【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆｜リアクション

【ホワイトデー】ホワイトメイドランド☆

☆すれ違いの行方

　城山水樹と彼氏のヒュー・ヒューバートとは、ある事情で長い間すれ違いが発生していました。
　けれどある夜奇妙な夢を見て、急速に関係は修復へ向かい──先日のひな祭り、水樹はヒューに再告白しました。
「……私、あなたのことが好きよ」
「おかえり、水樹」
　戸惑いつつも、ヒューはそれを改めて受け入れたのでした。
　
　それから程なくして、今日はホワイトデー。
　そしてヒューの誕生日でもあります。
　去年の誕生日は彼の部屋で迎えたのですが、あいにく今日はお互い仕事でした。

　水樹は寝子島ラムネのイメージガールに選ばれ、シーサイドタウンにあるスタジオで撮影していました。
　そしてヒューはフォトグラファーとして、その広告ポスター撮影に参加していたのです。
　水樹は浴衣姿で寝子島ラムネを持って、カメラに向かって微笑みかけます。
（今日も水樹の笑顔はすごくいい）
　水樹が着替えに行った間、ヒューは休憩しながら思います。
　撮影は順調でしたが、だからと言って早く終わるものではなく、撮影が一日仕事になるのは珍しくもなんともありません。
「戻りました！」
　サマードレスに着替えた水樹に見とれそうになりながら、ヒューはプロとしてカメラを構えるのでした。
　撮影はまだまだ続きます。

　結局この日の撮影は夕方までかかりました。
「おつかれさま」
　水樹とヒューがスタジオの外へ出ると、町はホワイトデーで賑わっていました。
　シーサイドタウン駅前に来ると、そこにまばゆい光のトンネルがありました。
「……綺麗」
　あまりの美しさに水樹は息を呑みました。
　ヒューと肩を寄せ合いながら、ゆっくりと光のトンネルを歩きます。
（指を絡めて一緒に歩くのは何年ぶりか、いやそんなに経ったはずはないな）
　ヒューがそう思ったとき、水樹の口から言葉が零れました。
「こんなふうに一緒に歩くの、何カ月ぶりかな……」
　すれ違った数カ月間のことを想うと胸が痛くなり、水樹の目から涙があふれ出るのでした。
（それぐらい僕たちは離れ離れになっていたわけか）
　水樹が涙ぐんでいるのを一瞬見たヒュー、は何ともいたたまれない気持ちになったのでした。
「あ、ごめんなさい」
　慌ててすぐに何でもないように微笑む水樹。
　それは先ほどまでの撮影の時のように、非の打ちどころのない美しい笑顔で。
　だからこそヒューは胸を突かれる思いでした。
（彼女がどれほど苦しんでいたか……それを思いやれなかった自分が情けない）

　このまま離れたくなくて、二人は光のトンネルをゆっくりと歩きます。
「あれ……サンマさんのパレード？　でも恰好が……」
　途中でホワイト・キャンディ・パレードに遭遇して。
「ほらよ、お二人さん！」
　メイド姿のサンマさんが何か投げてきました。
「えっ？」
　ヒューが思わず受け止めてみると、それはカラフルな袋でした。
　開けてみると。
「マシュマロとキャンディだね」
　水樹が覗き込みました。
「一緒に食べようか」
「いいね、何も食べてなかったし」
　ベンチに腰掛け、二人はマシュマロとキャンディを分け合って食べました。
「甘くておいしい」
「ああ」
「でも、急におなかが空いてきちゃった」
「僕もだよ──どこか落ち着ける場所でゆっくりとしようか」

　そして二人は、旧市街の居酒屋へと消えていったのでした。