ハッピーバースデー！　３月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　３月☆

３月　１０日：花遊（万条幸次の飼い猫）

　その日、万条幸次は楽しそうにペットショップから出てきた。
　今日は飼い猫である花遊の誕生日。実際には少し過ぎているし、正確ではないのだか本猫はあまり気にしていないし……と幸次は笑顔でアパートへ帰宅する。
「花遊、猫用のバースデーケーキだよ！」
　と部屋へ入ったものの……そこに花遊はいない。
（え？　どこいった？！）
　ひとまずケーキを冷蔵庫にいれ、部屋の外へ出ると、梅の花がちょうど満開で……。その近くに花遊が座っていた。
「あぁ、なんだ……。そんなところに」
　いたんだ、と言いかけた幸次だったが、花遊の傍には白、黒、茶色三色の毛玉。否、かわいらしい仔猫がいるではないか！
「……まさか……花遊の子？」
『ちげーし！　なんか一匹でいたからオレもほっとけなくてさぁ……』
　とっさにろっこんを使ってしまった幸次の言葉に、花遊が状況を説明した。なんでも、外を見ていたら仔猫の声がし、でてみたらここでにいた、と。親が来る様子もなく、花遊はカラス等に狙われぬよう傍にいたらしい。
『まだ目も開いてないんだ。幸次、なんとかならないか？』
「うーん、俺も大学生になるし、つきっきりでの子猫の世話するのは無理だよ。それに仔猫用の道具もないし……」
　幸次にできる事は、保護猫活動をしている知人を頼る事だった。勿論世話になりっぱなしというのも悪い。引き取りについても考える所存だ。
「とりあえず、連絡しないと……」
　幸次はすぐに知人へと電話をかけた。
　知人に会うまでに、幸次は一回り周辺を見た。しかし親猫らしき猫は見かけなかった。仔猫にろっこんを使って呼びかけても『ママ、どこ？』とか『お腹すいた』ぐらいしか分からない。
　その日、幸次は仔猫をつれて保護猫活動をしている知人の元へ赴き、知人を含めスタッフ達は彼と花遊に感謝し仔猫を預かってくれた。三毛の仔猫はみぃみぃと愛らしく元気に鳴いており、スタッフ達から「かわいい」と言われていた。

　そして、その日の夜。
「花遊、お誕生日おめでとう」
『んあ？』
　ようやく猫用の誕生日ケーキで花遊の誕生祝。幸次が笑顔でお祝いの言葉をかけると、花遊は不思議そうな顔に。幸次はそっと花遊の頭を撫でる。
「貫禄が出てきたなぁ～。さすが４歳！　小さい子を守ってえらかったね」
『当たり前だろ？』
　気持ちよさそうに瞳を閉じ、撫でられるがままだった花遊はふるふるっ、と頭を震わせると幸次にすりすり。
『だって、オレは幸次の兄貴なんだからな！』
「ふふっ、はいはいそうだね」
　花遊のどこか自慢げな表情に、幸次は優しい笑みを返したのだった。
　ちなみに、猫用の誕生日ケーキは花遊的に満足の行く物であったらしく「まっ、たまにはいいかもな……」と完食したようだ。

　後日、その三毛猫ちゃんは幸次の母親によって引き取られ「梅」と名付けられることになろうとは、まだ一人と一匹が知らない話である。