【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆｜リアクション

【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆

「お城には塔がいくつか立っているのでそのうちの一つに行ってみましょう」
　少し考えて、萌々子は幸次を塔へ案内しました。
「いい景色だね」
「山の上に建っているからここからの景色は島を一望できますよ」
（このあたりには、俺たち以外誰もいないみたいだ）
　景色も気になりましたが、幸次はすばやく周囲を伺いました。
「じゃあこのタイミングで……これホワイトデーのお返し」
「ホワイトデーのプレゼント……？　あ、ありがとうございます」
　鞄から取り出したプレゼントを、幸次は萌々子に手渡します。
「一枚のメダルっぽく見えるけど実はリングと中のメダルに分かれるんだ。メダルの方も紐が通せる穴が開いてるから二つで一つのアクセサリーってことで……どうかな？」
「素敵です！　ペアっていいですね、大切にします」
　嬉しそうな萌々子の肩に、幸次はそっと手を回して。
「……もうすぐ卒業だけどこれからもよろしく、萌々子」
　抱きしめるとふわっと石鹸のいい香りがしました。
（きっとメイド服の手入れが行き届いているんだろうな）
「私こそ……これからもよろしくお願いします」
　いい雰囲気に浸る二人でしたが。
　ぴりりりり！
　そこに、笛の音が鳴り響きました。
　笛の音と共に登場したのはぴりりです。
「そこの二人！　離れなさい！　不純異性交遊はやめなさい！」
「……めちゃくちゃ怒ってる」
「怒ってますね」
「ど、どうしよう……」
「じゃあ先輩、逃げましょう！」
　びびる幸次に対し、萌々子は即決しました。
「逃げる！？　でも……」
「お城から出なければ城内を案内するという命令には背きませんし、彼女もこれが夢だと思ってるので大丈夫です」

　そう言うと、萌々子は幸次の手を掴んで走り出しました。
　走る、走る。
　ぴりりも後から追いかけてきますが、意外と早い萌々子と、必死についていく幸次に追いつけません。
（まあこんなホワイトデーもいいか）
　不思議な気持ちで、幸次は思うのでした。