バードワールド！　木天蓼花鳥園へようこそ｜リアクション

バードワールド！　木天蓼花鳥園へようこそ

○穏やかな一日○

　リニューアルオープンしてから一週間程が過ぎた頃、鴻上彰尋は七夜あおいと木天蓼花鳥園を訪れていた。
「わあ、綺麗！　可愛い！」
　目の前に広がるのは、色とりどりの春の花々だった。ここはかなり敷地が広く、鳥関連の施設だけではなく、花園にも力が入っている。手前側には様々な花が区画分けされて花開いていて、その中の円形スペースに桜が植えられている。適度にベンチも置かれ、老若男女楽しめるようになっていた。花園を半分囲むように手入れされた林が広がり、野鳥も観察できる。
　彰尋とあおいは、まずは桜を見に行った。梅はもう散っていたが、桜は一番綺麗な時期だった。周囲で花を咲かせているのはチューリップで、赤や白、桜より濃い目のピンクの花が可愛らしい。
「桜とチューリップが一緒に見られるなんて、贅沢だね！」
　あおいはスマホを出して、早速カメラを起動させた。横で画面を見ていると、全体を写す鉄板の構図や、それぞれの花のアップを撮っている。更に一枚自撮りすると、彰尋も誘う。
「ほら、彰尋くんも」
「あ、そうだな」
　桜とチューリップを背景に横に並び、フレームに入るように顔を寄せる。あおいの頬がすぐ近くにあって、少しドキドキする。
　パシャッというシャッター音と共に、笑顔のあおいと照れ笑いの彰尋が保存された。

　続く桜と菜の花畑もしっかり写真に撮り、黄色い絨毯の脇を歩いて林へ向かう。
「彰尋くん、お花好きなんだね」
　ストローつきのドリンクを飲みながら、あおいが言う。ドリンクホルダーはハシビロコウのデザインで、彰尋は首からオニオオハシのホルダーを提げている。
「嫌いじゃないな。まだ来たことがなかったから、リニューアルした機会に見てみたかったんだ」
　一度来てみると、足を運びやすくなる。普段は見られない鳥にも、花園にも興味があった。夏のメインはひまわりを予定しているということだった。季節ごとに花が変わるなら、その度に見に来るのも良いかもしれない。
「うん。割と近くだし、通いやすいしね。私も、ここは何回来ても飽きないと思うよ」

　林の中に入ると、清涼な空気が二人を包んだ。花の香りが薄れ、土と緑の香りが鼻腔をくすぐる。どこからともなく、チチチ、という鳥の声が聞こえた。
「あっ、あそこ！」
　しばらく歩くと、きょろきょろしていたあおいが斜め上方を指差した。木製の素朴なデザインの巣箱の中から、数羽の雛鳥が頭を出している。そこに親が飛んできて、雛の口の中に順番に嘴を突っ込んでいく。
「ご飯あげてる！　あんな所も見られるんだね！」
　親鳥が飛び立っていくと、雛達は巣箱に引っ込んだ。たんぽぽの綿毛みたいなふわふわの頭が木枠に撫でられていく様子がとても可愛い。
　歩いていると、頭部の一部が髪のように黒い白い鳥や、緑の鳥、茶色の鳥なども見ることができた。可愛い可愛いと、あおいはとても楽しそうだ。
「ね、次はどうする？　鳥さんのスペースも見てみよっか」
「そうだな。どこか行きたいところがあったら、そこへ行こう」
「うん。えーと……」
　パンフレットを広げたあおいは、直後に「あっ」と笑顔になった。
「ハシビロコウが見たいな。ほら、グッズも買ったし」
　首から下げたドリンクホルダーを軽く持ち上げる。
「一回会ってみたいと思ってたの」
「よし、行こう」
　林を出て、花園の道を歩いて施設に向かう。
「オニオオハシも見に行こうね。オニってつくけど全然オニっぽくないし南国の鳥って感じで可愛いんだよ！」
　笑顔で話すあおいはとても輝いていて可愛らしく、今日一緒に来れて良かったなと彰尋は思った。