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卒業 ～らっかみの願いを叶えて～
夏の寝子島～寝子高七不思議、さいごのひとつを知りたい！・その２
夜八時。ののこ、葵、紫、智瑜の四人は、ふたたび学校に集合していた。
ここにはさらに、懐中電灯と校舎のカギを持った桐島先生が加わっている。
「大好きな義弘先生なら協力してくれると信じていました」
智瑜はこそっと桐島先生に耳うちする。桐島先生は、苦虫を噛み潰したような顔で赤くなるという見事な芸当をやってのけ、「私が協力したことは絶対に内緒だぞ」と言いながらカギを開けてくれた。
「先生も一緒に来てくれますか？」
「もちろんだ。何かあったら困る。君たちだけ行かせるわけには行かないだろう」
「嬉しいです。義弘先生が一緒に来てくれたら心強いです」
「話はまとまったかなー？ 行くよー」
ゴシップ記事にしてもいいけど、まーここは見なかったことにしましょーと、葵はさっさと歩き出す。
五人はまず、これまで知られている六つの場所へ行ってみることにした。
「音楽室、音楽室と準備室の間、生物室、北校舎の東側の２階と３階の間の踊り場、下駄箱、体育倉庫……」
「こうしてみると北校舎が多いわね」
そんな風に紫は分析する。南校舎は普通教室が多いから、七不思議の舞台になりにくいのだろう。
「ひぃ、暗い学校って、怖いよー」
「ののこくん。そんなにしがみつかれたら、歩きにくいんだよー」
順に巡っていくが、今日は怪異のご気分が乗らないのか、とくに可笑しなことは起こらない。
六つ目の体育倉庫を見終えるころには、一同は途方に暮れていた。
「こうまで何も起こらないのも、却って不気味な気がするわね……」
紫はぶるる、とわが身を抱く。
「ののこちゃん」智瑜はののこに懐中電灯を向けた。「ののこちゃんは、最後はどこだと思いますか？ 私は北校舎のどこかかプールあたりが……」
その刹那である。
雷の落ちるような轟音が、あたりに響き渡ったのは。
「きゃーっ！」
「なになにっ！？」
智瑜は桐島先生に、ののこは葵に、しがみつく。
「雷……じゃないわね、空は晴れてるわ」
「講堂の方から聞こえなかった？ 行ってみようよ！」
ののこが走り出す。そうだ、正体を確かめなければ、安心して帰れない。一同はののこを追って、音がした講堂のほうへと走り出した。
講堂の真下へ来た時、葵ははっとして空を指差した。
「親方！ 空から女の子がー！！！」
「どうしたの、こんなときに冗談言って……」と空を見上げた紫が口元を押さえる。「本当だわ」
上空からひとりの女の子が、講堂目掛けて落ちてきている。
よく見ようと目を凝らしていたののこは、その女の子の正体に気づいて大声を上げた。
「あれって……私！？」
女の子が講堂にぶつかった瞬間、ふたたび雷が落ちたような轟音が鳴り響く。
しばし、耳を抑えて、様子を伺う。
と、女の子はまた、空の遙か上空から、ひゅーんと講堂目掛けて落ちてきているではないか。まるで、壊れたレコードみたいに、何度も、何度も。
葵は瞬きも忘れて呟いた。
「そういえば。噂の中に、女生徒が何回も飛び降りる幻の話があったんだよー」
「あったわね……でも、これは……」
「まさかの、七つ目の七不思議は、ののこくんだったんだよー？」
ののこは何度も落ちる自分を凝視している。
「私……そうだ、私……空から落ちて……高校生になりたくて……」
「ののこくん？」
「……私、かみ、さま……？」
ののこはそう言った途端、くらりと倒れた。
「ののこちゃん！」
みんながののこを取り囲む。
桐島先生がののこを抱え、脈を見、呼吸を確認した。
「ぐーぐー……うーん、むにゃむにゃ……」
「寝てる、のか？」
「……寝てますね」
「……そういえば昨夜徹夜したって」
「……人騒がせなんだよー」
良かった、と皆は胸をなでおろす。
「つまりだけどー、七つ目の七不思議は……」
人差し指を立てて結論を言いかけた葵は、そこで言葉を止めた。ののこが寝子島に落ちてきたところが再現される怪異。神魂のせい……そう考えれば説明はつくけれど、なんだか風情がないと思い直す。
葵は、眠るののこの髪に触れた。
（……ののこくん、三年間楽しかったかなー？ 青春出来たかなー？ 七不思議として残ってもいいかなー？）
いいよ、と言わんばかりの幸せそうな寝顔を見て、葵は寝子高七不思議、最後のひとつの発信源となることを決意した。
「七つ目の七不思議は『親方！ 空から女の子が！』。ふっふふー、記事にするときちょっと盛れば、面白くなると思うんだよー」
夜八時。ののこ、葵、紫、智瑜の四人は、ふたたび学校に集合していた。
ここにはさらに、懐中電灯と校舎のカギを持った桐島先生が加わっている。
