【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆｜リアクション

【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆

☆光のトンネルをくぐって

　倉前七瀬は、ウォルター・Bを光のトンネルへ散策に誘いました。
　ウォルターにホワイトデーのプレゼントをしようと準備していました。
（バレンタインのお返しじゃないと、プレゼントを贈ってはいけない、なんてルールはないですよね？）
　バレンタインに作ったチョコはなんだかしっくりこなくて渡すのを断念しましたが。
　その後、手作りのチョコどら焼きを食べてもらうことができました。
「七瀬、チョコどらやきおいしかったよぉ。また食べたいなぁ」
　ウォルターはそう言ってくれたのです。

「これは見事だねぇ」
　光のトンネルを見上げながら、ウォルターは楽しそうに言いました。
「そうですねえ」
　それを隣で見上げる七瀬は、そう答えつつさまざまな色の光よりもウォルターの顔に見とれてしまうのでした。

　光のトンネルをひとしきり散策して、人のいない場所で七瀬はそっと今日のために手作りしたスモアサンドの箱を取り出しました。
「これ、ホワイトデーのプレゼント……自信作です。どうぞ！」
「ありがとう。また作ってきてくれたんだねぇ。コーヒーを買って一緒に食べようか」
「はい！」

　ベンチに腰掛け、箱の蓋を開けたウォルターは目を細めました。
「わんこかな？　なかなか上手いねぇ」
「チョコペンで描きました。焼いたマシュマロとチョコをビスケットで挟んだお菓子です。チョコレート以外は自作なんです」
「え、マシュマロも作ったのかい？　すごいね。いただきます」
　そう言ってスモアサンドをかじったウォルターは、満足そうな笑顔になりました。
「おいしいねぇ」　
「よかったです。……あの、ウォルターさんはお菓子言葉を気にしますか？」
　七瀬は、気になっていたことを聞いてみました。
「お菓子言葉って、花言葉みたいなものかい？」
「はい。スモアはマシュマロを使ったお菓子ですけど、マシュマロを贈ることは『あなたが嫌い』の意味がある、なんて本に書いてありました」
「へえ、僕は七瀬に嫌われていたのかなぁ」
　ふざけた口調でそんなことを言うウォルターに、七瀬はつい大きな声で言ってしまいました。
「僕がウォルターさんのこと嫌いだなんて、そんなのありえないです！」
「知ってるよ」
　真面目な口調になったウォルターに、七瀬も声を落としていました。
「僕がウォルターさんのことが好きで、贈りたいから贈る。それだけ。……それに、マシュマロのふわふわとした食感が、ウォルターさんとちょっと似とる気がするんですよね」
「そうかい？」
　首を傾げるウォルター。
「僕なりにこのお菓子に意味をもたせるなら『あなたを笑顔にしたい』です。言葉は届きましたか？」

　七瀬の言葉に、ウォルターはにっこりと笑顔を見せました。
「届いてよかったです……」
「それじゃ、僕からもお返しだよぉ」
　ウォルターはリボンをかけた箱を取り出し、七瀬に渡しました。
「これは？」
「ショートブレッド。子供のころの好物で、メアリに作ってもらったよ。自分じゃ再現できる気がしなかったからねぇ」　
「こないだ言ってた、故郷のお菓子ですね。ありがとうございます！」
　箱には簡単なレシピも入っていました。
「思い出の味を再現できるかわかりませんけど、僕も作ってみますね」　
　七瀬は大事に箱を鞄にしまったのでした。