こんにちは、赤ちゃん？｜リアクション

こんにちは、赤ちゃん？

【天使は帰りぬ】

「む……？」
　零はせり出た腹と胸が急速に萎んでいくのを感じた。
「おかしいですね。さっきまで陽性の結果が出ていたのですが」
　医者が首をひねる。
「く、薬は結構でござる。お騒がせいたした」
　逃げるように病院を後にする。
（もう女体化は懲り懲りでござる……）

　猫鳴館でも。
「ひぐっ……引っ込んだ？」
　空音が引っ込んだお腹をさすりながら、辺りを見回す。
「小熊、生まれて……ない、よね？」
「おい、なんで小熊なんだ……。どうやらこの症状は一時的な物だったみたいだな……よかったよかった」
　士の吐き気も治まっていた。
「ん、もし本当に妊娠してたらどうしてたかって？　だからさっきも言ったように１、２ヶ月でそんなには……」
「結婚するハメにならなくてお友達……お兄ちゃん……でいいんだね！
　良かった……本当によかった！」
（仮に万が一そんな事があったら……）
　と言おうとした言葉を士は飲み込む。
「おい、出したもの片づけてけよ……こら、勝手に開けるな！」
「本気で心配したんだから……安心したらお腹すいちゃった。何かないー？」
　空音に笑顔が戻っていた。
「仕方ない奴だな……」
　今度こそ安心していいのだろうか、と士は思う。

　星ヶ丘寮では。
「無事でよかった。みんな、ありがとう」
　修がケージに戻ったアレクサンダーに餌をやっていた。
　仔猫たちが遊びたがって修について回る中、やはり頼りになったのはカーキーの鼻だった。
　場所がわかった後は仔猫たちを遠ざけ、餌を置いて、出てきたところにバスケットをかぶせて無事捕獲したのだ。

「今の騒ぎで体調の悪さも吹っ飛んだようだな。さて……」　　
　自分の食事を使用人に頼み、目の疲れも取れたのでねこったーを開いてみる。
「妊娠事件？　そんなことがあったのか。神魂の影響かな」
　自分がまさに影響を受けていたなどとは夢にも思わず、修はつぶやく。
「やれやれ。出産事件でなくて良かった。これ以上増えても大変だしな」
　誰よりも母（？）親らしく家族たちを育てている修なのだが。

「落ち着きましたね……」
　体を離した椿姫の言葉に、オリガもすっかり元に戻ったお腹を見ながら頷いた。
「治まったみたいだねえ」
　気分が悪いのが治って良かったけど、ちょっとだけ物足りないかも。
　その時、一旦離れた椿姫がもう一度肌を寄せてきた。
「あの……いきなり変なご縁で知り合ったけど、よかったらこれから改めて、一から交流しませんか？」
「クフフ♪　Ура！　望むところだよ。せっかくだしデートしよう」
　お腹の脹らみは消えてしまったけど、確かに二人の間には、連帯感ともいえる不思議な絆が生まれていたようだ。

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あとがき

担当マスター：天村花海
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ご参加ありがとうございました。
お腹だけ妊婦並みな天村です（汗）

あくまで健全な疑似妊娠シナリオ……のはずでしたが。
妊娠をめぐるドラマはまさに十人十色なのだなと感心させられました。
バラエティに富むシーンを書かせていただけて良かったです。

今年は一年間シナリオへのご参加ありがとうございました。
らっかみ！　ではまだ夏ですが、それでは皆様、良いお年を。

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