Tonight, Tonight｜リアクション

Tonight, Tonight

「八神くん？」
　聞こえた？　という表情で維都月茉菜は八神修を見ました。
「ああ」
　修はうなずいて、来た道を引き返します。茉菜も黙ってつづきます。
「やっぱり……」
　そこはネコビの駐車場、二人はたしかに聞いたのです。
　仔猫たちが、ミュウミュウと鳴く声を。それは助けを求める声、あるいは母親を呼ぶ声のようでした。
「まわりに親猫も飼い主さんもいない……ね」
「捨て猫だな……状況からして……」
　修はしゃがんで猫たちに手をさしのべました。
　するとか弱い三匹の生き物は、なにかくれるのかとでも思ったのでしょう。修の手にまとわりつくのです。栄養が足りていないのは一目瞭然です。三匹とも、毛がゴワゴワしているから。ちょっとさわってみて、ひどく痩せているのもわかりました。
「な、懐いてくれている……！」
　茉菜が驚いたように言います。彼女の手にも、猫たちは体をすり寄せてくるのでした。
「可愛い。でも……」
　かわいそうだね、と茉菜は言いました。そのときにはもう、修は立ってコンビニに向かっていました。
「八神くん、どこへ……？」
「見捨ててはいけない」
　間もなくして彼は、猫用のミルクやキャットフードを手に戻ってきたのでした。
　三匹はまだ、固形物を食べられる年齢ではないようでした。猫用のほ乳瓶（そういうものもあるのですよ）を使って順番にミルクを与えたところ、ようやく動き回れる程度には元気になったようです。
　でも、やはり回復したとはいいがたいようです。
　白黒茶色の三毛猫は後ろ足が存分に立たず、まともに歩けません。ひたすらにニャアニャア、哀しげな声で鳴いています。
　虎猫は歩けますが、三匹の中ではいちばんのガリガリでした。でも好奇心が強いのか、修の手や膝に鼻をすり寄せて匂いを嗅いでいます。
　青みがかったグレーの猫はすっかり安心したのか、茉菜の手に頭を乗せ眠りはじめていました。
「これは……離れてくれない……よな」
「どうしよう」
「鷹取先輩もまだ近くにいるはずだ。電話して呼んでみよう。きっと来てくれると思う。それで……」
「それで？」
　修はなかば緊張気味に、それでも、はっきりと言いました。
「俺たち三人で一匹ずつ預かることにしたい。飼い主を探してもいいし、自分で飼ってもいいと思う」
「だ、大丈夫かな……？」
　そのとき修が見せた笑顔は、茉菜には忘れられないものになりました。
　頼もしくて、優しくて、そして……命を守るという崇高な使命を受け入れた笑顔です。
　彼は言ったのです。
「大丈夫さ。俺たちなら」
　修と秘密を共有したような、そんな気持ちに茉菜はなりました。

『Tonight, Tonight』　了

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あとがき

担当マスター：桂木京介
ファンレターはマスターページから！

　ご参加ありがとうございました。桂木京介です。

　コンビニへのちょっとしたお出かけを描いた短い物語でしたが、みなさんそれぞれの個性が出ていて、なかなか多様な展開になったように思います。
　一番星くじ、人気ですね～。今回は展開上、同時に二種類発売みたいな展開にしましたが、実際のこういうくじでこんな展開あるのでしょうか……多少現実と異なっていても、ご容赦くださいませ。

　それではまた、新たなシナリオでお目にかかるとしましょう！
　コメント欄への感想も楽しみにしております。
　桂木京介でした。

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