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- 00月00日生 00歳
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卒業 ～らっかみの願いを叶えて～
卒業式前日の寝子島～頼まれていたブツを
卒業式前日は、３年生も午前中だけ登校日だ。卒業式の段取りを確認したり、式中に歌う歌の練習をしたりする。１、２年生も授業はなく、式典を行う講堂のセッティングをしたり飾りつけの準備を行ったりしている。
フツウの日のようで、フツウではない日のような、すこしだけざわざわした日。
「こっちの猫、青で塗っちゃっていい？」
響 タルトのクラスは芸術科なので、絵の得意な生徒たちが教室の黒板に卒業を記念したお祝いイラストを素晴らしい画力で描いているところだった。青いチョークを手にしたタルトもその一人だ。ＢＬ好きなタルトとしては、本当はこう……男の子同士の絡みとかを描きたいところだったが、さすがに卒業式なので自重している。
そんな３年７組の教室を訪れたのは、２年生のマーガレット・ライカーである。
「先輩。タルトさん」
マーガレットはこそこそとタルトを呼んだ。
ちょっとごめんね、とクラスメイトに断って、タルトは廊下に出る。
「マガレちゃん、来てくれたんだね。ありがとう」
「はい。少々フライング気味でありますが、先輩ご卒業おめでとうございます」
マーガレットは深々とお辞儀をする。
ここまではよくある先輩と後輩のやりとりだったのだが……。
「あと、頼まれていたブツを持ってきました」
なにやら不穏なセリフを吐きながら、人目をはばかるようにしてファンシーな柄の袋に入った薄く四角い包みを差し出すマーガレット。
「卒業式前日にまで、悪いね。しかもちゃんと偽装まで」
ファンシーな包みは、偽装だそうだ。
「いえいえ。こうして校内で直接手渡で渡すのも、今日が最後かと思うと寂しい限りです。数少ない校内の同好の士を一人失うのかと思うと……」
マーガレットは苦しそうに胸を押さえる。
タルトはそんなマーガレットの背をそっと撫でてから、ファンシーな袋を開いて数センチだけ中身を取り出し確認した。
「あー、これこれ！ やっぱ、このカップリングが最高だよね！」
「しっ、タルトさん。声が大きいですよ」
「おっと……」
あたりを見回すタルト。大丈夫、気づかれてはいないようだ。
タルトはコホンと咳払いして『ブツ』こと『男と男が絡み合う薄い本』をファンシーな袋に仕舞いなおした。
「今後のことだけど」
「はい」
「安心して。ブツの受け渡しにはエージェントを使うから」
「エージェント……ああ！」
マーガレットはポンと手を打つ。脳裏にタルトが思っているのと同じ人物が浮かんだのは言うまでもない。
「弟さん」
「そ。僕の言うことには逆らうかもだけど、マガレちゃんのためなら嫌とは言えないでしょ」
悪い顔をする姉タルト。タルトとしては密かに想いを寄せつつも言い出せない弟とマーガレットをくっつけたいようなのだが、マーガレットの方はそれに気づかずタルトと今後も同好の書をやりとりできることににっこりする。
「そうですね。まぁ、彼ならやってくれるでしょう。それはそうとして」
そろそろ次の夏の新刊の話も始めておかないといけない時期なんですがどうしましょうか？ とマーガレットは切り出した。
「さすがにこれは他人を経由させるわけにも行きませんので」
「夏の新刊かあ。確かにそろそろ考えなきゃだね。あ、これからは今までみたいに学校で相談ってできなくなっちゃうんだ」
そう気づいて、タルトは一抹の寂しさを感じる。
マーガレットも、ええ、と頷き。
「もともと細かい相談はニャインかニャスコ経由ですし、そこはかわらないでしょうが、直接あって話す機会が減るのはやはり残念です。今の時代、地球の裏側でもリアルタイムで話できますけど、やはり直接会わないと伝わらないパッションとかありますからね」
パッション。
熱く迸るもの。
心を満たし、身体を滾らせるもの。
それこそもっとも大切なものだ。
「そうなんだよね。生！ 大事だよね！」
「そうです、生でこそのものが、ありますからね」
『生』が別の意味にスライドしてきたのが分かって、マーガレットとタルトはほんのりと赤らめた顔を見合わせて笑ってしまった。
「まあ、時々は会おうよマガレちゃん。大学に行っても薄い本はやめないからさ」
「もちろんです。大学での新しい仲間とネタの発掘も期待しています」
「で。新刊のネタ、マガレちゃんは何がいいと思う？ 刀？ それとも最近はやりの暴虐コンビとか……」
「せっかくですしシチュエーションとしては新生活での出会いネタか鉄板の卒業ネタとかも悪くないかもしれません」
――こうやって日常は続いていくんだよね。
