ハッピーバースデー！　３月☆｜リアクション

ハッピーバースデー！　３月☆

３月　１４日：剣崎エレナ

（３月！　もうすぐ僕の誕生日！）
　響タルトはるんるんとした様子でカレンダーをみながら、「誰かをお祝いしたいなぁ」と考える。最初に思いついたのは、１歳年下の弟。だが、タルトはすぐに首を振った。
（僕がプレゼントなんか用意したら何を企んでるのかと顔色変えられちゃうね。それに、姉弟でなんていつでも会えるんだし、他の人と祝ったほうが楽しいかも）
　誰をお祝いしようか、と考えているうちに脳裏に浮かんだのは先輩である剣崎エレナ。タルトは楽し気に笑う。
「よーし、エレナ先輩をお祝いしちゃおう！！」
　ついでに大学生活に関して聞けるかもしれないし、と早速準備に取り掛かる。
（そういえば、前に友達と一緒にエレナ先輩に匿名のプレゼントを渡したっけ？　あの時は楽しかったなあ～）
　過去にあった事を思い出しながら向かったのは、ケーキ屋だった。色とりどりのフルーツが乗ったケーキはどれも美味しそうだ。
「！　これくださーい♪」
　タルトは一人で食べるにはちょっと大きめなケーキを１つ買うと、エレナが暮らしている星ヶ丘のワンルームマンションへと向う。

　その途中、タルトは重たそうな鞄を持った青年とぶつかりそうになった。
「！　ごめんなさいっ」
「こっちこそ、すまない。考え事をしていた」
　ヒュー・ヒューバートは苦笑し、タルトが持っていた物に気付いた。
「それ……ケーキかい？」
「そうだよ。あ、大丈夫！　落としてないから安心して♪」
　タルトはにこり笑ってはこの窓からケーキを見せる。ヒューはほっ、とすると同時に「そういえば……」と振り返る。その表情でタルトは何かに気付いた。
「もしかして、お兄さんも誕生日だったりする？」
「実はね」
　ちょっとおどけた様子で頷けば、タルトは楽しくなっていた。
「お誕生日おめでとうございます！　よい一日を！」
　そう言って、タルトはシーサイドタウン駅の中へ。その背中を見送り、ヒューは小さく微笑んで手を振った。
（よい一日を、か）
　今日は仕事で恋人と会う。家を出る時よりもそれが楽しみになった気がしたヒューであった。

　そしてしばらくして……。
「いらっしゃい、響さん」
「エレナ先輩、お誕生日おめでとうございまーす！　一緒にケーキ食べませんか？」
　タルトが笑顔でケーキを見せればエレナは驚いたような顔になった。「いいんですの？」と驚くエレナに頷き、二人でケーキを美味しくいただく。
　その中で「どんな本が好きなんですか？」や、「どんなサークルに入っているのですか？」など聞いてみたり、エレナが最近ことをタルトに聞いたり、とほのぼのとした時間を過ごす。
　普段はスイーツを控えているらしいエレナではあるが、こうして持ってきてくれた手前、無下に出来ない。それに、タルトの笑顔も相まって、断りにくいというのもあった。
「このケーキ美味しいですわね」「だねー♪」
　二人で仲良く食べたところで、タルトはぽつりと漏らす。
「実は３月生まれの友達がいるんですけど、予定が合わなくて……。でも僕はエレナ先輩のお祝いもしたくて。お祝いはできるうちにしておきたいから」
　その言葉に、エレナは小さな笑みで頷いた。

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