さくらのかき氷屋さん｜リアクション

さくらのかき氷屋さん

◆今日も元気いっぱい

　柚瀬玲音は今日も元気に子供用マウンテンバイクで寝子島を駆ける。３月の空気を肌に感じながら、なにか面白いことはないかとワクワクしている。そんな折、ふとかき氷のキッチンカーが目に入ってきた。
　今日は快晴で、気温も高め。夏の印象が強いかき氷でも、美味しく楽しめそうだ。

「やっぱりかき氷は食べたいね、ね！　ボクのおこづかいで買える値段かな、かな？　さくらのがたべたいんだよー！」

　マウンテンバイクから降りて、玲音は店先に向かって走り出す。注文を受けたさくらはキッチンカーのなかで慌ただしく作り始めた。

（あれ？　おねーさん困ってるかも？）

　玲音はさくらの様子をみて、そう感じた。受け取ったかき氷を手に、少し離れたところに腰掛ける。注文した『さくら』は、桜の花びら状のチョコチップを散らしたさくらんぼ味。程よい風味にチョコチップの食感が合わさってとても美味しい。
　キッチンカーに目を向けると、やはりさくらが困っているように見えた。　

「じゃあじゃあ、かき氷食べて、そのあとお手伝いするんだよだよ！」

　玲音はかき氷を味わいつつもささっと食べ終えて、さくらに手伝いを申し出た。

「ここのかきごおりおいしいよ！　おにーさんもおねーさんもたべてって！」

　キッチンカーの設備を勝手にいじると危ないと思い、呼び込みなどを行う。その甲斐あって、人がキッチンカーに集まってきた。注文を聞いて作っている間にさらに別の客がやってくる。なかなか忙しい状況が続くなか、玲音たちはなんとか対応していく。
　ようやく客の流れが落ち着いてきて、２人とも体を休める。

（そういやさくらおねーさん、ミミとしっぽがついてるけど、制服かなんかなのかな？）

　さくらは猫又のあやかしなので、玲音が見ているミミとしっぽは本物だ。キッチンカーが開店したときには隠していたけれど、忙しくて不意に出てしまったのだろう。

「おねーさん、その耳……」
「え！？」

　指摘されて、明らかにしまったという顔をするさくら。

「ボクも耳付きキャスケットだからおそろいだね！　おそろいおそろい！」
「うん！　おそろい！」

　ぱあっとさくらの顔が明るくなる。打ち解けた２人は客が来るまで色んなことを話した。その流れで新作かき氷の話題になった。

「ボクね、こんぺいとういれたらおいしいとおもうんだよだよ」
「こんぺいとう？」
「つぶつぶで、あまくて、おいしいんだよだよ！」
「へー！　そうなんだね！」
「がりがりがりって、はごたえもでるし！　いいとおもうんだけど、だめかな？　かな！」
「おもしろそう！」

　さくらは興味津々に玲音の話を聞いている。新作のアイディアを一緒に考えるのも楽しい。休憩を終えてから完売するまで２人は楽しく過ごした。

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