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寝子島高校
もうひとつの卒業、桜色のにゃあ
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春の決意の
春のにおいを纏った風に体当たりされた。
知らず伏せていた睫毛まで揺らぐくらいの強い風を受けて、咄嗟に一瞬きつく瞼を閉ざす。それでもずっと瞼を閉ざしている気にはなれず、
志波 武道
は眼鏡越しの瞳をそっと開いた。
いちばん初めに見えたのは、爛漫の桜だった。
シーサイドタウンの一角の公園を埋める桜色に思わず瞳を細めて、
(ああ)
桜に思うは自分のことではなく、大事に思うあまり彼に関わる全てが大事と定めた弟のこと。
(そろそろ卒業かぁ……)
春風に吹かれながら、大股にのんびりと歩む。大学はまだ春休み中ではあるものの、図書館で調べものがしたかった。急いではいないが――
「ん、」
するり、足元を春風よりも温かで優しい手触りのナニカがすり抜けた気がして視線を足元に落とし、
「わぁ」
武道は思わず歓声をあげる。
澄ました顔して軽やかな足取りで過ぎて行くのは、陽の光につやつや輝く桜色の毛並みした猫。
「ベリーキュートなカラーリングの猫ちゃん!」
ご機嫌にゆらゆら揺れる薄紅色の尻尾に目を奪われ、うっかり猫の後を追う。さほど急ぎの用事でもなし、綺麗な色した猫につきあってちょっぴり散歩に興じるのも悪くはない。
「お散歩中かなーどこ行くのー」
こちらと歩調を合わせるように並んでくれた猫がつと桜色した鼻先をもたげる。
「なに見てるのー★」
春陽の光を映して優しい夕陽の色になる瞳が見つめているのは、公園に咲く満開の桜を映す洋服屋のショーウィンドウ――の、はずだった。
「って、……え?」
大きな硝子をスクリーンのようにして映し出されているのは、けれど桜でもなく、立ち尽くす己でも桜色の猫でもない。
「……なん、で……」
硝子いっぱいに映っているのは、私立寝子島高校へ編入をした直後の自分。
「この姿、が……」
自嘲にも似た、少し困ったような笑みを浮かべた学ラン姿の自分が、映画の一幕のようにそこに見えた。
手にしているのは寝子高の制服で、胡坐をかいて座っているのは編入直前からお世話になった下宿先の自室の畳の上で。
(あの時だ)
引っ越しを終えた直後の日。
学校関連の手続き、転居に関する役場の手続き、諸々を慌ただしくどうにかこうにかひとりで済ませ、下宿先の部屋に疲れ切って座り込んだあの日。受け取って来た新しい制服を取り出して見つめたあの時。
(あぁ……)
引っ越し直後の部屋は荷解きもまだの段ボールや紙袋に溢れ返っている。それがまるであの頃の自分の複雑な気持ちを表しているようにも見えて、懐かしさよりも先、胸が締めつけられた。
自分の行動力に呆れもしていた。
地元の――今まで暮らして来た福岡のみんなと離れた寂しさもあった。
――ブラコンめ
弟が行くから、と急な編入を決めた自分に対し、そう言って笑った友達がいた。
――お前が居ないのは寂しいなあ
そう言って肩を落とす友達もいた。
その誰もが、最後は笑って送り出してくれた。
頑張らなくてはという必死の覚悟と同時、弟と共に送る新しい高校生活への期待もあった。
(がむしゃらだった)
今でも思う。無茶な話だ。
転入を決めたのは進級直後の四月だった。なにもかもを早急に進めて、だから当然、両親は良い顔をしなかった。するわけもなかった。
だから膝突き合わせてとにかく話をした。転入の理由は両親ともに理解してくれていたように思うけれど、ふたりが心配したのは、
(……俺の未来、だよな)
今なら分かる。
転入の条件に成績の維持を突きつけた父の難しい顔の意味も。
住む場所は自分で探しなさいと息を吐いた母の困り切った顔の意味も。
弟を大事に思うあまり、己をないがしろにしていると見抜いていたのだ。
このままでは下手をすれば弟のために自分を犠牲にしかねない――そこまでふたりが思っていたのかは分からないまでも。
厳しいように思える条件の裏には、いつでも帰って来なさいという優しさがあったのだろう。
(あの時は分からなかったよなぁ)
ショーウィンドウに映し出される今より幼い自分の顔を見遣る。悲愴な顔をしている。自分のことばかりを思い詰めている顔をしている。
ただただ必死だった。
福岡から遠く離れた寝子島に弟をひとりで行かせたくなかった。けれど弟の意志を挫きたくもなかった。であれば己が出来ることはただひとつ。
後を追う、それだけ。
(なぁ、)
昔の自分に笑いかける。
(色んなひとにお世話になったよな、俺)
住む場所を探すために単身、弟にも内緒で寝子島を訪れた日のことを思い出す。
桜は確かもう散っていた。春風ばかり強い島の不動産屋を幾つも巡って、どの下宿先も埋まっていたり条件に合わなかったりで途方に暮れた。どうしよう、どうにかしなくちゃと焦ってひたすらに島を歩いて歩いて、疲れ果てて公園のベンチに座り込んだとき、
――こんにちは。君、顔色悪いけど……お腹空いてない?