智瑜はこそっと桐島先生に耳うちする。桐島先生は、苦虫を噛み潰したような顔で赤くなるという見事な芸当をやってのけ、「私が協力したことは絶対に内緒だぞ」と言いながらカギを開けてくれた。
「先生も一緒に来てくれますか？」
「もちろんだ。何かあったら困る。君たちだけ行かせるわけには行かないだろう」
「嬉しいです。義弘先生が一緒に来てくれたら心強いです」
「話はまとまったかなー？ 行くよー」
ゴシップ記事にしてもいいけど、まーここは見なかったことにしましょーと、葵はさっさと歩き出す。
五人はまず、これまで知られている六つの場所へ行ってみることにした。
「音楽室、音楽室と準備室の間、生物室、北校舎の東側の２階と３階の間の踊り場、下駄箱、体育倉庫……」
「こうしてみると北校舎が多いわね」
そんな風に紫は分析する。南校舎は普通教室が多いから、七不思議の舞台になりにくいのだろう。
「ひぃ、暗い学校って、怖いよー」
「ののこくん。そんなにしがみつかれたら、歩きにくいんだよー」
順に巡っていくが、今日は怪異のご気分が乗らないのか、とくに可笑しなことは起こらない。
六つ目の体育倉庫を見終えるころには、一同は途方に暮れていた。
「こうまで何も起こらないのも、却って不気味な気がするわね……」
紫はぶるる、とわが身を抱く。
「ののこちゃん」智瑜はののこに懐中電灯を向けた。「ののこちゃんは、最後はどこだと思いますか？ 私は北校舎のどこかかプールあたりが……」
その刹那である。
雷の落ちるような轟音が、あたりに響き渡ったのは。
「きゃーっ！」
「なになにっ！？」
智瑜は桐島先生に、ののこは葵に、しがみつく。
「雷……じゃないわね、空は晴れてるわ」
「講堂の方から聞こえなかった？ 行ってみようよ！」
ののこが走り出す。そうだ、正体を確かめなければ、安心して帰れない。一同はののこを追って、音がした講堂のほうへと走り出した。
講堂の真下へ来た時、葵ははっとして空を指差した。
「親方！ 空から女の子がー！！！」
「どうしたの、こんなときに冗談言って……」と空を見上げた紫が口元を押さえる。「本当だわ」
上空からひとりの女の子が、講堂目掛けて落ちてきている。
よく見ようと目を凝らしていたののこは、その女の子の正体に気づいて大声を上げた。
女の子が講堂にぶつかった瞬間、ふたたび雷が落ちたような轟音が鳴り響く。
しばし、耳を抑えて、様子を伺う。
と、女の子はまた、空の遙か上空から、ひゅーんと講堂目掛けて落ちてきているではないか。まるで、壊れたレコードみたいに、何度も、何度も。
葵は瞬きも忘れて呟いた。
「そういえば。噂の中に、女生徒が何回も飛び降りる幻の話があったんだよー」
「あったわね……でも、これは……」
「まさかの、七つ目の七不思議は、ののこくんだったんだよー？」
ののこは何度も落ちる自分を凝視している。
「私……そうだ、私……空から落ちて……高校生になりたくて……」
「ののこくん？」
「……私、かみ、さま……？」
ののこはそう言った途端、くらりと倒れた。
「ののこちゃん！」
みんながののこを取り囲む。
桐島先生がののこを抱え、脈を見、呼吸を確認した。
「ぐーぐー……うーん、むにゃむにゃ……」
「寝てる、のか？」
「……寝てますね」
「……そういえば昨夜徹夜したって」
「……人騒がせなんだよー」
良かった、と皆は胸をなでおろす。
「つまりだけどー、七つ目の七不思議は……」
人差し指を立てて結論を言いかけた葵は、そこで言葉を止めた。ののこが寝子島に落ちてきたところが再現される怪異。神魂のせい……そう考えれば説明はつくけれど、なんだか風情がないと思い直す。
葵は、眠るののこの髪に触れた。
（……ののこくん、三年間楽しかったかなー？ 青春出来たかなー？ 七不思議として残ってもいいかなー？）
いいよ、と言わんばかりの幸せそうな寝顔を見て、葵は寝子高七不思議、最後のひとつの発信源となることを決意した。
「七つ目の七不思議は『親方！ 空から女の子が！』。ふっふふー、記事にするときちょっと盛れば、面白くなると思うんだよー」
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
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- 2024年06月09日
- 参加申し込みの期限
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- 2024年06月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
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- 2024年06月16日 11時00分
