卒業～らっかみの願いを叶えて～｜リアクション

卒業～らっかみの願いを叶えて～

　卒業式当日～在校生、紙吹雪を撒く

「桜、早く早く」
「茉奈ってば急がせないでよ」
　卒業式が終わる。まもなく卒業生たちが出てくる時間だ。中庭でパレードがあるのである。
　水上桜や有沢茉奈など、紙吹雪を撒く担当の在校生たちは数日かかって作成した桜色の紙吹雪入りの段ボール箱を各々抱えて屋上へと駆けあがる。そのほとんどが２年生。稲積柚春も交じっている。
「稲積さんは向こうで。この段ボールお願いね」
「分かったよ」
　在校生たちが二、三人ずつ等間隔で配置についたのを見計らったかのように、卒業生たちが中庭に出てきた。
「卒業おめでとうございます！！」
「せんぱーい！　お健やかに！！」
　在校生たちが盛大に紙吹雪を撒く。

「来年は私たちがあの紙吹雪の下を歩くんだね。あ、でも……掃除……」

「掃除のことなんて考えないで。思いっきり盛大に撒いて撒いて撒きまくりましょ！」

　茉奈の言う通りだ、と桜は思った。
　今は祝おう。どうせパレードが終わったら、余韻に浸る暇もなく生徒会役員として撤収作業に駆り出されることになるのだろうから。

◇

「絢ちゃーーん！！！」
　紙吹雪の中を歩く青山絢は、振袖姿の水谷真優理がひときわ大きく手を振っているのを見つけた。
　真優理はいつも以上に麗しく着飾っている。「絢ちゃんの人生の新たな旅立ちだもの、綺麗にしたいじゃない」と早朝から着付とヘアセットに出かける予定であったことを絢は知っていた。姪マニアの叔母さんが来ている、と思われるのを気恥ずかしく感じていたかつての絢だったが、今は真優理の気持ちが素直に嬉しい。
　絢と目が合い、感極まった真優理はハンカチで目元を拭った。
（今日で絢ちゃんの制服姿は本当に見納め……いや、映画やドラマで女子高生の役を演じるときにまた制服姿みられるけど、本物の女子高生としては今日で最後……）
　いけない。感傷に浸っちゃ。
　そう思うけれど、卒業証書を携えた絢が紙吹雪の中を歩く姿に、溢れる涙を抑えることができない。
「絢ちゃん、絢ちゃん！」
　微笑んで手を振り返してくれる絢も、そっと目元を拭っている。
　――おめでとう、絢ちゃん。
　――ありがとう、真優理さん。

◇
　
　晴れわたるこの日に柚春も思う。

　