【クリスマス】ポムポムトナカイと気まぐれサンタのクリスマス｜リアクション

【クリスマス】ポムポムトナカイと気まぐれサンタのクリスマス

◆これもきっとデート

　水上桜と滝沢匠は交際を始めてから３回目のクリスマスを迎えた。今日は１年のなかで特別な日なのでデートがしたかったが、いま２人そろってサンタの格好をしてケーキの販売に勤しんでいる。しかも店先での路上販売なので、寒い中で道行く人々に呼びかけ続けている。

（まあ、見方を変えればバイトを通じてのデートとも言えなくもないのよね）

　２人が付き合い始めて３年目。
　しかし相変わらず互いの事を『滝沢君』『水上』と苗字で呼び合っている。下の名前で呼ぶタイミングもあったかもしれないが、気づけばこの呼び方ですっかり馴染んでしまった。そんなことを思いつつ横を見れば、匠が懸命に呼びかけを続けている。
　今日の寝子島はうっすらと雪が降っている。つまりホワイトクリスマス。

（ホワイトクリスマスっていえば聞こえはいいけど）

　桜は自身の格好を振り返る。サンタ服は一応防寒仕様だが、それほど期待できない。現にだいぶ体が冷えているのを感じる。

「水上、そろそろ店の中で温まったほうがいいんじゃないか」
「そうね……それじゃ先に入るわ」

　店内は暖房も効いていて暖かい。しかし書き入れ時なので、こちらもなかなか忙しい。屋内の忙しさと屋外の寒さを天秤にかけたような状況だった。

（ほどほどに温まったら滝沢君と交代しよう）

　そうして２人で外と中を入れ替わりながら働いた。まさにてんてこ舞いな１日が営業終了とともにようやく過ぎた。

「終わった……」
「お疲れ様」
「滝沢君も」

　桜と匠は互いを労った。売れ残りのケーキを割引で購入して雪道のなか帰路に着く。向かう先は桜の自宅――シーサイドタウンのアパートだ。

（何度かおうちデートしてるんだよね）

　そう思うと、今日を少しだけ特別な日にしたくなった。そこで帰り道にあったコンビニでチキンを買い、ケーキに添えることにした。桜の家に着き、２人はアウターを脱いでケーキの準備をする。桜はコーヒーを淹れて、匠はチキンを温め直す。それらをテーブルに並べ終えて腰を落ち着ける。

「改めて、今日一日お疲れ様」
「お疲れ様」

　コーヒーで乾杯するのは少し不思議な気持ちだった。ケーキやチキンを堪能しながらアレコレ色々な話をする。バイトのこと、学校のこと、最近あったことなど話題は尽きない。
　気づけば終電が迫っており、匠は帰り支度を始める。見送るために桜も一緒に部屋を出て、駅まで見送った。

「それじゃ、またね」

　桜はそう言って、別れ際にキスをした。

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