卒業～らっかみの願いを叶えて～｜リアクション

卒業～らっかみの願いを叶えて～

　冬の寝子島～学校帰りの買い食いをしまくりたい！・その１

　高校生にして魔女を自称する旅鴉月詠は達観している。
「まあ、『たった三年』でやりたいこと全部やるのは難しいというものだ。私とてまだまだやりたいことは沢山ある。ののこは、一旦空に帰った後、今度はゆっくり降りてくればいいんじゃないかね？」
「……」
「……」
　キャットロードの入り口でするには深淵な話題であった。八神修と七夜あおいはなんと答えていいか分からず、視線を交わし合うばかり。
「とにかく、買い食いをしまくりたいというのだから。しかも予算は１日５００円だそうだね。買いたいものをリストにして１日５００円で少しずつ買えるようスケジュールにしていってはどうかね」
　ののこは、あれも食べたい、これも欲しい、とあちらの店先こちらの店先と蝶のよう。そんなののこを見遣って、月詠はまっとうなことを言ったものだ。
「まずは、噂の角煮まんかな？」
　修は小声であおいに相談する。角煮まんは一個で５００円超え。ののこの予算では足りない。
「ポイントとかクーポン、使ってもいいと思う？」
「ののこちゃんに分からないように？」
「そう。上手くやるから」
　というわけで、初日の買い食いはみんなで角煮まん。
「俺が纏めるね」
　とさりげなく申し出た修は、みんなから５００円ずつ貰って、支払いの際にこっそり『ポイント使ってください』と伝えて予算オーバー分を補った。
　店先の蒸し器から出したての、湯気立つ角煮まんを一個ずつ紙で包んで貰う。
　その場ではむっと齧って見れば、肉汁がじゅわあと溢れ出て、なんてジューシー！　なんて美味！
「うんま～い！」
　ののこはほっぺたを押さえ、目を糸のように細くする。
「ほんとだね！」あおいも同じような顔をする。
「うむ。これは食す価値があるね」物事に対して常に一家言ありそうな月詠も絶賛だ。
「楽しいな。友達と食べるから美味しさ増し増しだ」
　修は、みんなで写真を撮ってこの美味しさを記録した。
「明日は何にする？　シェアして色々食べよう」
　次の日は軽く食事をした。修の調査力を駆使して来店一万人目狙いで、タダメシだ！
　予算が５００円であろうとも、工夫次第でなんとでもなる、ということを修は次々と証明していった。