タルトはふと、ののこのことを思う。
（だから、ののこちゃんも大丈夫だよきっと）
卒業式前日は、３年生も午前中だけ登校日だ。卒業式の段取りを確認したり、式中に歌う歌の練習をしたりする。１、２年生も授業はなく、式典を行う講堂のセッティングをしたり飾りつけの準備を行ったりしている。
フツウの日のようで、フツウではない日のような、すこしだけざわざわした日。
「こっちの猫、青で塗っちゃっていい？」
響 タルトのクラスは芸術科なので、絵の得意な生徒たちが教室の黒板に卒業を記念したお祝いイラストを素晴らしい画力で描いているところだった。青いチョークを手にしたタルトもその一人だ。ＢＬ好きなタルトとしては、本当はこう……男の子同士の絡みとかを描きたいところだったが、さすがに卒業式なので自重している。
そんな３年７組の教室を訪れたのは、２年生のマーガレット・ライカーである。
「先輩。タルトさん」
マーガレットはこそこそとタルトを呼んだ。
ちょっとごめんね、とクラスメイトに断って、タルトは廊下に出る。
「マガレちゃん、来てくれたんだね。ありがとう」
「はい。少々フライング気味でありますが、先輩ご卒業おめでとうございます」
マーガレットは深々とお辞儀をする。
ここまではよくある先輩と後輩のやりとりだったのだが……。
なにやら不穏なセリフを吐きながら、人目をはばかるようにしてファンシーな柄の袋に入った薄く四角い包みを差し出すマーガレット。
「卒業式前日にまで、悪いね。しかもちゃんと偽装まで」
ファンシーな包みは、偽装だそうだ。
「いえいえ。こうして校内で直接手渡で渡すのも、今日が最後かと思うと寂しい限りです。数少ない校内の同好の士を一人失うのかと思うと……」
マーガレットは苦しそうに胸を押さえる。
タルトはそんなマーガレットの背をそっと撫でてから、ファンシーな袋を開いて数センチだけ中身を取り出し確認した。
「あー、これこれ！ やっぱ、このカップリングが最高だよね！」
「しっ、タルトさん。声が大きいですよ」
「おっと……」
あたりを見回すタルト。大丈夫、気づかれてはいないようだ。
タルトはコホンと咳払いして『ブツ』こと『男と男が絡み合う薄い本』をファンシーな袋に仕舞いなおした。
「今後のことだけど」
「はい」
「安心して。ブツの受け渡しにはエージェントを使うから」
「エージェント……ああ！」
マーガレットはポンと手を打つ。脳裏にタルトが思っているのと同じ人物が浮かんだのは言うまでもない。
「弟さん」
「そ。僕の言うことには逆らうかもだけど、マガレちゃんのためなら嫌とは言えないでしょ」
悪い顔をする姉タルト。タルトとしては密かに想いを寄せつつも言い出せない弟とマーガレットをくっつけたいようなのだが、マーガレットの方はそれに気づかずタルトと今後も同好の書をやりとりできることににっこりする。
「そうですね。まぁ、彼ならやってくれるでしょう。それはそうとして」
そろそろ次の夏の新刊の話も始めておかないといけない時期なんですがどうしましょうか？ とマーガレットは切り出した。
「さすがにこれは他人を経由させるわけにも行きませんので」
「夏の新刊かあ。確かにそろそろ考えなきゃだね。あ、これからは今までみたいに学校で相談ってできなくなっちゃうんだ」
そう気づいて、タルトは一抹の寂しさを感じる。
マーガレットも、ええ、と頷き。
「もともと細かい相談はニャインかニャスコ経由ですし、そこはかわらないでしょうが、直接あって話す機会が減るのはやはり残念です。今の時代、地球の裏側でもリアルタイムで話できますけど、やはり直接会わないと伝わらないパッションとかありますからね」
パッション。
熱く迸るもの。
心を満たし、身体を滾らせるもの。
それこそもっとも大切なものだ。
「そうです、生でこそのものが、ありますからね」
『生』が別の意味にスライドしてきたのが分かって、マーガレットとタルトはほんのりと赤らめた顔を見合わせて笑ってしまった。
「まあ、時々は会おうよマガレちゃん。大学に行っても薄い本はやめないからさ」
「もちろんです。大学での新しい仲間とネタの発掘も期待しています」
「で。新刊のネタ、マガレちゃんは何がいいと思う？ 刀？ それとも最近はやりの暴虐コンビとか……」
「せっかくですしシチュエーションとしては新生活での出会いネタか鉄板の卒業ネタとかも悪くないかもしれません」
――こうやって日常は続いていくんだよね。
タルトはふと、ののこのことを思う。
（だから、ののこちゃんも大丈夫だよきっと）
シナリオ
シナリオデータ
シナリオスケジュール
- シナリオガイド公開日
-
- 2024年06月09日
- 参加申し込みの期限
-
- 2024年06月16日 11時00分
- アクション投稿の期限
-
- 2024年06月16日 11時00分
