【クリスマス】ポムポムトナカイと気まぐれサンタのクリスマス｜リアクション

【クリスマス】ポムポムトナカイと気まぐれサンタのクリスマス

◆『いつか』を夢見て

　２年前。有沢茉奈は自分のくじ運が最強だったと振り返る。
　商店街のくじ引きでクリスマスクルーズのペアチケットを引き当てたのは紛れもなく豪運だったし、そのとき閑野カノンと過ごした時間はかけがえのない思い出だ。しかし次の年は受験勉強のためクリスマスの予定は潰れてしまった。彼に応援してもらい、無事に大学に合格したものの残念な気持ちはあった。
　そして今年のクリスマス。
　茉奈は星ヶ丘の超高級ホテル『ステッラ・デッラ・コリーナ』に居た。そこのスイートルームで優雅な時間を過ごしている……なんてことはなかった。

（今年はバイトのクリスマスになっちゃった）

　彼女はホテル内のレストランでウェイトレスとして働いていた。厨房の洗い場にはカノンもいる。今日はクリスマスということもあり、予約客が多数訪れている。

（いつかあたしたちも……）

　茉奈は心のなかでそう願いつつ、テキパキと仕事をこなす。目が回るほどの忙しさが続き、ようやく休憩時間がやってきた。今回はまかないがあって、スタッフがさっと作ってくれた。

「おいしい！」

　さすが最高級ホテルのレストランというべきか。まかないとは思えないほどの旨さだった。同じタイミングで休憩に入ったカノンも無言で頷いている。

「ホテルも凄いが、料理人も一流なんだな」
「ね！」

　美味しいまかないだけでなく、カノンの笑顔で茉奈のエナジーが補給されていく。スイートルームは叶わなかったが、同じ時間に働くのも悪くない。２人で休憩時間いっぱいまで雑談に興じる。それぞれの仕事場であった出来事を語り合うのは新鮮だった。

「あ、そろそろ休憩時間が終わるわ」
「それじゃ後半も頑張るか」
「そうね」

　気合を入れ直した２人は、残りの勤務時間を完璧にこなしきった。茉奈はホテルを出た後、カノンと外で合流した。互いに今日の仕事を労いながらカノンのアパートへ向かう。
　そこで改めて２人きりのクリスマスを祝う。ケーキと分け合い、プレゼント交換も行った。楽しい時間が過ぎ去り、後片付けを済ませるとゆったりくつろぐ。茉奈がカノンの肩に体を寄せて、カノンも彼女を抱き寄せる。雰囲気も相まって互いにその気になり、そっと唇を重ね合う。
　そして横になり、いよいよという流れで……２人ともどっと疲れが押し寄せて眠ってしまった。

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