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- 種族
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- 学年：職業
- 00月00日生 00歳
- AAA000000
真紅の月
芋煮 紅美、正確にはその身を乗っ取った第二人格通称紅子は目を細めた。
「緑の、かみ」
雨梨栖 芹香（あまりす せりか）の頭を指で指す。
「そのかみの色？ ひょっとしておねえさん、風の精？」
ライムグリーンともいうべき蛍光色を帯びた緑だ。もちろん天然ではなく染色である。ちょっとサボるとすぐ毛根から黒くなってくるので、あまり経済効率のいいヘアカラーではない。
ハァ？ と言うかわりに芹香が口走ったのはこの言葉だ。
「だったらどした！」
閃光が走った。反射的に芹香は身を引いたがそれでも、肘から手の甲まで切り裂かれている。
ぼとぼとと血がしたたった。芹香は奥歯を噛みしめる。
「こいつ、マジヤベえ……」
「風の精はきらいだよ。紅美のじゃまする悪いヤツ。こらしめる」
紅子の手にはいつの間にか、鋭いアイスピックが握られていた。
「かけらもわかんねーよ、テメェの言ってることなァ！」
芹香は構えを取る。榛耶（はりや）道場の古武術は、徹底した実践重視スタイルだ。片腕にダメージを負ったときの戦い方もある。
紅子は右手に、血で染まったアイスピックを握り直した。
このとき店の外から、車両のエンジンと思わしき巨大な音が立った。一瞬紅子の注意がそれる。
芹香は叫び声をあげて蹴った。紅美を狙ったのではない。近場にあった工具箱だ。なかにはボルトやナットが詰まっている。銀色の礫（つぶて）となって飛び散った。
反射的に顔をかばった紅美の間合いに、
「シロートが！」
飛びこんで芹香は膝を突き出した。
大抵の相手ならこれで悶絶し床に転がっただろう。気を失っていてもおかしくない。だが、
「ぐアッ！」
獣のような声を上げてコンクリートに這いつくばったのは芹香だった。膝をアイスピックで突き刺されたのである。二回も。
二度目の突き刺しに至っては大動脈を抉（えぐ）っていた。
それでも芹香はダウンせず、勢いよく壁際まで転がって勢いをつけて立った。すさまじい形相で睨（ね）めつける。
「バケモンだなテメッ！」
「おねえさんも、バケモノ。やっぱり風の精だ」
紅子のアイスピック、その尖端が芹香の肘にむいている。
「キズ、もうふさがりかけてるね？」
「あいにく不死身なモンでねぇ」
ニヤリと笑ったがこれが限界、芹香は横倒れになった。
どさっという音は立たない。
芹香の身を支える腕があった。
「サプラーイズ♪ もっとも驚いているのはもっぱら私のほうだけど。どもっ、Greedy CatsのMC兼人気者担当です。お待たせしました」
志桜里だ。紅子に不敵な笑みを見せた。
待ってねえよと憎まれ口をたたく気力もないらしい。芹香は目を閉じている。顔色も紙のようだ。芹香の『ろっこん』は急速な治癒能力だが、さすがに負ったダメージが大きすぎたと見える。
「おねえさん、だれ？ 風の精のなかま？」
「カゼノセイ？ ああwind spiritということで？ この人が風の精とはとんだ誤解ですねえ、でも私のせいではないですよねえ。せっかくなんでそのたとえに乗ってみるならば、さしずめ私はマイクロフォンの精、放つリリック言葉の威勢」
「黒いかみのおねえさん」紅子はニヤっと唇をゆがめた。「わざとたくさんしゃべって、風の精のための時間をかせごうとしてるよね？」
読まれてたか、といったリアクションを志桜里はとらなかった。アイスピックを握った少女は当然この反応を期待しているだろうから逆に、
――フロウを崩す！
志桜里は行動に出た。
会話とてフリースタイルラップというのが志桜里の見立てだ。単に言葉を交わしているだけで、リズムがきざまれフロウ（流れ）が生まれる。たとえ悪口の応酬であろうと、そこには心地よい基調が生まれるものだ。意表を突くのなら、心地よさの逆をやればいい。
予備動作ゼロで飛び膝蹴りを見舞い、
「！？」
寸前でかわした少女の首筋、頸椎の位置に志桜里は拳を叩きんだのだ。
ラビットパンチ。ボクシングでは反則にあたる行為だが、志桜里がやっているのはボクシングではない。
モンスター級の反射神経をもつ少女だったが拳は避けられなかった。さすがに効いたらしくよろめく。足がもつれて尻餅をつく。
志桜里は肝を冷やしていた。
えげつない攻撃二本立て、さすがに三の矢はなかったんで危ないところだった。
芹香が膝を刺される瞬間を見ていなければ、跳び膝だけに集中し返り討ちに遭っていたかもしれない。
とにかくダメージを与え時間が生まれた。百分の一秒だって無駄にできない。
「倒されないろっこん持ちのくせに随分苦戦するじゃない。ちょっとツラ貸しなさい……よッ！」
志桜里は芹香を抱き上げるようにしてガレージの外へ放り投げた。
外から強烈な光がさした。ヘッドライトの光だ。
