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桜の下で君と笑おう・2
特に気の利いた行き場所を思い浮かべられるでもなく、それでも一緒に居たかった。
こっちは私の、と缶入りミルクティーを取り出したあおいと並んで座って水分補給を済ませ、彰尋は立ち上がりながらどこへ行こうか考える。
とりあえずペットボトルを捨てようとゴミ箱を探しかけて、
「彰尋くん、あそこ」
同じように立ち上がったあおいの声に動きを止める。白い指先が示しているのは、芝生の緑色の一角、ぽつりと落ちた桜色。
桜の花びらが風で吹き寄せられたのかと思った瞬間、桜色はころころころりと転がって起き上がった。スキップでも踏むような軽やかな足取りで歩き始めるのは、三角耳に長い尻尾、しなやかな体の猫。
「桜色だ」
「珍しいね」
思わずふたりで追いかける。
近寄るふたりに気が付いたのか、猫はふと立ち止まった。薄紅の瞳で振り返って、にゃおんと笑う。
尻尾をゆらりと揺らして彰尋とあおいに駆け寄り、どちらの脛にもぐいーぐいーと頭を押し付け、
「こんにちは、猫さん」
あおいが触れようと手を伸ばした途端、気まぐれな動きでするりと離れた。数歩分の距離を取り、追いかけてこないの?、とばかりに振り返る。
「行こう、彰尋くん」
「追いかけよう、あおいさん」
ふたり同時に言って、ふたり同時に笑う。
通りがかりの自販機脇のゴミ箱にペットボトルと空き缶を捨て、一定の距離を空けて歩いてゆく桜色の猫の尻尾を追う。公園を出て、キャットロードの脇を過ぎ、寝子島街道を渡るときは信号をちゃんと守る猫に驚く。
「春からはここに通うんだよね、彰尋くん」
ご機嫌に歩いて行く猫の尻尾を眺めていたあおいがふと視線を移したのは、シーサイドタウン駅を過ぎてすぐ見えて来る木天蓼大学寝子島キャンパス。
「うん」
「私は寝子島を離れちゃうけど……どんなところか、また教えてね」
それは離れても電波を通じてまた話が出来るということ。
距離があっても縁は切れないということ。
それがただただ嬉しくて、彰尋は大きく頷いた。
「必ずまた連絡する」
「私も九州の美味しいものの写真とか送っちゃう」
空色の瞳をおどけるように細めてから、あおいはぱちりと瞬いた。くるくるとよく表情を変える瞳が見つめているのは、大学近くの服屋のショーウィンドウ。目を惹くナニカがあったのかとあおいの視線を追った彰尋の視界にまず入って来たのは、両の前肢を揃えてショーウィンドウの横にちょこんと座り、妙に行儀よく硝子を見上げる桜色の猫。
猫とあおいが一緒に見ているもの――それはショーウィンドウの内の服ではなく、夜の観覧車であおいと彰尋が向き合って座るいつかの春の一場面だった。
「え、……」
「こういうフシギ現象にもたくさん出会って来たよね、私たち」
目を瞠るばかりの彰尋にあおいが笑いかける。
「君のせいかなー?」
笑いながら猫を抱き上げ、もふもふの首にごしごしと頬を押し付けてあおいはまた笑う。それがとても可愛くて、だからますます彰尋は彼女から離れ難くなってしまった。
赤くなる頬を片手で隠していつの場面なのか考える振りをしながら、とっくに分かっている。忘れるわけがなかった。これはあの春の日だ。
懐かしい記憶だった。
懐かしくて、胸がぎゅうっとなるような記憶。
(最初は一人で観覧車に乗ったっけ)
八夜城を後にして、フジコ先生の演技を観られた喜びと興奮のままに街を歩いて、観覧車まで辿り着いた。フジコ先生なら恥ずかしがったりしないと自分に言い聞かせながら、男子高校生ひとりで観覧車に飛び乗った。
あの桜の日は、不思議なことが多かった。
九夜山山頂に眠り猫城を探していて、小窓から迷い込んで来た桜の花びらに触れた途端にあおいと初めて出会ったことを思い出したのも、今思えばきっと、神魂の小さな影響であったのかもしれない。
――私、七夜あおい
出会って何年も経った今も、初めて出会ったあの日のあおいの人懐っこい笑顔はしっかりと覚えている。思い出す度、ことことと心臓が鳴り始める。
今だって、そうだった。
隣にその女の子がいるのに、うるさいくらいに胸が騒いでいる。
華奢な背中も、守ってあげたくなるような儚げな佇まいも変わってはいないけれど、今はもう知っている。彼女は誰かに護られることを良しとしない。必要であれば必死に足を踏ん張って両腕を目いっぱい広げて、守るべきものを守る。その強さが彼女にあることを彰尋は知っている。
初めて会ったあの日からずっと、この笑顔の綺麗な女の子が胸の真ん中に居る。
「あおいさん」
猫を抱いてショーウィンドウを見つめるあおいの横顔を見る。
観覧車に一人乗って初めてあおいと出会った日のことを思い出して、――観覧車を降りた直後に、あおいと出会った。
驚いて、驚いたまま咄嗟に声を掛けた。
――あの、一緒に……!
