こんにちは、赤ちゃん？｜リアクション

こんにちは、赤ちゃん？

【洒落にならない騒動】

　いつも通り神社で朝を迎えた夏神零は、着替えを始めた途端身体の異変に気がついた。
（！？……またでござるか！？）
　先日幽霊の憑依で女体化してしまった時と同じように、大きな胸がそこにあった。
　慌てて宮司服から巫女服に着替え直すも、先日以上に胸が大きくなっているような。
　しかも時間が立つにつれ、体調が良くないことに気づく。
　吐き気、気だるさ等疲れが出ているのだ。
「肩こりは胸の大きさから来るのかもしれんでござるが……」
　余程悪い霊にでも憑かれているのだろうか？　だがそんな気配は感じない。
　零は胸の大きさに気を取られて、お腹が普段より大きくなっていることには気づかない。
「少し休んで……いや、待て」
　その時零は大事なことに気づいた。
「今日は道場の交流試合で、試合が控えているでござる……」
　武道全般を得意とする零にとって、普段なら交流試合は望むところだが。
　この体調で戦うのか？　思わず青ざめる。
「だが、皆忙しい中、試合の日を空けて来てくれておるのじゃ。しっかり試合をせねば申し訳ない」
　大きくなった胸に晒を巻き付けごまかそうとする。
「くっ……武道を志す者として、具合が悪いくらいで試合を取りやめるわけにはいかぬ。心頭滅却すれば、このくらい……」

　交流試合会場。
「夏神さん？　体調が悪そうだが……？」
「な、なんでもないでござる。お願いします」
　気遣ってくれる人もいたが、試合相手の目つきは普段と違っていた。
（ど、どこをみてるのじゃ……どこを！)
　巫女服から覗く晒でも隠し切れない豊かな胸。
　体調不良で青ざめた肌の色が、羞恥の色に染まる。
　鼻の下が伸びた相手の表情からは下心が丸見えだ。
「隙あり！」
　晒ごと揺れる胸と共に、隙を突いた零の一閃が決まった。
　しかし、何戦かするうちに嫌な汗がひどくなる。
（普段の体調不良なら、こんなことはないのでござるが……）
　気分が悪くて、集中できない。
　結局不本意な試合が続き。
　意識朦朧の中、晒を直す余裕もなく零は病院へ向かった。

「気分が優れぬゆえ、薬……をください……」
「大丈夫ですか？　まず診察を……」　
　土曜の診察が終わる寸前に受け付けてくれた病院で、零は衝撃の言葉を聞く。
「これは……おめでたのようですね？」
「いや、待て待て……！　拙者は男であって……」
「しかし」
　先生の視線を追えば、晒がほどけはっきり見て取れる大きな胸。
　そして先程よりもせり出したように見える腹。
　二の句が告げない零であった。

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