共に。これからも。｜リアクション

共に。これからも。

　話し足りないことはたくさんある。
　例え、今日を１日一緒に過ごしていたとしても。明日もどこかで会えるとしたって、尽きることはない。
　それくらい、八神修の知識や話題が多いわけではなく、相手が七夜あおいだからこそ共有したいと願っているのだけれど……今日も日は落ちて、彼女を寮まで送り届ける時間がやってきた。
　歩幅を合わすことを口実にゆっくり歩き、彼女が飽きないようにと理由を付けて話題を振る。景色を目に焼き付けるように眺めて無言で過ごすのも悪くはないけど、今日はワイワイと話したい気分で。
「俺の方は、ほぼ家具も新居に揃った感じだね。あおいは、荷物送るのはいつ頃？」
「空きは出てるんだけどクリーニング待ちでまだハッキリとは……入学式に間に合えばいいんだけど」
　単身だし、寮から寮なので荷物もさほど多くはないしと楽観的に構えていたあおいも、そろそろ気になる時期に差し掛かったようだ。
　もう卒業式は間近となり、寮生も幾人か出払っている。新入生を迎える準備が必要なのは桜花寮だって同じことで、後片付けなども考えると期日ギリギリまでのんびりとしているワケにもいかない。
「荷運びとか手伝うよ。もちろん、力仕事も頑張るさ」
　二の腕を叩いてみせる修に苦笑すると、あおいは足を止めて斜面から見える海を眺めた。
　夕陽を浴びて煌めく海面は、もう何度と見た景色だけれど……寝子島の景色はもう数日しか見られないのだと思うと、自然とあおいも物憂げな顔を浮かべてしまうようだ。
「……また、遊びに来よう」
「え？」
「実家ではないけど、もうひとつの地元みたいな物というか。俺とあおいにとって、大事な場所だし」
　祭り好きなこの島は、いつだって賑やかに歓迎してくれるはず。もしあおいに時間が取れるなら、飛行機のチケットを送ってもいいし、ビデオ通話で空気感だけでも伝えてあげたい。
「俺が九州まで行くのもいいけど、やっぱり……あおいが寂しくないようにっていうのが１番だからさ」
「……ありがとう」
　弱々しく微笑むあおいは、寝子島を離れたくなかったのだろうか。それとも、弟妹に遠慮していただけで実家に帰りたいと思っていたのだろうか。
　これだけでは彼女の不安を払拭できないのだと知ると、修はあおいと同じように海を眺めた。
「俺も寂しいもん」
　ぽつりと、拗ねた少年のような声音に、あおいは思わず俯きかけていた顔を上げて隣を見る。その視線に照れ笑いを浮かべる修は、もう一度あおいを見て言い直した。
「寂しいに決まってる。大切な人と離れるなんて……ニャインや電話だけじゃ足りないよ」
　今だって、寮に送っていく道が長くなればいいのにと思うし、同じ桜花寮だったら長く一緒にいられたとも思う。
　それでも明日が来てくれないと、あおいとの約束の日は近づいてこないし、身近すぎては色々な経験を彼女と出来なかったとも思うから。
「だから、卒業旅行に行かないか？　それから、２人が新天地に慣れた頃にお互いの住む町を紹介しあってさ」
「……うん。それも楽しそうだよね、考えとく！」
　大きく伸びをして、あおいは胸いっぱいに寝子島の空気を吸い込むと、朗らかに笑った。
（その笑顔だけじゃ足りないなんて、欲張りになったな）
　もっと、彼女のことを知りたい。一緒に居たい。
　終わりを迎える高校生活のその先に、２人で歩める新しい道が続いていると、修は信じている。

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あとがき

担当マスター：浅野悠希／焼きスルメ
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みなさまご参加ありがとうございます、浅野です。

焼きスルメマスターのリアクションを楽しみにされていたのに、申し訳ありませんでした。
ある日の帰り道、ゆるやかな時間を表現できていたら嬉しく思います。

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お時間ありましたら、よろしくお願いします～！

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