あのときの自分の行動力を思うと今でも少し笑えてしまう。笑いながら、
(よくやった)
そう言ってあの時の自分の背中を叩いてやりたい気分になる。
あおいと一緒に、ふたりきりで観覧車に乗った。
(一言一句までは流石に覚えてはいないけど……)
桜と月に彩られた寝子島を眺めて、色んな話をした。
彼女も幻の八夜城を訪れていたこと、そこで知った八ヶ淵の千代姫と千年桜のこと。彰尋は桜の宴に見た伝説の劇団のこと、フジコ先生の恐ろしいまでに魅力的な演技のこと。
夜の観覧車に揺られながら眺めた景色は、今も彰尋の記憶にある。
(とても、綺麗で)
忘れがたい記憶だった。あのとき向かいに居た女の子の存在ごと。
あの夜からも色んな思い出を重ねても尚色鮮やかに残る記憶を胸に辿り、彰尋はあおいを見つめる。
「ねぇ、あおいさんは……覚えてるかな?」
自分にとっての大切な思い出が、彼女にとっても忘れがたいものであって欲しかった。少しでも覚えていてくれればと祈るように聞いたのに、
「八ヶ淵のお城もまた行きたいね。今度は一緒に」
なにひとつ忘れていないかのようにあおいは笑うのだ。
「あの夜みたいに観覧車に乗ったら、千年桜が見えたりしないかな」
今だ、と思った。あの夜のような行動力を示せ、と心の中で自分自身が喚く。
卒業式の日に、己の気持ちに対する彼女の答えをもらうつもりだった。
それがどんな答えになるのかなんて数日前であっても分からなくて、けれど彼女に答えを急かすことだけはしたくなかった。今はただ、
(二人にとって素敵な思い出をまた一つ重ねられたら……!)
たくさん話をしたかった。
話すことが尽きても、ただ傍に居たかった。
「っ、……」
心臓がことことと、ドキドキと鳴っている。今までにも一緒にたくさん色んな場所に出かけていても、それでもやっぱり好きなひとを誘うのはどきどきしてしまう。
「行こう、あおいさん」
手を繋ぐことも出来ないまま、大学の校舎の先、シーサイドアウトレットの大観覧車を指し示す。
「まだ明るいけど、……きっと、桜が綺麗だから」
どうにかこうにか誘いの言葉を口にした途端、あおいの手の中で桜色の猫がもぞもぞと動いた。にゅるん、と軟体動物の動きであおいの手から離れ、別のナニカを見つけたように一目散に駆けていく。
「ああ、行っちゃった……」
ショーウィンドゥに映っていたあの夜の光景も同時に掻き消えて、あおいが夢から覚めるように瞬きを繰り返す。服についた猫毛をぱたぱたと払い、彰尋の示す観覧車を見遣る。
「……色々、あったよね」
「うん、……色々あったね」
ちょっとだけ寂しい口調で囁いて、
「きっとこれからも色々あるよね!」
寂しさを振り払うようにあおいは軽い足取りで数歩進む。くるりと身体ごと振り返って、青空と舞い散る桜を背に、青空と桜より色鮮やかに笑う。
「行こう、彰尋くん! 一緒に寝子島を観ようよ!」
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シナリオデータ
担当ゲームマスター
笈地 行
桂木京介
阿瀬春
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
50人
参加キャラクター数
26人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年11月04日
参加申し込みの期限
2024年11月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年11月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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