声を掛けてくれたのが、旧市街の表参道商店街にある米屋『美咲』の若奥さんだった。
元猫鳴館出身の彼女は後から言っていた。
――猫鳴館の子がお腹空かせて座り込んじゃってるのかしらって思って
もしもそうであれば同じ猫鳴館出身の旦那に頼んで大きいおにぎりでも振舞ってくれるつもりだったらしい。
猫鳴館生でないことはすぐに知れたが、それが縁で下宿先としてお世話になることとなったのは幸いだった。
――お店手伝ってくれたら下宿費用お安くしちゃう!
――腹減るのがいちばん良くないからな、米食え米! でっかいおにぎり作ってやる!
美人の若奥さんにも、やたらめったら爽やかな若旦那さんにも、とても良くしてもらった。
(俺なんかに)
胸の内に呟いた途端、その言葉に反応して怖い顔をしたり悲しい顔をしたりする友人の顔が思い浮かんで、知らずちょっと酸っぱいような顔になる。
(お子さんが生まれたみたいだし、今度お祝い持っていかなきゃだな)
誤魔化すように若夫婦のことへと思考を切り替える。
それにしても、と硝子面に映るたった数年前の自分を見つめる。
(もうホント、がむしゃらだったよな)
父との約束もあって、成績を落とすわけにはいかなかった。フツウを守ることに忙しかったときにテストの点数が悪くなったりはしたものの、必死に勉強して何とか及第点はキープしたし、その上、
(生徒会長までやっちゃった!)
忙しくも楽しい日々を思い出せば、ふわりと頬が綻んだ。
(後悔はない)
それは確かだ。ただ必死に、がむしゃらに駆け続けて来たこの道筋でなければ、今の自分はいなかった。そう言い切れる。ただ、
(……なんて言うかな?)
寝子高の制服を決意の印のように掲げ持つ己に向け、武道は首を傾げてみせる。今より少し幼い己が応えるはずもなく、だからこそあのときあの決断をした自分の姿を客観的に見ることが出来た。改めてここ数年の怒涛の日々を思い返すことが出来た。そうして、呆気にとられてしまった。
(我ながら、濃い高校生活だったよなぁ)
苦笑気味に視線を落とせば、足元には前肢を揃えてちょこんと座る桜色の猫。
にゃあと鳴いた猫がショーウィンドウから視線を逸らせば、過去の己の姿は幻のようにふわりと消えた。
硝子の面に残るのは、爛漫の桜と今の己と、桜色の猫。
「君の仕業かぁー……」
武道はその場にしゃがみこみ、両手で猫を抱き上げる。
「んもー★」
もふ、と桜色したお腹に顔を押し付ければ、ふわふわのあったかい毛とおひさまのにおいがした。
猫はされるがまま、にゃあと笑う。
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担当ゲームマスター
笈地 行
桂木京介
阿瀬春
墨谷幽
シナリオタイプ(らっポ)
ゴールドシナリオ(200)
グループ参加
なし
シナリオジャンル
オールジャンル
定員
50人
参加キャラクター数
26人
シナリオスケジュール
シナリオガイド公開日
2024年11月04日
参加申し込みの期限
2024年11月11日 11時00分
アクション投稿の期限
2024年11月11日 11時00分
参加キャラクター一覧
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