデート

　新学期が始まって4月も半月ほどが過ぎ、3年生になった水上桜の高校生活も最後の1年になった。
「これから受験とか本格的に忙しくなるのがちょっと信じられないね」
　忙しくなったら、恋人の滝沢匠と会えなくなる日も増える。
　そうなる前に会える日は会いたいと思った桜は、匠にこの日に会えないかな？　と聞いてみた。
　その日は空いているから会えるという返事だったので「やったわ！」と桜は喜んだ。
　
　年度末の忙しさで、有沢茉奈は閑野カノンと会えない日々が続いている。
　会えなくてもSNSでのやりとりはしていたが、その間、茉奈は他の女が彼に色目使って（以下略）といった良からぬ妄想をして心身ともに削られまくった。
「新年度も無事に始まり、久しぶりのデート！　久し振りにカノンに会える！」
　彼からのお誘いが決まるなり、茉奈の妄想で削られた心身は一気に回復した。
　デートには何を着ていこうかと考えていると、桜からWデートしないと提案された。
　その日は茉奈とカノンがデートする日と同じだったので、それじゃあ一緒にしようとすることを決めた。

　Wデート当日。
　茉奈は気合を入れておめかししていたので、待ち合わせの時間に間に合わないかもと走って寝子島駅前へ。
「ごめん、待った？」
「私達もさっき着いたところだから大丈夫よ」
　間に合ったようで安心した茉奈は、走って息切れしたのでその場にへたりこみそうに。
「大丈夫か？」
　カノンに支えられ、呼吸を整える。
「ありがとう……もう大丈夫。行きましょう」
　無事合流できた4人は、とりあえず旧市街の方へとのんびり、適当にそぞろ歩く。
「旧市街の落ち着いた雰囲気も悪くないね」
「まあ、いいんじゃないか」
　そんなことを話しながら桜と匠、茉奈とカノンは並んで歩く。

　お昼近くに九夜山のふもとに着いた4人は、古民家カフェ『CIRCOLO』の前に差し掛かる。
「ここ、絶対にいい店だよ！」
　古民家カフェの前で足を止め、茉奈がそう言う。
「へえ、結構いい感じじゃない。茉奈ったら、こういう店、目ざとく見つけるよね」
「こういうことは伊達じゃないから」
　腹減ってきたとカノンと匠が言うので、ここでお昼を食べようかということになった。

　昼食時間帯なので空いている席あるかと思っていたが、カフェコーナーの奥にちょうど4人分の席が空いてたので店員に案内され、そこに行く。
「店先はいかにも古民家な感じだけど、中はカフェっぽいわね」
　木製のダイニングチェアに腰掛けた桜は、カフェーコーナーを見渡して言う。
「あたし、古民家カフェだから中もそれっぽいものだと思ってたわ。畳に座ってとか」
　そう言う茉奈に、何にするか決めようとカノンがメニューを差し出す。
　メニューを見て、4人はあれもいいし、これもいいと話しながら考える。
「私はコク深ボロネーゼとコーヒーにするわ。滝沢君は？」
「俺もコーヒー。それと日替わりランチの肉」
「あたしは自家製野菜たっぷりパスタ」
「俺は懐かしのナポリタン。コーヒーは食後に」

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