キミは、俺の、ろっこんさん！？｜リアクション

キミは、俺の、ろっこんさん！？

　◆サッカーゴール作戦

「彰尋くん。これでいいかな？」
　三年生の教室がある南棟三階の廊下に、あおいとオトメさんが《カジバオトメ》でサッカーゴールを運んでくる。
「ありがとう、あおいさん、オトメさん。じゃあ、椎井さん、エレクトラさん、サッカーゴールと向かい合うように電気網を張ってもらえますか」
「了解よ」
「アハハハハ！　任せて頂戴」
「俺とアオ、倉前さんと空読君で、サッカーゴールと電気網の間にピンクの小象たちを追い込みます」
「わかりました。この戦法、本が好きな人には怒られてしまうかもしれませんが」

（……空気を、『読む』）

　七瀬が発動させたのは、場の雰囲気を漠然と記した本が出現させるろっこんだ。このとき現れたのは、ピンクの象が描かれた、薄いが角のしっかりしたハードカバーの絵本だった。
　同じ本を、もう一冊呼び出して、片方を空読に渡す。
「手伝ってくださいね、空読君」
　召喚した本を団扇のようにブンッと振って風を起こし、七瀬と空読は、あちこちに漂うピンクの小象を集めて行く。七瀬は大層な読書家であったが、その嗜好は主に『字そのもの』にあって、本自体の扱いにはあまりこだわりはない。とはいえ、さすがにもうひとつ思いついた、召喚した本を象にぶつける、というアイデアについては、本好きに殺されると思いとどまった。
「よいしょ、よいしょ」
「……、……！」
　七瀬と空読がぶんぶんと絵本を振ってピンクの小象を扇ぐ姿は、ちょっとかわいい。
　団扇効果で、小象たちはふわふわと狙ったところに集まって来た。彰尋とアオは、サッカーゴールと電気網の間に立って、さらにピンクの小象を引き寄せる役である。
「十分です！　絡満姫さん、サッカーゴールと電気網の間にリボンを張ってください！」
「こうか？」
　彰尋が飛びずさったと同時に、絡満姫が体中に巻き付いていたリボンを放ち、集まって来たピンクの小象を左右から囲ってサッカーゴールと電気網の間に閉じ込めてしまう。
「よいぞ、今じゃ！」
　絡満姫が準備が出来たことをあおいと莉鳥に知らせる。
「行くよ、エレクトラさん！」
　あおいとオトメさんは力いっぱいサッカーゴールを押した。
　リボンの領域に囚われたピンクの小象たちが、エレクトラの電気網の方へ押しやられていく！
「待ちくたびれたわッ」
　エレクトラは嬉々として、波のように押し寄せてきたピンクの小象を電気網に押し付る。
　バチバチバチッと激しいスパーク！
　ピンクの小象はシャボン玉のように次々に弾けて、駆逐されていく。
　爆発による風圧で運よく逃れた小象も数匹いたが――、
「蹴散らし損ねたのは、私のほうで受け持つわ」
　情け容赦のない莉鳥の《スタンハンド》の雷撃によって、撃ち落とされていった。

「ふぅ、思った以上にうまく行ったな」
　これが彰尋が考案した、サッカーゴールで一網打尽作戦であった。大成功である。
「だけどこの異変の元凶は、ビックピンクエレファントなのよね」
「あいつを倒さない限り、ピンクの小象はまた沸いてくる……だったら、行くしかないわね」
　莉鳥とエレクトラは窓から空を見上げる。
「行ってください。ここは僕らが何とかします」
　七瀬が言った。彰尋もここに残ってくれるという。
「じゃあ、行ってくるね！」
　蘭月、あおい、莉鳥たちは顔を見合わせ力強く頷く。
「狙いはビッグピンクエレファントや！」