【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆｜リアクション

【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆

〇先生を探して

　宮祀智瑜は、土曜日だというのに寝子高へ向かっていました。
（義弘先生。ホワイトデー覚えててくれてるかな？）
　バレンタインに智瑜は、数学準備室で桐島義弘先生に手作りチョコを渡したのでした。
　できれば自分をプレゼントしたかったのだけど、卒業するまではお預け。
（義弘先生、律儀だからお返し用意してくれてるはず）
　お返し目当てのプレゼントではないけれど、義弘先生が智瑜のことを思ってプレゼントを選んでくれるというのは、気持ちに応えてくれるということ。
　こんな嬉しいことがあるでしょうか。
　律儀とはいえ忙しい義弘先生が今日実家の八百屋に寄ってくれる保証もなく、それなら自分で会いに行きたいと思ったのでした。

「土曜日でも野球部の顧問だからいてくれてるといいけど」
　そう思った智瑜でしたが。
「いませんね……」
　野球部の練習場所にいた大人は監督とコーチだけでした。
「職員室にもいなかったし……義弘先生のおうちに行って見ようかな」
　八百屋の配達で何度か行っているので場所は知っています。
　
「やっぱりいない……見回りかな？」
　もしかしたら行き違いで、うちのお店に野菜を買いに来てくれているかも？
　慌てて家へ戻ろうと急ぐ智瑜。
「宮祀」
　間違えようのない声が聞こえました。
「義弘先生！　会いたかったです」
　思いがけず義弘先生に声をかけられた智瑜は、嬉しくて満面の笑みで先生に向かってダイブ！
「危ない」
　慌てつつも智瑜を受け止める義弘。
「今日何の日か覚えてますか？」
「……宮祀青果店の特売日ではなかったはずだな」
「ホワイトデーですよ」
　そう言いながら、左手の薬指にきらり、と輝くおもちゃの指輪を見せます。
「覚えているとも。それは……」
　それは義弘が2月の誕生日にくれたものでした。
「嬉しくて今もつけてます。本物もらうまでつけておこうかな」
　そう言った智瑜は、期待を込めてそわそわと義弘を見つめます。
「ホワイトデーのお返しはなにかな？」
「あ、ああ……」
　そう言われて義弘先生は鞄を開き、中に手を入れます。
「婚約指輪？　……冗談ですよ。義弘先生が私のために選んでくれたものなら何でも嬉しいです」
　先生の腕を抱きしめながら、見つめて智瑜は微笑みます。
「マカロン……指輪ではないが」
　義弘先生が差し出したカラフルなお菓子の箱をしっかりと受け取り、もうすぐ生徒ではなくなる智瑜は心からの思いを伝えます。
「義弘先生、大好きです」
「あ、こら……」
　智瑜は思い切りつま先を上げて背伸びし、義弘先生にキスしようとしました。
　しかし義弘先生の顔には届かず、ネクタイへのキスとなったのでした。
「教師と生徒だからな……」
　小さな声で、義弘先生がつぶやきました。

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