【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆｜リアクション

【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆

☆ホワイト・キャンディ・パレード

　今日は土曜日で、寝子島信用金庫に勤める森篠琳子は仕事が休みでした。
　バレンタインデーはあいにく出勤でしたが、今日は遠慮なく羽を伸ばすことができます。
　そして琳子の傍らには。
「ホワイト・キャンディ・パレードが来たで。ぎょうさん人がおるな」
　同じ職場の恋人、4歳年上の秋沢覚がいるのでした。
「今年もいろいろなイベントが開催されるみたいですね」
　琳子は頷き、ホワイト・キャンディ・パレードを見上げました。
「メイド服のサンマさんかいな、誰得なんや」　
　車上からメイド服姿のサンマさんたちが袋を撒いてくるのに、覚はぼやくのでした。
　琳子はそれを動体視力で捕捉して、素早い身のこなしでサッと取りました。
「えっ？　琳子ちゃん、それいつのまに」
「……中学時代までは部活でバレーボールやってたんです。大きな大会とは無縁だったけど」
「すごいやんか！　負けてられへんな」
　琳子がキャッチするのを見て対抗心を燃やしたのか、覚はこれまた運動神経抜群なところを見せて白い袋をキャッチ。
「どうや！　二個獲ったで！」
「それじゃ、私ももう一つ」
　結局二人合わせて四袋獲得し、二人は顔を見合わせて笑いました。
「妹にいいお土産ができました」
「あ、それじゃ俺のも一つ妹ちゃんにあげてや。そしたら琳子ちゃんも食えるやろ」
　話しながら二人は、パレードの終点である寝子ヶ浜海浜公園までたどりつきました。

「シマエナガのグッズ、可愛いわね。目移りするわ」
「迷ったら両方買って、一つ妹ちゃんにあげたらええ」
「そうね。あの子なら……」
　出店でシマエナガのぬいぐるみやシマエナガ柄の靴下を買った後、二人はライトバルーンのコーナーへ向かいます。

「これを飛ばすんやな。一緒にやろか」
　二人は明りの灯った真っ白なバルーンの前にしゃがみ込み、抱え上げて夜空へ飛ばしました。
「綺麗ね……」
　バルーンはゆっくりと、昏い夜空へ浮かんでゆきます。
　だんだん小さくなっていくバルーンを見送って間もなく。
　ドーン！
「お、花火も始まるで」
　反対側では白い花火が上がり始めました。
「屋台で何か買おて食べながら見よか」
　公園の屋台には、特別メニューのホワイトオムライスとハートパフェが売っていました。
「ハート型が可愛いわね。おいしい」
　ゆっくりオムライスとパフェを楽しんだ後。

「腹ごなしに特設会場いってみよか」　
「あれ、ドレスコードがあるみたい……白い服？」　
　看板の説明を読んで、二人はお互いの服を見合いました。
「白……」
「白やな」
　たまたま二人とも白いシャツと白いスカートを着ていて、ドレスコードは問題ありませんでした。
　しかし入るなり、二人は係員に声をかけられたのでした。
「特設会場へようこそ。白い服のお二人には、ステージで何かパフォーマンスをお願いしています」
「……ええっ？！」
　戸惑う琳子に覚は言います。
「しゃあないな、漫才でもする？」
「そんなのできないわよ……」
　琳子の焦る顔をニヤニヤ見ていた覚は、
「ウソや。歌でええやろ？　デュオでどうや」
「もう……あまり流行りの歌とか知らないんだけど」
「大丈夫や、任しとき」
　結局マイクを手にステージに立った二人は、定番のデュエット曲を歌うことになったのでした。
（これはこれで楽しいかも……）
　最初は緊張していた琳子も、覚とハモりながら楽しい気分になっていったのでした。

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