「緑の、かみ」
雨梨栖 芹香（あまりす せりか）の頭を指で指す。
「そのかみの色？ ひょっとしておねえさん、風の精？」
ライムグリーンともいうべき蛍光色を帯びた緑だ。もちろん天然ではなく染色である。ちょっとサボるとすぐ毛根から黒くなってくるので、あまり経済効率のいいヘアカラーではない。
ハァ？ と言うかわりに芹香が口走ったのはこの言葉だ。
「だったらどした！」
閃光が走った。反射的に芹香は身を引いたがそれでも、肘から手の甲まで切り裂かれている。
ぼとぼとと血がしたたった。芹香は奥歯を噛みしめる。
「こいつ、マジヤベえ……」
「風の精はきらいだよ。紅美のじゃまする悪いヤツ。こらしめる」
紅子の手にはいつの間にか、鋭いアイスピックが握られていた。
「かけらもわかんねーよ、テメェの言ってることなァ！」
芹香は構えを取る。榛耶（はりや）道場の古武術は、徹底した実践重視スタイルだ。片腕にダメージを負ったときの戦い方もある。
紅子は右手に、血で染まったアイスピックを握り直した。
このとき店の外から、車両のエンジンと思わしき巨大な音が立った。一瞬紅子の注意がそれる。
芹香は叫び声をあげて蹴った。紅美を狙ったのではない。近場にあった工具箱だ。なかにはボルトやナットが詰まっている。銀色の礫（つぶて）となって飛び散った。
反射的に顔をかばった紅美の間合いに、
「シロートが！」
飛びこんで芹香は膝を突き出した。
大抵の相手ならこれで悶絶し床に転がっただろう。気を失っていてもおかしくない。だが、
「ぐアッ！」
獣のような声を上げてコンクリートに這いつくばったのは芹香だった。膝をアイスピックで突き刺されたのである。二回も。
二度目の突き刺しに至っては大動脈を抉（えぐ）っていた。
それでも芹香はダウンせず、勢いよく壁際まで転がって勢いをつけて立った。すさまじい形相で睨（ね）めつける。
「バケモンだなテメッ！」
「おねえさんも、バケモノ。やっぱり風の精だ」
紅子のアイスピック、その尖端が芹香の肘にむいている。
「キズ、もうふさがりかけてるね？」
「あいにく不死身なモンでねぇ」
ニヤリと笑ったがこれが限界、芹香は横倒れになった。
どさっという音は立たない。
芹香の身を支える腕があった。
「サプラーイズ♪ もっとも驚いているのはもっぱら私のほうだけど。どもっ、Greedy CatsのMC兼人気者担当です。お待たせしました」
志桜里だ。紅子に不敵な笑みを見せた。
待ってねえよと憎まれ口をたたく気力もないらしい。芹香は目を閉じている。顔色も紙のようだ。芹香の『ろっこん』は急速な治癒能力だが、さすがに負ったダメージが大きすぎたと見える。
「おねえさん、だれ？ 風の精のなかま？」
「カゼノセイ？ ああwind spiritということで？ この人が風の精とはとんだ誤解ですねえ、でも私のせいではないですよねえ。せっかくなんでそのたとえに乗ってみるならば、さしずめ私はマイクロフォンの精、放つリリック言葉の威勢」
「黒いかみのおねえさん」紅子はニヤっと唇をゆがめた。「わざとたくさんしゃべって、風の精のための時間をかせごうとしてるよね？」
読まれてたか、といったリアクションを志桜里はとらなかった。アイスピックを握った少女は当然この反応を期待しているだろうから逆に、
――フロウを崩す！
志桜里は行動に出た。
会話とてフリースタイルラップというのが志桜里の見立てだ。単に言葉を交わしているだけで、リズムがきざまれフロウ（流れ）が生まれる。たとえ悪口の応酬であろうと、そこには心地よい基調が生まれるものだ。意表を突くのなら、心地よさの逆をやればいい。
予備動作ゼロで飛び膝蹴りを見舞い、
「！？」
寸前でかわした少女の首筋、頸椎の位置に志桜里は拳を叩きんだのだ。
ラビットパンチ。ボクシングでは反則にあたる行為だが、志桜里がやっているのはボクシングではない。
モンスター級の反射神経をもつ少女だったが拳は避けられなかった。さすがに効いたらしくよろめく。足がもつれて尻餅をつく。
志桜里は肝を冷やしていた。
えげつない攻撃二本立て、さすがに三の矢はなかったんで危ないところだった。
芹香が膝を刺される瞬間を見ていなければ、跳び膝だけに集中し返り討ちに遭っていたかもしれない。
とにかくダメージを与え時間が生まれた。百分の一秒だって無駄にできない。
「倒されないろっこん持ちのくせに随分苦戦するじゃない。ちょっとツラ貸しなさい……よッ！」
志桜里は芹香を抱き上げるようにしてガレージの外へ放り投げた。
外から強烈な光がさした。ヘッドライトの光だ。
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年06月13日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年06月20日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2024年06月20日 11時00分
