ハッピーバースデー！　３月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　３月☆

３月　１５日：桧垣万里

（今日は誕生日ってことでお休みをもらったけど……、特にすることないのよね）
　と万里は頬を掻く。
　暫くの間なにをしようかと考え、最初に思いついたのは部屋の片づけだった。だが、己の部屋の中、乱雑に物が置かれている光景を目にした途端遠い目になる。
「たまには部屋の片付けでも……いや、今日はやめておこうかな」
　気を取り直し、彼女はクッキーを焼くことに。
　慣れた手つきでクッキーを作ると、あっという間にこんがり焼けたクッキーが……。
「うん、いい出来」
　万里は早速、その中からハート型の物を１つを手に取り口にした。
　そして、意識がくるり、と変わる。彼女は気付いていないが、それがろっこん『勿忘草の花言葉』の発動条件なのである。
「ふぅ……。万里がクッキーを作ってくれてよかったっ。おかげで僕も万里のことお祝いできる！　……とはいえ、何をしようかな？　何をしたら万里は喜ぶだろう？」
　最初は部屋の片づけをしようかと考えた千里であったが、「……いや、でも、起きた時に部屋の中が変わってたら怖いか」と思い直す。
（それに、それにこういうのは万里本人がやらないとね！）
　千里は「僕は妹のためを思って片付けをしない選択をするよ」と頷いた。
「でも、誕生日祝いに何をしようかな……」
　ふりだしに戻ったわけだが、千里の目に映ったのはハート型のクッキー。彼は万里がろっこんを発動させないようにするべく、そのクッキーをもしゃもしゃと食べ始めた。
（あれ？　案外量が多い……？）
　ハート型のクッキーを食べ終えた時、かなり数が減っていることに気付いた。
（減り過ぎた？）
　内心「しまった！」と焦った千里だが、ここで閃く。彼は近くに置いてあった道具やら材料などを確認してぐっ、と手を握り締めた。
「よし、僕が代わりのクッキーを焼くぞ！　初めてだけど身体は万里だし、なんとかなるはずだ！」
　こうして、千里のクッキー作りが始まった。
「たしか粉を振るって……。はかりできちんと計って……」
　千里は意気込んでクッキー製作を始めたものの、分量がなかなか合わなかったり、うまく混ぜられなかったりと悪戦苦闘。しかし、それでもあきらめずクッキーを作ることが出来た。
　初めて作ったクッキーはちょっといびつで、少し焦げたりもしていて。でも、おいしそうな香りがする。
「よし、あとはメッセージを添えてっと」
　千里はメモに何か書くと、静かにソファへと腰かける。彼は眠りにつき、万里へ交代するためだ。
（万里、喜んでくれるかな？）

　しばらくして、我に返った万里がまばたきの後あくびを一つ。ゆっくりソファから立ち上がれば、お皿にちょっといびつなクッキーが積まれていた。
「あれ？　いつのまに……？」
　その近くには『まさとへ　おたんじょうび　おめでとう』と書かれたメモ。不思議に思いながらクッキーを口にすれば、優しい甘味が舌に広がる。
（美味しい……）
　口元の綻ぶのを感じながら、彼女はそっと口にする。
「ありがとう」
　心のどこかで、誰かが喜んでいるような……そんな気がした。
　その日はちょっと不思議で、忘れられない誕生日になりそうだ。万里はそう思い、くすぐったそうに微笑むのだった。

（終）

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あとがき

担当マスター：菊華伴
ファンレターはマスターページから！

菊華です。
まずは３月にお誕生日を迎えたみなさん、おめでとうございます！
リアクション、遅れてしまい申し訳ありません。

みんなそれぞれたのしい誕生日になったように思います。
少しでも素敵な１日を彩る手伝いが出来たのならば嬉しい事です。

それではこの辺りで。
また縁がありましたら宜しくお願いします。

（運営部より）
キャラクターの年齢加算は後日行われます。しばらくお待ちくださいませ。

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